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26話

「ええ、そうよ」


 ──また、か。

 どうなってる?


「⋯⋯⋯⋯」

「⋯そうか」

「ほ、本当っすか⋯⋯!?」

「え、あ、や、今のは、」


 戸惑っている僕を見て、陛下は一度目を瞑った。

 そして、


「あなたは⋯⋯もしかして、イチノミヤ様ではありませんか?」

「⋯⋯一ノ宮?」

「確か⋯⋯先代、聖女様の名前っすよね⋯⋯ですよね」

「そうだ。⋯⋯君には、話しておこう」

「⋯⋯じゃあ、俺は離れた方が良いですかね?」


 黒葉さんが立ち去ろうとするが、陛下がそれを引き止める。


「いずれ、知れ渡ることになるだろう。聞いてはくれんか」

「⋯⋯⋯⋯はい」

「では。⋯⋯昔、まだ私が幼い頃の話だ。当時の国王、まあ私の父だ。その方は大層戦好きでなあ。魔物を次々と倒して行った。暫くして魔物の数が急増し、手をつけれなくなった王は聖女召喚を行った。そこで現れたのが⋯⋯イチノミヤ、マサコというニッポン人だった。その人は大変心優しい人で、すぐに我々に協力してくれた。だが、魔物はどんどんと勢力を増した。ただの騎士や魔導師は敵わなかった。王はひたすら聖女を敵地へ送った。聖女は何度も傷を負ったが、いくら治癒魔法が使えても心の傷は癒せない。きっと、あの時からもう精神がやられていたんだ」


 そっか、何回も魔物と戦わされて⋯⋯戦いたくなくなったのかな。そもそも異世界に突然連れ出されるだけでも精神は不安定になるものだ。⋯⋯辛かっただろうな。


「そんな時、聖女はある者と出会った。優しい青年で、よく相談に乗ってくれると私に話してくれたのだ。⋯⋯私には、あの人がその青年に恋心を抱いているように見えた」


 心を落ち着かせて話を聞いていたはずが、心臓がバクバクしている。

 僕には直接関係ない話なはずなのに、何故?


「後に、その青年が魔王だということが判明した」

「へっ?」

「⋯⋯魔王⋯⋯?」

「ま、まじっすか⋯⋯」


 魔王って、まさか偶に会ってたあの人!?


「魔王と仲良くやっていたんだ。王は魔王を目の敵にしていたんだから、そりゃあもう怒っていた。王は聖女を地下牢へ閉じ込め、毎晩のように体を痛めつけた」


 そんな⋯⋯その王様、いくらなんでも酷すぎるよ⋯⋯!


「私は、痛めつけられる彼女をただ見ていることしかできなかった。そして、彼女は自分に治癒魔法をかけるのをやめた。もう苦しみたくなかったのだろう。⋯⋯彼女は、王から剣を奪って自分の心臓を刺した。優しかったあの目は、憎しみや恨みで溢れていた。泣きながら王を睨んでいたよ」


 陛下はまだ幼かったんだし、それは仕方がないと思うけど⋯⋯。

 一ノ宮さんが本当に可哀想だ。魔法などで反撃しなかったのは、既に心が⋯⋯。


「『許さない』、それが最後の言葉だったよ。何か魔法をかけていた気がしたが⋯⋯私が覚えているのはこれくらいだよ」

「⋯⋯逆にそれほど覚えてるのが凄い」


 黒葉さんに同じく。

 何か魔法をかけていた、ね。

 違うとは思うけど、次の聖女がここに現れた時に魂を結合するとかそんなんじゃないよね?なんかさっきから勝手に口動くことあるけど違うよね!!?


「先程私の問いに答えたのは、先代だろう。──"シグレ殿"は、聖女ではないのか?」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


 多分、このまま違うと言えば、僕に先代が取り憑いてるだけとか、そんな感じに思われるだろう。

 でも、今の話を聞いてわかった。

 これは、"今"聖女である僕が解決しなくてはならない問題でもある。


「⋯⋯黙っていて申し訳ありませんっ!そう、です、僕が聖女です!」


 声を張って答えた。

 頭を深く下げながら答えた。


「良いんだ、君もまだ若い⋯⋯。仕方が無いんだよ、大丈夫だ。気に病むことは無い」


 ああ、めっちゃ慰めてくれてるうう⋯⋯!


「それにしても、その髪型の女性もおるのだな」

「⋯⋯あ、これウィッグです」


 ひょい、とウィッグを取った。

 やはり少しぼさぼさになってたので髪をほぐした。


「ぶはぁっ!!」


 遠くで誰かがむせた。

 あれ、ナイトじゃん。


「な、なんでお前ウィッグ取って⋯⋯って陛下ぁああああ!!!?」


 すみませんすみません!!とめちゃくちゃに焦ったナイトを黒葉さんが鬱陶しそうに睨んだ。

 こんなに焦ってるナイトを見るのは久々だ。


「はっはっは、君は最近入った騎士だね?そんなに謝らないでくれ、何も悪いことはしていないじゃないか君は」

「は、はははい!!」

「落ち着け」


 黒葉さんが再び睨む。こういうタイプ嫌いなんだなあ。


「あ、そうだ、この指輪は」

「ああ、それは先代が亡くなった時に握りしめていた物だ。きっとあの人の私物だろうな」

 

 なんで僕に⋯⋯。いや、まさか一ノ宮さんに?


「それで、ちょっと前の俺の発言になるんですけど、取り合って貰えます??」

「Σ(||゜Д゜)ヒィィィィ」


 敬語になっただけで怖さは変わってねえ!!


「え、えっと、明朝に城の騎士達にタカナシ⋯様?を護らせる、でしたよね?」


 騎士団長から語尾が消えただと⋯⋯?


「何かあったんですか??」

「⋯⋯⋯⋯数十分前に、城の外で襲撃というか⋯⋯変な男に誘拐されそうになりました」

「へ?」

「言葉が足りないよ、それじゃ。その男、話を聞く限り⋯⋯多分魔王の所にこいつを連れていくつもりだ。ピエロの仮面付けた変な奴だった」

「黒葉さんが途中で助けに来てくれたのでそいつは去ったんですけど、明日の朝また迎えに行くって⋯⋯」

「なるほど⋯⋯じゃあわかりま──」

「結構です」


 騎士団長の言葉を遮り、僕は発言した。


「聖女である僕が立ち向かわないと⋯⋯皆さんの手を煩わせるわけにはいきません!」

「だからって、そんな!」

「紫暮!お前一人で抱え込む必要はねぇんだぞ!!」

「⋯⋯本当はっ、本当は、二度魔王に遭ってるんですっ!!」

「「「「!?」」」」

「これも、黙っていてすみません。陛下のお話通り、魔王は⋯⋯僕がイメージしているような魔王ではありませんでした。人間のことを愛しているような、そんな優しい雰囲気のある方でした」

「⋯⋯その魔王に、何かされたりは?」

「特に、何も。そういえば、二度とも弟と一緒にいました」

「ふむ、どうしたものか」


『会わせろ、会わせろ』

 知らない声が頭の中に響いた。

『あの方に会わせろ、会いたい、会いたい』

 その声は酷く枯れていた。女だということはわかるが⋯⋯一ノ宮さんか?

『小娘ぇええ、会わせろぉ、会わせろおお!』

 頭が痛くなってきた。

 一ノ宮さん、優しい人なはずなのに、小娘とか言ってるよ⋯⋯なんか悪霊みたいになってない?

『うああああああああ!!!』

 痛い痛い痛い痛いっす!!


「し、紫暮、どした?」

「ちょ、っと疲れただけ、だいじょぶ」


『さっきの、小僧ぅう⋯⋯?この、国は憎い、恨めしい!救うものか!』

 うわああなんか根に持ってるうぅ!

 てか僕の脳内の声?って届いてるのか?

 ちょっと訊いてみよう。

 あのー!魔王に会ってどうするんですかー!!

『⋯⋯⋯⋯⋯⋯』

 おや??

『⋯⋯会ったら、会えたら、それだけでいい、そうしたら私は消えるから、会わせて』

 怒りに満ちていた声が、急に泣きそうな声に変わった。

『会って、少し話したら消える、もう一度、会わせて、会わせて』

 ⋯⋯自我が戻った感じか?落ち着いたな。

 頭痛も引いたし。


「えーと、一ノ宮さんによると、魔王に会って話させてくれたら消えるそうです」

「はい?どゆこと」

「会話ができるのか?」

「ええ、ひたすら会わせろ、会わせてって言ってきます」

「だが、シグレ殿はそれで良いのか?」

「僕は⋯⋯構いませんけど」

「紫暮!」


 ⋯⋯一ノ宮さん、僕が攻撃とかされる可能性ありますか?

『⋯⋯魔王様は、人を傷つけるようなことはしないわ』

 あのピエロの仮面を付けた男、知ってますか?

『あの男は、魔王様を慕っている悪魔よ。ただ、よく勝手な行動をしていて気に入られたものじゃないわ』

 そうですか⋯⋯。あれ、でも手紙には愛しの聖女様って書いてたし、一ノ宮さんのことも慕ってたんじゃないですか?

『確かに、そうかもしれないわ。けれど、1番に慕っているのは魔王様よ』

 成程、ありがとうございます。

『⋯⋯ええ。ごめんなさい、さっきは我を忘れてしまって。苦しかったでしょう』

 大丈夫ですよ。あなたの方が苦しかったでしょ?

『そうかもしれないけど、本当に申し訳ないわ。巻き込んでしまって⋯⋯生前の私がかけた魔法のせいで』

 やっぱり、あなたの魔法でしたか。

『この魔法は、次代の聖女に魂を結ばせ、時間が経つにつれて私がその体を操れるというものよ』

 よ、よくそんな魔法使えましたね!?普通に凄い!

『魔王様と会う時は体を貸してもらってもいいかしら?』

 もちろんいいですよ!たくさん話してください!

『⋯⋯本当に、あなたは優しいのね』


 いつの間にか、声は綺麗な澄んだ声に変わっていた。

 話しかけても応じないので、眠ったのだろうか。

 さて、次はこの人達を説得しなければ!


「僕は一ノ宮さんを魔王の元へ連れて行きます!!」



もうちょっとで終わる雰囲気出してますけどまだまだ続ける予定です!


今回のゲストはリーナちゃんです!

リーナ「よろしくね」

作者「よろしくです!最初の質問は⋯⋯何故女装をしているのですか?」

リーナ「趣味ってことにしておいて」

作者「⋯⋯?つ、次の質問です。騎士になったなら女装のまま仕事するのまずくないですか?」

リーナ「大丈夫ってことにしておいて」

作者「⋯⋯はい?え、あ、最後の質問です。男の姿の紫暮さんに惚れたようですが、まさかホm」

リーナ「敬愛ってことにしておいて」

作者「│^o^)┓」

リーナ「森に帰れ」

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