18話
1日遅れました...!すみません!
ギルド到着。
「橋良さんー、キョロキョロしないでください」
「いや、こんな場所があるとは」
「それ城に居る時に言った方が正解でしたね」
まあ、ここ広いしなぁ...。
橋良さんも興味を持ってくれたし、さっさと登録済ませてもらおう。
「あら、タカナシさん?」
「あ、カルハさん!あの、この人のギルド登録をお願いしたいんですが」
「ごめんなさい!今忙しくて...外行かなきゃいけないのよ。今回は...えーっと、あ!アオイ、ギルド登録の手続き頼める?」
カルハさんは近くにいた職員を見つけて手を合わせた。
「勿論です、姉さん」
...姉さん?姉弟?
ちゃんと見れば似てるかも。
「では、こちらへ」
「...」
橋良さんは頷き、アオイさんについていった。
「...あの、アオイさんって弟さんですか?」
「ええ、そうですよ。今年でもう25歳なのよ」
「.....え、カルハさんはいくつ──」
「女性に歳は訊かないものよ」
一切表情を変えなかったのが怖い。
「そういえば気になってたんだけど、その腰にある剣、どこで手に入れたの?」
「...これ、ですか?」
「それ、物凄い良い剣だと思うわ。私の父は武器商人だから、よく剣を見ていたの」
「へえ...確かに、突然現れた剣だしなぁ」
「え?」
「いえなんでも。あ、仕事中でしたよね、すみません」
「...?あっ!そうだ、仕事仕事!!またねタカナシさん!」
「はーい」
やっぱりあの人天然だなぁー。あ、またコケた。
さて、僕はお茶でも啜っていようか。
「すみません、コーヒーあります?」
「はい。どうぞ」
お茶より珈琲派だった僕。
というかここの人準備速いな...。
...この剣、今までなんとなく使ってただけだけど...確かに斬れ味や見た目がすごくいい。
一言でいえば、まるで聖剣──。
...そんなわけないけど。
聖剣なら他の人がすぐ気づくだろうし。
にしても、これ全然刃がこぼれないんだよな。楽。
「あー、珈琲うんま」
「何故珈琲を飲んでいる...?」
橋良さん早いっすねどうも。
「長くなるかと。申し訳ありませーん」
軽く謝ると橋良さんから怒気が感じられた。
あっはいすみません。
「登録できました?」
「...ああ」
「職は?」
「剣士です」
2つ目の質問にはアオイさんが即答した。
すると、アオイさんは僕を見て目を輝かせた。
「あ、あの!あなたが噂のタカナシさんですか!?」
「え、はいそうです」
「僕よりも歳下なのに、あの剣さばき...そして勇敢さ!尊敬します!!」
「.....はい?」
周りが突然のアオイさんの大声に驚き、ざわつき始めた。
目立ってる目立ってる!
「落ち着いてください...」
「はっ、すみません!興奮するとつい...!」
橋良さんもドン引きしてるので。
「ま、また今度話しましょう。依頼探すので」
「はい、是非とも!」
アオイさんは嬉しそうにスキップしながらカウンターに戻って行ったが、同僚に注意されて普通に歩いた。
***
僕達は少し弱い程度の魔物退治の依頼を受け、森にやってきた。
「あ!居ました」
「あれが、『スズメバチ』か」
「はい」
日本のスズメバチは、普通に危ないハチだ。
しかし、この世界のスズメバチは──。
「ギィィィイイイイ!!!」
「来ました!」
もっと危ない。
スズメバチの見た目は、ヒグマにハチの羽が生えているような感じだ。
要するに気持ち悪い。意味がわからない。
これが少し弱い魔物?と思う人もいるかもしれないが...、こいつの知力はものすごく低い。
そのため、突進しかしてこないのだ。
「横に一旦避けて、思い切り斬っちゃってください!」
「...っ...!」
「ギィィィイイイイ!!!」
...え?
えええ?
橋良さん、完全にプロの動きだったんですが?
「何か...やってましたか?」
「剣道なら少々」
さすが橋良さん、なんでもやってのけるんですね...。ゲーム以外...。
「あと2体ですね。もうちょっと奥行きましょう」
「...」
ああそうか、勇者の剣って勇者に合うように造られてるから、手に馴染むのかな?
知らんけど。
奥に行くと、泉があった。
綺麗だったが...スズメバチが五体いた。
「おおっと...これは」
「多いな」
「...やばいです。スズメバチって、連携力だけは高いんですよ」
「...まさか」
そう言っているうちに、スズメバチ達に囲まれてしまった。
「そっち2体いけます?」
「無論」
2人とも、一斉に動いた。
僕の方は...まず、最初に突進してきた一体を串刺し。
もう一体来たので剣を抜いて今刺した奴を壁にして回り込む。そして斬る。
すぐに来る一体も回転斬り。
スズメバチは体力も低いのでとても楽ちんである。
橋良さんの方は...。
「大丈夫ですか?」
振り向くと、橋良さんは棒立ちしていた。
その前には、綺麗に縦に切断されたのと、横に切断された死体が転がっていた。
羽が散らばっていた。
「すごい、ですね。橋良さん」
「当たり前だ。ギルドに戻るぞ」
「.........」
魔物は、倒すと数秒後消える。
僕は、消える様をただ哀れんだ目で見ていた。
***
「報酬の3400Gです。お疲れ様でした」
橋良さんのノルマはちゃんと達成したので、報酬はすべて橋良さんに預けた。
「城に帰りますか?」
「そう、だな」
「...?」
城に戻り、地下の階段を降りる。
橋良さんと別れ、自分の部屋に向かって廊下を歩いていた時、声をかけられた。
「コーヒー、いかがですか?」
「...ここで働いてる方、ですか」
その人は、お爺さんだった。
来ていたのは下働きの服だった。
「はい。休養も必要ですよ、どうぞ」
ギルドで飲んだばかりだけど...まあ、いいか。
「ありがとうございます。頂きます」
紙コップを手に取り、そのまま口に運んだ。
おお、美味しい!
「美味しいです」
「それは、良かったです。では私はこれで」
「はい」
お爺さんは階段を上り、1階へ行った。
僕も戻ろう。
ぐらん。
「──?」
何が起きたのか、わからなかった。
どうやら、あれは毒入り珈琲だったらしいな。
体が痺れる。喉が痛い。
治癒能力は...無理だ、自分で使えない。
畜生。
***
夢を見ている。
何も無い空間に、ただ1人立っていた。
すると、誰かが近づいてきた。
ああ、母さんだ。
横には、父さんや祖母もいた。
ごめんね、もう会えないんだ。
でも、ちゃんと元気に暮らしてるから。
心配しないで。
そう言うと、皆は微笑んで、消えた。
次は、見覚えのある風景が写った。
学校。
いつの間にか教室にいた。
皆、いる。
騒がしいクラスメイト達。
それに...こいつも。
皆いる。
なんて幸せなのだろう。
なんで、幸せなのだろう。
気がつくと、皆居なくなっていた。
教室に誰か入ってきた。
その誰かは、僕に声をかけた。
「コーヒー、いかがですか?」
目を覚ますと、病院にいた。
頭がくらくらする。
扉を開けて廊下に出た。
受付に向かった。
誰もいなかった。
ここは、まだ夢の中?
突然、床が崩れた。
落ちていく。
暗闇へ。
いつまでも落ちていく。
着地点なんかなかった。
誰かが手を伸ばしている。
僕は落ちているはずなのに、その手も一緒に動いていた。
体が勝手にその手を掴んだ。
光が差した。
その光に、溶けてゆく。
***
「!!!!」
目を覚ました。
ここは何処だろう。
「気が付きましたか?今、食事を持ってきますので」
赤髪の人がほっとしたような笑顔で話しかけてきた。
「ぼーっとしてますけど、大丈夫ですか?どこか悪いですか!?」
どこか悪い?
...わからない。
「私は、誰?」
「記憶は溶けた」
誰かが、何処かでそう呟いた。
今回のゲストはアルティメットブリザードッグくんです!犬用の翻訳機を使いましょうか。
作者「はい、こんにちはアルティ...アルくん!」
アル「ワン!(おはようございます)」
作者「飼い主が突然変わりましたが、どうお考えで?」
アル「ワン!!(紫暮様万歳でございます)」
作者「好きな遊びは?」
アル「ワン!(人をじろじろ見ることです)」
作者「好きな言葉は?」
アル「ゥヴ!!!(犬も走れば人にぶつかります)」
作者「そうですね。歩いてください。」
アル「ワン(すみません。よくわかりません)」
作者「それでは、さよーならー!」
アル「ワン(失礼致しますでござる)」




