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19話

「小鳥遊、様...?」

「...たかなし?私の名前ですか?」

「え、えぇ...。小鳥遊紫暮、と」

「時雨?シグレ...?」


 全く、思い出せない。

 この人は、私の何なんだろう。


「あなたは...?」

「私は...アドルです。貴方の護衛人...です。一応」


 一応?何かあったのだろうか。


「うぉい紫暮!!お前また俺の部屋に本忘れ.....。...?ど、どうかしたのか?」


 ドアがばんっ!と開いた。誰か入ってきた。


「え、なんだお前、そんな虚ろな目ぇして」

「あー、紫暮様は記憶喪失になったようでして」

「え、記憶喪失?なんだそんなこと──ってえぇ!!?」


 短髪の人は私を2度見して、頭を抱えて何か呟いている。

 そして、「うん、やばいな」と言い、急に冷静な顔になった。


「ちょっと来い」


 短髪の人は私の手を引き、部屋から出た。


「アドルさーん、紫暮が記憶喪失になったってこと、絶対に他言しないでくださーい」

「...?わかった」


 ***


「いいか!お前は!男だ!剣士だ!」


 いきなり部屋に押し込まれたと思うと、そう叫ばれた。


「え、でも、私はこの体的に女だと...」

「お前は確かに女だけど、ここでは男として生活してんだ!俺は事情あって知ってるけど」

「そ、そうですか...?」

「あと、お前の一人称は『僕』だ。私とか言うな!」

「え、は、はい!?」


 思わず返事をしたが、この人の言うことは本当なのかな。なんか怖い...。


「あ、そうそう。俺はナイト。この城の新人騎士。この世界でお前のことよく知ってるの俺くらいだから、何かあったら俺を頼れ!」


 ナイト...さんは、胸を張って言った。


「そ、それじゃあ...わた...僕のじ、情報?について教えてください」

「わかった、そこ座れ」


 ***


 数時間後。


「なんか思いだしたか?」

「いいえ、全然」


 というか、これウィッグだったのか。道理で違和感あると思った。


「てか、記憶喪失にしては多少の常識的なことわかんだなー。記憶喪失なったことねぇから知らんが」

「そういうことはわかるんですが...小鳥遊紫暮としての僕、については全く...」

「そうか...。てか、記憶喪失になるって...どっか頭でも打ったのか?」

「どこも怪我はしてないと思います」


 ...話してみてわかったけど、この人は良い人そうだし、信じて大丈夫、かな?


「あ、でもなんか...喉が...」

「喉?」

「はい...少し熱い...?」

「何か...飲んだか?」

「覚えてません。...ん?いや、えぇと...何か、僕が好きなものを飲んだ...ような...」


 ナイトさんが首を傾げた。

 数秒、目を瞑って何か考えていた。


「あ!お前コーヒーが好きとか言ってたような気がする」

「コーヒー...。う〜ん...」


 ドン!


 ドアを叩く音がした。

 ナイトさんが「なんだよ...」と言いながらドアを開けた。

 ...犬がいた。

 え、犬?


「お?...こいつ、確かアル、とか言ったっけ。そういや紫暮の部屋にいるんだった」

「ワン!」

「よくここがわかったな。どしたー?」

「ワンッ!」

「うおっ」


 犬は、僕に向かって走ってきた。

 そして膝の上に乗ると、寝た。


「...え、えぇー...」

「紫暮とキトラさんに懐いてたんだよなぁ」

「...キトラ?」

「.....あ!そうだ、魔導師団長なら治せるんじゃ!?」


 うん...誰の事言ってるのか全然わかりません。


「よし!ちょっと行ってくる!そこに黙って座ってろ!」

「あっはい」


 行動的な人なんだなー。

 この犬も寝ちゃったし、僕...も寝てようかな。


 ***


 私は何処かにいた。

 目の前には僕がいた。

 僕はこういった。


「君は、偽りのない私だ」


 なんのことかわからなかった。

 私は言い返す。


「じゃあ、あなたは、嘘をついているの?」


 僕は微笑み、こう言う。


「あぁ...そうだね。僕は嘘つきだ」


 ***


 夢を、見ていた?

 なんだか、こんな夢をいつも見ていたような気がする。


「戻ったぞー。友達が一時的に記憶喪失になった、っていうことにして話しに行ったが、団長も専門外らしい」

「え、あ、そうですか」

「まあ...とにかく、今はその状態で人に会わせるわけにはいかねえ。俺もさすがにそろそろ仕事しなきゃだし、今日は部屋で大人しくしててくれ」

「わ、わかりました」


 部屋って...どっちだっけ。

 すると、犬が「ワン!」と吠えてドアの隙間から部屋を出た。


「ほらー、ついてけー」

「はい」


 この犬、実は賢いのか?


 ***


「おい」

「...は、はい?」


 部屋に戻る途中、眼鏡をかけた人に話しかけられた。

 うわあ、誰だ...。


「これ、お前のだろう?落としてたぞ」


 眼鏡の人が、ハンカチのようなものを差し出してきた。

 えー、誰の〜...。


「あ、はい。僕の、です。ありがとうございます」

「...?いつもより暗いな」

「そんなことないですよ!元気です!!」

「いつものお前だな」


 僕ってそんな元気な子だったの?

 眼鏡の人はそのまま無言で歩いていった。

 横で待っていた犬が再び案内してくれた。


 ようやく部屋に戻ると、アドル...さんがいなくなっていた。


「やっほー!遊びに来たよー!」

「ひぎゃあ!?」


 後ろから誰かが抱きついてきた!?

 離れてその人を見た。なんか...白髪の美少年だ。

 この人も僕の知り合いさんか...?

 アルが突然この人の周りを走り始めた。

 ナイトさんが、アルは僕と...キトラさん?に懐いてる、とか言ってたな...。


「...キトラさん」

「んー?」


 お、合ってた!


「いえ、なんでもないです!」

「そー?じゃあ遊ぼー!」

「はいっ!」

「...え」

「え?」


 キトラさんが僕を見て引いている...?

 あれ、遊んじゃ駄目だった?


「いつもは死んだ目で拒否するのに...何かあったの...?」


 先程の呑気な喋り方とは違って、深刻な感じで言ってきた。


「あ、え、今日はなんか遊びたい気分なんですよね」

「...前は『そんな気分には絶対になりません』って言ってたのに...?」


 あ、地雷踏んだ?


「本当にシグレ?でもアルはいつも通りだし...」

「じ、実は...僕...」

「...?」

「僕は、あの、えぇと...その...!!」

「どうしたの?記憶でも失くしたの?」


 嘘でしょ、この人エスパー?


「一部です!それを言った時のことを忘れてしまっただけです!!」

「...ほんと?」


 全力で頷くと、キトラさんは冷たい目で僕を見てから「わかった」と言った。何が。


「ボクね、よく性格バカって言われるんだけど...ホントは違うんだよね〜」

「え」

「一部だけ?違うでしょ?全部話して」


 な、なんだこの人...?さっきとはまるで雰囲気が違う...?


「こら、なぁに困らせてんだキトラ!」

「痛っ!に、兄さん...」

「仕事が入った。行くぞ」

「はぁーい...」


 キトラさんのお兄さんは軽く礼をして、去った。


「あ、犬ほっといてた」


 ***


 やっぱり何も思い出せないなぁ...。

 ナイトさんの話から僕のことはまぁわかったけど...。


「.....トイレ...」


 トイレ行きたいけど場所わからない...。

 ここは地下らしいけど...1階ならすぐ見つけれるかな?階段はさっき見たし...。


「犬〜、ちょっと待っててねー」


 ***


 1階に上がるとすぐにトイレがあったのでとりあえず男子トイレに入った。

 え、男として生活してるんだよ?男子トイレだよね?

 部屋に戻ろうと階段に向かう時、ふと庭に目がいった。

 中庭かな?なんかすごい豪華だなぁ。

 あれ、この白い薔薇だけ一層綺麗に咲いてる。


『...治れ』


 頭にその言葉が響いた。なんだ?

 ...突然、風が強く吹いた。

 花たちが揺らめく。


「どうも」


 中庭の入口に、誰か立っていた。

 黒髪だが、毛先が赤色だ。明るめの赤色の瞳。なっがいスカーフを首に巻いていて、どこかの盗賊みたいな格好をしている。

 あー誰だー。


「初めまして、だよね。俺はユキト。よろしく」


 こっちに向かって歩きながら自己紹介してきた。

 え、この人城で働いてる人?そうには見えないけど...。


「僕は...小鳥遊紫暮、です。よろしくです」

「うん。早速だけど...君の記憶を消したのは俺ね」


 は い ?


「ちょ、待ってください?あなたが!?」

「そう。ここで働いてるお爺さんを操って、遅効性の毒入りコーヒーを飲ませる。君がコーヒー好きなの調査でわかったからね。そして倒れて気を失った君から記憶をある程度消去。その後毒を抜き取って放置」


 えぇ...。じゃあ、この人には人を操ったり記憶を操作する能力があるのか?

 なにそれチートじゃない?

 でも、人を操れるなら最初から僕を操れば良かったのでは?


「君にはなんの恨みもないけど、上から記憶を消して本部に連れてこいって命令されてるから...ごめんね?」

「.....」


 体が動かない。僕が恐怖を抱いているから。

 本来の僕なら、恐れずにこの剣で相手と戦っていたのだろうか。


「小鳥遊様!」

「...アドルさん!?」

「...ちぇ。護衛人か」

「部屋に戻ってもアルしかいなかったので必死に探しましたよ...」

「え、すみません」

「いえ、私が付いていなかったのがいけなかったのです」


 ユキトはどこからか短剣を取り出し、構えた。

 アドルさんも剣を構える。

 どうしよう、えぇ...。

 というか警備員さんいないの...?


「さぁ、やるか...」

「.....」

「──なんて、ね」

「「!?」」


 ユキトが、一瞬で僕の後ろに移動した。


「はーい、大人しくしてね」

「むぐ...」


 口を抑えられ、喋れなくなってしまった。

 アドルさんがすぐに助けようとしてくれたが、ユキトが僕を抱えて後ろに大きく避けた。


「君さぁ...護衛人とか言ってるけど、無能じゃない?そんなんだから護衛対象簡単に連れ去られちゃうんだよ」

「...!」

「じゃあね。無能な元騎士団長」

「待て!」


 風に揺られる赤い髪が僕の目に焼き付いた。

今回のゲストはキトラくんでーす。

キトラ「よろしくね〜」

作者「はい。では...あなたはいつも喋り方が呑気ですが、キャラ作ってるんですか?」

キトラ「何か言った?」

作者「では最初の質問です」

キトラ「はい」

作者「正直、紫暮さんのことどう思ってますか?」

キトラ「シグレは好きだよ〜」

作者「like的な意味で?」

キトラ「何言ってるかよくわかんない」

作者「次の質問です。異空間能力は便利ですか?」

キトラ「便利だけど、たまに時空歪む」

作者「え」

キトラ「え?」

作者「ありがとうございました」

キトラ「...ありがとうこざいましたぁ」

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