表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕天使のクララ  作者: 御堂 騎士
試練の迷宮
53/55

エレナさんの精神世界

「3対3ってことは、襲ってくる天使は3体ってことだよね」

 突然、カルデラも訳の分からないことを言い出した。


「ええっ? 今の話だけで、天使が襲って来るって分かるの?」


「パンドラが、テンヤイバーを醸成するための地であるジークガルトの守護天使である私を狙っていたのは、知ってたし。

 チカガータを追放する時に、後2匹ほど腰ぎんちゃくの上級天使が暗躍していたからね。

 その3匹で決まりでしょ」


「カルデラ、なんでそんなに詳しいの?」


「あんたが、政治に無関心すぎるんだよ。

 まあでも、そういう活動一切なしで大天使アークエンジェルになってしまう二人がいたから、あいつらの野望はついえたんだけどね。

 どうせまた、テンヤイバーを復活させて、もう一度クーデターを狙ってるんでしょ」


「敵の正体まで分かってるんだ。

 しかも、大魔王を復活させようとしていることまで。

 すごいじゃない」


「凄いのは、アンタの方だよ。

 多分、大魔王を倒せるのはアンタだけだろうからね。

 絶対に、この世界にアンタが転生したのは偶然じゃ無いよ」

 呆れたように言われてしまう。




 とにかくよく分からないが、メドインさんにエレナさんを診てもらうことにした。


「うーん、これは生きるための気力を失っているね」

 エレナさんを一目見て、精霊メドインさんが言った。


「どうすれば、生きるための気力を取り戻してくれるんですか?」

 一生懸命に聞く。


「オムニスが言ってただろ。

 この娘の精神を3つの鎖が縛っている」


「3つの鎖?」


「1つは、強力な悪魔の呪いのせいで、精神が汚染されている。

 2つめは、彼女の魂を食べようと狙っている精霊たち。

 最後に、この娘自身が諦めていることだね」


「最後のは分かるんですけど、最初の二つが意味不明なんですけど」


「まず、精神の汚染は、アタシが浄化してあげるよ。

 でも、その瞬間、この娘の魂は無防備になる。

 無数の精霊たちが、群がって来るよ。

 それを排除しないといけない」


「具体的には、何をすればよいんですか?」


「呪いの浄化と同時にこの娘の精神世界に入って行って、群がる精霊を跳ね除ける。

 そして、この娘の魂と一緒に帰って来れば完了さ」


「全然分かりません」


「そうだろうね。

 とにかく精神の浄化を始めよう。

 浄化出来たら、みんなで精神世界に入っていくよ」


 メドインさんが、エレナさんのおでこに手を置く。

 メドインさんの手から、紫色の湯気のようなものがモクモクと湧き上がる。

 数分後にメドインさんが、静かに話し始める。


「魂の浄化が出来た。

 この娘の魂の周りの障壁も無くなったから、魑魅魍魎ちみもうりょうが集まって来るよ」




 パッと風景が切り替わる。

 さっきまでの普通の部屋から、無機質の何もない空間に転移した。

 目の前に扉が一つだけあり、メドインさん、オムニスさん、ベルエスさん、カルデラ、私の4人が立っている。


「第一波が来ます」

 メドインさんの言葉と同時に、無数の深海魚のような生き物がこちらに向かって泳いでくる。

 空中を漂ってくるのだろうか?


 カルデラが、火炎魔法で焼き払っていく。

「精霊界の中とはいえ、やはり中位までの精霊たちでは、このメンバーの守りを超えることは出来ませんね」

 オムニスさんが、感心したように言う。


 次は、無数の人型の精霊が歩いてくる。

 同じようにカルデラが火炎魔法を発するが、燃え尽きない。

 炎の中を、燃えながらただただ歩いてくる。


「流石に上位精霊ともなると、守護天使の魔法も効かないのですね」

 オムニスさんの頭にセットされた鏡が光を放つと、その上位精霊とやらは煙のように蒸発していく。


「精霊が狙って来るとかいうから警戒したけど、余裕だね」

 軽く言ってみたけど、オムニスさんが膝をつく。

 どうやら限界みたいだ。


 メドインさんが、扉を指さして言う。

「この扉を開けたら、この娘の魂が中で眠っていると思う。

 針の穴を通すような選択を集中してやり続けて、成功させ続けたんだろうね。

 信じられないような経験値を得て、人間と思えないような成長をしているよ。

 多分、ドアを開けたら高位の魂の持つエネルギーが、とんでもないものを引き寄せるよ。

 周囲の悪魔や、カルデラさんを狙う天使とかもこの世界に入ってくるだろうね」


 私は、ドアを開けて言う。

「では、みなさん、行きましょう」


「いや、多分ドアが開いて見えているのはチカガータだけだよ」

 カルデラが言う。


「ええっ? どういうこと?」


「この娘が自分の心の中に入るのを許すのは、お前さんだけなんだろうよ。

 アタシたちがドアの外を守っておいてあげるから、一人で行ってきな」

 メドインさんに言われて、私は一人でドアの向こうに踏み込んだ。

 変なものを引き寄せないようにと、どれだけ効果があるのかは分からないけどドアを閉じる。


 ドアを閉じると真っ暗だ。

 床も壁も、ヌルヌルした感じだ。

 これは、見えない方が助かるかも知れない。


「クララ様。

 私が、私が頑張って生き抜いている時間だけ、クララ様が迷宮に入る時間を遅らせることが出来る。

 絶対に死ねない。

 絶対に時間を稼ぐ」


 私は、つぶやく声がする方に進んでいく。


 何も見えないけど、人の気配がする。

 地面に跪いて、声のする方に手をかざす。

 人の顔に触った気がする。


「エレナさん。ありがとう。

 おかげで、私は生きているよ」


「えっ? クララ様?」

 エレナさんの魂が目を開けた。

 この世界に、薄っすらと光が射す。


 赤黒い泥だらけの世界だ。

 泥にまみれたエレナさんの魂が見える。

「エレナさん。

 エレナさんが頑張ってくれたから、私は無事だよ」


 エレナさんの上半身を起こして、抱きかかえるようにして言う。


「クララ様、私はもうダメです。

 力が入りません。

 でも、クララ様が助かってよかった。

 もう思い残すこともありません。ウフフフ」

 エレナさんが嬉しそうに微笑む。


「ダメだよ、エレナさん。

 私がここまで頑張って来れたのは、エレナさんがいつも側にいてくれたからだよ。

 エレナさんがいない世界で、私に一人で生きていけって言うの?」


「クララ様、もったいないお言葉です。

 こんな汚れてしまった私など捨てて、明日に向かって歩いて行ってください」


「いやだよ!

 エレナさんのいない世界なんて、砂糖の入っていないスイーツみたいなものだよ」

 私は、ポロポロ涙を流す。

 エレナさんの顔の上に、涙がかかる。


「クララ様なら、スイーツを作るのに砂糖が無くても、ハチミツでも水あめでも何でもお使いになるでしょう」

 エレナさんが笑いながら言う。


「エレナさん。茶化しているつもりかも知れないけど、ちっとも面白くないよ。

 そんな下らないことを言う人は、絶対に連れて帰っちゃうからね!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ