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風属性の剣使いの異世界物語  作者: SHIN=ALICE
11/12

無敵の間合い。

ガキンッ!!ガキンッ!!!


武器どうしがぶつかり合う音が辺り一帯に響き渡る。

片方はミスリル製の長さ二メートル程の槍、もう片方は刃渡り一メートルと少しってところのロングブレードだ。


「くっ...!」


「オラオラァ!どうしたよ戦場の風が聞いて呆れるなぁ!!」


防戦一方のフィロードに対してライザックは猛攻を続ける。

フィロードの剣のリーチに対して、ライザックは槍のアドバンテージともいうべき長さによってフィロードの剣が届かないギリギリの距離を保ちつつ一方的に急所を突いてくる。


「いい加減に.........しろっ!!!」


一瞬バックステップで下がったフィロードのロングブレードが微かに煌めき、刃渡りが二倍の長さに伸びる。

フィロードの武器の固有能力である増長である。


それを追撃してくるライザックに振りかざす。


「おおっと、危ねぇなぁその剣はよ!」


ライザックは間一髪のところで躱して軽く距離を取り、背中に残った残り一本の槍を手に取る。

もっとも長い全長三メートル程もある長槍である。


「うーん、コイツがなけりゃあその剣と相手するのが面倒だったなぁ。ククッ」


「...」


武器能力でフィロードの剣のリーチを長くしてもライザックに剣が届く間合いに入れずに苦戦を強いられる事になる。

このまま接近戦をやっても不利な状況は覆せないのでフィロードはライザックの槍を捌きつつ下がりながら詠唱を始める。

魔法によって対抗するのだ。


「────風よ!烈風の如き衝撃を以て打ち砕かん!『風烈衝』!」


ガウルフ狩りの時に使った魔法で風属性魔法の中でもそこそこ威力が高いものである。


次の瞬間、この魔法特有の物凄い音と衝撃がライザックを襲う。

直撃すれば体の一部が吹き飛ぶであろう威力である。


しかし、ライザックは剣撃だけでなく魔法まで槍で受け流す。

常人には不可能な芸当であるが、それを可能にするライザックの腕は敵ながら凄まじいものだ。


槍だけでは魔法を完全には防げないので武器に魔力を通して受け、見事に流してみせたのである。

武器に魔力を流すには大量のオドが必要であり、体内の魔力量が少ない者には使えない技である。


一部の聖騎士クラスの剣士は剣に火属性の魔力を流して炎を纏わせる者も居るが、火適性の常人が十数人集まったところで無理であるというのだから難易度は相当だろう。


今回は纏わせたのが闇属性の魔力であり、触れた風魔法を無理やりねじ曲げて軌道を逸らしたのだろう。


「ぐっ...受け流されたか...!よくもまぁあの一瞬で...。」


「ふっ、流石は長年生きてきたエルフだな。詠唱の速度もそこらの魔術師なんかより早い。」


「だが、まだだ。こんなものではお前は倒せない...!」


「フハハッ、俺を倒すと言うか!愉快だな!あぁ実に!さぁ、もっと俺を楽しませろ!!」


ライザックは落ちていた三本のうちもっとも短い槍を拾い、手に持った二メートル程の槍を繋げて一本の長い槍にする。

そして、二本の長槍を手に持った状態となる。


「俺は本気でお前を殺しに行く...簡単には死んでくれるなよ...?」


中、小の槍を繋げた槍は最長の槍に勝るとも劣らない長さでフィロードの剣では当然分が悪い。

しかし、そんなことはどうでもいいとばかりにライザックは二本の長槍を使い高速で突きを繰り出す。


「うぐっ...!?その槍にそんな使い方があったとは...!!」


目にも留まらぬ速さの突きを受けるフィロードの体には傷がどんどん増えていく。

片方の槍を捌くと即座に次の槍先が自分めがけて迫ってくる。

流石に一本の剣では捌ききれずに右肩、左足、頬、左腕と槍が次々に命中していきフィロードの動きが鈍くなってくる。


「俺は元々二本の槍使いだよこの老いぼれエルフが!!なーにがそんな使い方だぁ!」


槍の横薙ぎに反応出来ずにフィロードが吹き飛ぶ。

身体強化がされているのか、普通の槍の横薙ぎとは威力が段違いである。


「ぐあっ!!...ゲホッ...ゴホッ...。」


「んだよ、お手上げかぁ?まだまだ始まったばっかだぞ...。」


ライザックはゆるりゆるりとした足取りで近づいて来るが、刺し傷が多くフィロードは満身創痍で動けない。


なんとか上半身だけをゆっくりと起こしたフィロードはライザックを睨みながら詠唱を始める。


「────光よ...傷を癒したまえ...『治癒(ヒール)』」


風適性なのでオドをかなり消耗するが仕方なく光属性の回復呪文を唱えて傷を癒す。

治癒する箇所が多ければそれだけオドを消費する。

王都から走ってる時にも魔力を消費し、戦闘でも風魔法を使ったことで魔力を消費し、適性じゃない属性の魔法で消費する。

普通なら魔力がすかすかで死んでしまってもおかしくない量の魔力を消費したが、フィロードは恵まれた魔力量に助けられている。


傷口が全て塞がり立ち上がるフィロードの前に、退屈そうな顔でライザックが見下した表情で見つめる。


「よくもまぁこんなのに手こずったなぁ...うちの兵士達も...正直ガッカリだ。」


「...」


ライザックの愚痴に対してフィロードは無言で睨み返すのみだ。

言い返すだけ無駄である。


「ちっ、面白くねぇ...。」


ライザックが身を翻し、その場を立ち去ろうとする────


かに見えたが...即座に再び振り返り鋭い一突きを放つ。

顔にはニヤリと嫌な笑みが浮かんでいる。


フィロードは躱しきれず首を軽く掠ったが、致命傷にはならずにバックステップで距離を取る。

先を読んでいたとはいえあまりの速度にヒヤッとする。


「なーんだよ...希望が絶望に変わる瞬間って見てて気持ちいいんだがよぉ...どうせ弱いならそんな感じで楽しませてくれると信じてたんだがなぁ...。」


「ふん、俺が対象なんだろ?逃がす気など無いくせに...。」


「当たりだ...。クハハハッ」


「とんだ狂人だな...。」


「あぁ!良く言われるよ!...まぁそう言ってた輩は皆死んじまってるんだけどよう!」


「...ふん。」


(来たか...)


ライザックの攻撃を大きく横にジャンプして躱す。

それと同時に森の方から矢が数本ライザックに向けて飛んで来る。


「あぁ!?」


キン!キン!と短く甲高い音を立てながら次々と槍によって矢が弾かれていく。

正確に矢を弾くとは凄まじい技量である。


「フィロードさん!大丈夫ですか!?」


森から弓を手に持った金髪のエルフと槍を持った茶髪のエルフが現れる。

森の端からフィロード達のいる場所までそこそこの距離があるが、声がハッキリと聞き取れた。


ライザックの顔が再び退屈そうな感じになる。


「あぁ、ありがとうリーフィア!だが、あまり近付かない方がいい!コイツは強い!」


「わかりました!」


森に逃げ込む事さえ出来ればエルフにとっては有利なのでリーフィアは森を出てすぐのところで待機してもらう。

森は基本的にエルフ族に有利になるように方向感覚を狂わせたりと色々してくれる。

火属性の魔法で焼き払われでもしなければエルフに地の利がある。


願わくばフィロードもさっさと森に逃げ込んで相手を錯乱させたいとこだが、逃げ込む前に回り込まれる。

移動速度等に関してはライザックには敵わない。


「アイザーン帝国第一部隊、ライザック聖騎士団長...」


「ふぅん...同じ二本の槍使いの貴様か。お前も俺とやる気か。」


フィロードの傍まで駆け寄って来たターシャとライザックが睨み合う。

否、ライザックはターシャを見下していて、ターシャはライザックを恐れている。


「ターシャ、俺とお前でコイツの攻撃を捌きつつ森に逃げ込むぞ...いいな?」


「...はい、わかりました。」


ターシャは背中の槍を手に取ってフィロードの隣に立ちライザックと向かい合う形になる。

二対一と人数では勝るが、ターシャの槍は長い方でも二メートル程でライザックの間合いには届かない。


「ふん、ロングブレードと槍使いの前衛が二人で弓使いが一人か...分が悪いな。」


ライザックの目が少しばかり鋭くなる。

人間にもかかわらず物凄い威圧感でフィロード以外の二人が怯む。


そこへここぞとばかりにライザックは距離を詰めて槍で襲いかかる。

まずはフィロードを殺せという依頼を邪魔する茶髪のエルフから。

左手の長槍で右肩、右手の長槍でターシャの左肩を同時に狙う。


「下がれっ!」


ガキンッ!!


「...っ!!」


フィロードはロングブレードで片方の槍を弾き、

剣を持ってない腕でもう片方の槍を受ける。

手首と肘の中間あたりに槍が突き刺さり、腕を貫いた。


「うっ...ぐっ!!今がチャンスだ...!リーフィア!」


フィロードは即座にロングブレードの能力を解いて鞘にしまい、腕に刺さった槍を掴んで固定した。


すかさずリーフィアが矢を三本同時に放つ。

狙いは頭、心臓、脇腹と急所ばかりで矢はまるで吸いこまれるように正確に飛んでくる。


「ちぃ...!」


ライザックはフィロードの腕に刺さった槍を諦めて離し、三本の矢を軽く捌く。

心臓と脇腹めがけて飛んできた矢は槍で一薙ぎし、頭めがけて飛んできた矢を掴んでへし折る。


その隙にフィロードとターシャは距離を取り、リーフィアは更に多数の矢を放つ。

雨のように降り注ぐ矢にライザックはしかめっ面をしつつも危なげなく対処する。


「厄介な弓使いだな...っ!いつもの戦争だったら間違いなく真っ先に殺してたぜ!」


ライザックはペッと唾を吐き捨ててからサイドステップで矢を躱しつつ躱しきれないものは弾くなどして無難に捌いていく。

味方であればこれ程頼れる者はいないだろうという凄まじい技量でリーフィアは思わず呆気にとられる。


全ての矢を軽く捌ききったところでフィロードが腕に刺さっていた槍をライザックに向けながら口を開く。


「ったく...貴様の槍は二度と帰って来ないと思う事だな。」


そして、フィロードは槍をリーフィアに投げ渡す。

リーフィアはキャッチしようとせずに躱してからそれを拾う。


ライザックには長槍が一本、対してフィロード側はロングブレードに槍使いのターシャ、遠距離から矢を放ち続けるリーフィアと状況としてはフィロード側が有利である。


「俺の長槍が...クソが...貴様は必ず俺の槍で貫いてやるから覚悟しろよな...!」


「もう腕を貫かれたから勘弁だな。」


ライザックは長槍を分解して一メートル程の短い槍と二メートル程の槍を構える。

槍の形や使用者の構えは違えどターシャの二本槍と酷似している。


「フィロードさん、先程はすみませんでした。次は私が前に立つので退避を!」


「大丈夫か?無理はするなよ!」


「はい!」


ターシャは前に立ち槍を構える。

下手に動くと死んでもおかしくない相手であるので緊張はしているが、先程とは違いお互いの槍が届く間合いで戦えるので落ち着いて見極めるように心掛ける。


「邪魔だ用無し、殺すぞ!」


「随分な物言いね...人の戦い方を真似ておいてよくもまぁ...。」


「元々槍使いだったのが二本に増えただけだ。貴様と同じにするな無能。」


「...くっ...生意気な!」


お互いがほぼ同時に駆け出し、槍がぶつかり合って火花を散らす。

ライザックの方が速く、力も強くて押され気味だが、上手く力を逃して突きを繰り出す。


しかし、やはりライザックの方が技量も高く、どんどん押されてしまう。

一歩、二歩と下がるハメになっているが時間を稼ぐという点に置いては十分な働きである。


フィロードは風魔法で加速して森まで一直線に駆けていく。

その間も槍使いどうしの激しい攻防が続く。

短い槍で相手の突きを捌き、長い槍で相手を突く。

同じ戦い方なのにライザックの方が押しているのは槍の使い方が一枚も二枚も上手だからだろう。


「ちっ、フィロードは逃がしたか。お前さえ邪魔しなければ...クソッ...報酬がパーじゃねぇか...。」


「報酬の為に人を殺すようなやつに後れを取るとはね...ハァ...ハァ...。」


そうこうしているうちにフィロードはリーフィアと合流している。

離脱しようと思えばすぐに森に退避出来る距離である。

ターシャは息がきれていて限界にも見える。


「...あーあ、ったく...お前とやっても面白くねぇや。どうせならもっと強くなってから俺の前に来やがれ。」


急に攻撃を止めたライザックが距離を取ってから身を翻す。

槍を背中に戻して帰ろうとする。


「私を逃がすのか...?」


「逃がすも何もはなから狙ってねぇよ無能。弱ぇ奴と戦っても楽しくねぇし金も貰えねぇ。」


あっけなく終わった戦闘に呆然としながらターシャはフィロード達に合流しに向かう。


ライザックはもう一度舌打ちしてからその場を立ち去った。

流石に森の中を追いかけるのは不可能だと理解したのだろう。

経験を積んできたからこそ出来る判断である。


此度の激戦はこうして幕を閉じた。




────────────





森に入って少ししてから一行は立ち止まる。


まずは、フィロードの槍が刺さっていた腕をリーフィアが光属性の治癒魔法で癒す。

彼女の適性も風なので消耗はするが大人座って治癒してもらう。


そして、しばらくして落ち着いたところで事情をざっくりと話す。

王都での事から暗黒盗賊団の事まで。



「なるほど、それでリオンくんを置いて来たのですね。」


「あぁ...ってそうだ!リオンは無事なのか!?あの野郎...何かしたような口ぶりだったが...!」


「大丈夫じゃないでしょうか?意外としっかりしてますよ?自首的に鍛錬もしてますし心配する必要はないかと思いますっ!」


「む、そうか...でもまぁ少しは心配する。さっさと族長から禁術の呪文を教えてもらって行かねぇとな。」


「え、あぁ...って禁術ですか!?」


「ああ、さっきのライザックってのも暗黒盗賊団に絡んでるようだしな。アレを使わなきゃ死ぬ可能性も出てきた。本当は報告だけのつもりだったんだけどな...日番の代わりとか...な。」


頭を掻きながらフィロードは立ち上がる。

予想以上に規模の大きい問題になりそうでため息をつきたくなるがフィロード一行は村に急いだ。

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