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風属性の剣使いの異世界物語  作者: SHIN=ALICE
10/12

襲撃。

「事情は話した通りだ。頼めるか...?」


「なるほど、そういう事なら娘さんはワシに任せろ。こちらも暗黒盗賊団には困らされてる身じゃしな...。」


俺たちは再びロンダムの家に来ていた。

フィロードとロンダムが話してる中、少女、ティナは終始俯いたまま傍で話を静かに聞いていた。


「すまねぇな。それにしても爺さんすら困らせるたぁとんでもねぇ奴らだなぁ...。」


「うむ。奴らは魔法が使えない代わりに武器を持って多人数で迫ってくるからのぅ...ワシからしたら厄介ったらありゃせん。」


「ほう、魔法が使えない無能集団か。なら俺に任せておけ!」


「しかし、奴らのトップは魔導師クラスの魔法使いだと聞く。油断は禁物じゃぞ?」


「おうよ!んじゃ、俺は一旦村に戻ってくるから娘さんと...リオンも置いてくからよろしくな!」


「え?」


ロンダムは満足そう頷いたが、俺は驚いて変な声を出してしまった。

特に不都合があるわけではないので大丈夫だが。


「安心しろ、すぐ戻ってくるから...少ししたらガロんとこ行ってお前の剣を貰ってこい。金は...ほら。」


俺は銀貨と思わしき硬貨を二十枚ほど貰った。


「あ...うん。でも、すぐって...ここから村まだ往復って馬車でも半日以上かかるんじゃ...?」


「...俺は走った方が速いんだよ。」


やれやれといった表情で返事をするフィロード。

それでやっと気がついたが、俺がいると遅くなるから置いていくんだな。

一緒に行動した方が学ぶことが多いが、仕方がないから諦めて鍛錬しよう。


「そんじゃ!爺さん後はよろしくな!」


そう言ってフィロードはロンダムの家を出ていった。

ロンダムは有名な魔導師で他の人から気を使われることが多いので、フィロードの気軽さが逆に嬉しそうである。


「やれやれじゃな、嬢ちゃん...名前はティナじゃったかな?その格好だとあれじゃし、風呂にでも案内してやろう。」


「おふろ...お風呂!」


先程まで落ち込んでいた様子のティナが目を輝かせながらロンダムについていく。

気の強い子だな。


俺は鍛錬でもしようと外に出ようとし、気がついた。

王都が建物でいっぱいでとても鍛錬出来る場所ではないことを。


「...何をしようか。」




────────────




一方、フィロードは王都を出て村のある森へと続く平野を駆け抜けていた。


時速二百キロは出てるだろうというスピードのため、魔物たちが彼を襲おうとする前には既に遥か後方へを遠ざかっていっていく。


「はぁ...また見回り当番代わってって言ったら何て言われるんだろうなぁ...。そろそろ後輩たちに怒られそうだな...ハハッ...。」


フィロードは足は止めずに村の人になるべく心配をかけないような言い訳を考えていた。

それもいつもはすぐにバレるのだが。

本人は隠せていると思っているあたり面白いのである。


しかし、油断しているがために自身に近づく脅威に気がつくのが遅れる。


シュッ!!!


「...っ!?」


前方に広がる森の方から一本の槍がとんでもない速度で頭を目掛けて飛んできた。


フィロードはギリギリのところでスライディングのような体勢になって躱す。


それからその場に止まり、森の方向を睨む。


「いやはや躱されるとは俺もまだまだだなぁ...。」


先程とは全く以てかわり、槍の持ち主が堂々と姿を現す。


体つきがよく、無駄な肉がついていない体には目立った鎧は着ていない。

せいぜい手足に軽く武装してある程度の身軽な格好である。

髪は短髪で、軽く緑がかった黒。

目は赤く、とても鋭い目つきで見たものを絶対に逃さないような印象を受ける。

そして、口元には獰猛な笑みが浮かんでおり、余裕の足取りこちらへと向かってくる。


そして、フィロードはその男を知っている。


「...ライザック。」


オルニア王国と対立している強者が全ての国...アイザーン帝国の兵士であり最高階級の聖騎士のトップの座を譲らない『最速の牙』の異名を持つ槍使い、ライザック。


先の戦争では最前線を歩く彼を止めようとかかった百以上の兵を軽くあしらい殺めた帝国で最も危険な人物。


人間族とは思えない鋭い攻撃が特徴で、一般兵では視認出来ないような速度で急所のみを狙う連続突きを得意とする。


「前回は戦争ってのもあって逃してやったが、今回は俺の部下が世話になったんでな。...逃さねぇぞ。」


「部下?どいうことだ!」


「....『暗黒盗賊団』とだけ言っておけばわかるだろう?」


「くっ...貴様がそこの頭って事か!!」


アイザーンの兵であるライザックが関わっているということは帝国が王国の内部にスパイを送り込んでいてもおかしくないということだ。

このままだと内部と外部から攻められて王国が大変な危機にさらされる可能性がある。

何としてでも知らせなければ...。


「いやいやぁ、俺は雇われて幹部をやってるだけさ!なにせ報酬が良いし専売特許である殺しが活かせるしなぁ!」


「狂人め...頭は誰だ...と聞いても教えては貰えないだろうな。」


「あぁ...よく分かってるじゃねぇか。まぁ、今回の対象はお前だから知ったところでどうしようもねぇがな!」


ライザックは背中の二本の槍のうちの一本を手に取り接近してくる。


ライザックは違う長さの三本の槍を使う。

そのうちの一本はフィロードに投げてきた槍で最も短い槍である。


フィロードはロングブレードを手に取り接近してくるライザックとは逆の方向へと駆ける。


「あ?逃げられるとでも思ってるのか?!」


フィロードは最短の槍の前で立ち止まり、左手に持ったロングブレードで思っきり叩き切ろうとする。


しかし、ガキンという音と共に弾かれる。


「あぁ、そういう事ね。俺の槍はアダマンタイトで出来てっからそうそう折れることはないぜ?」


「くそっ!どうすれば...!」


二百年以上生きてきた歴戦のエルフでも敵対したくない人間なので逃げたいのだが、ライザックは『最速の牙』と呼ばれるだけあってフィロードよりも数段速いため逃げることは出来ないだろう。

戦う他に選択肢などないのだ。


「どうすれば...か。俺と戦え!そして死ぬがいい!それがお前のすべきことだ!...クククッ...今頃、王都ではお前と一緒に居たガキが...。」


「...っ!?貴様、リオンに何を!!ふざけるなよ!!!」


フィロードのロングブレードとライザックの槍がぶつかりあう音が周囲に響き渡った。




────────────




少し前、フィロードが出た後の王都では。


俺はロンダムから魔法に関する本を借りていた。

風属性の魔法に関する何かがあれば参考にしたりしたいからだ。


俺の予想が正しければ、詠唱すれば魔法は発動する。

しかし、それはきっかけであり究極的には詠唱せずに発動出来るはずだ。

村で放った『風刃』のように。


だが....!


だが........!!!


字が読めない!!!!!!!


言語が同じだったからきっとひらがなカタカナ...まぁ漢字とかで書いてあると思った。

残念ながら違った...。


「ロンダムさーーーん!これ読めませーーん!」


「なんじゃ、字が読めないのか。うーむ...読み書きを今から覚えるかい?」


「そうですねぇ、先に剣を貰ってきます。」


「そうか、ワシも行った方がええかの?」


「いや、一人て大丈夫です。」


「うむ、気をつけて行ってくるんじゃぞ。」


「はい!」


読めない字をどうにかするのは後にして、先に剣を取ってきてしまうことにした。



フィロードと歩いた道を思い出しながら歩いてそのボロいお店に着く。

中に入ると奥からシュッシュッという金属を研いでるような音が聞こえる。


「失礼しまーす...。」


「....」


「ガロさーん!」


「....」


「おっさああああああん!!!!」


「お前までやかましいわい!!」


最初に来た時と同じようにドスドスと重そうな足音を響かせながら現れる。

ツッコミを入れても愚痴られそうなのでそっとしておく。


「ったく...もう少しなんじゃ。待てんのか。」


「...いや知りませんて...。それよりフィロードから預かったお金です。」


「なんじゃ、フィロードを呼び捨てかいな!カカッ!弟子かと思ったわい!」


俺はガロにフィロードから貰った二十枚の銀貨を渡した。

そして、奥に戻っていったガロにもう少し待てと言われたので棚に置いてある武器をいじったりして待つ事にした。


ちなみになぜフィロードを呼び捨てにしたら機嫌が良くなったのかは知らん。




十分程待ったところで店の奥からガロが得意げな顔で布に包まれた剣を持ってきた。


「フフン、会心の出来じゃわい!」


カウンターと思わしきところにドスンと置かれたそれはとても重そうであった。

もったいぶって布を外さないあたりこの爺さんは面倒くさいタイプの人間...いや、ドワーフである。


「重そうですが大丈夫でしょうかね?」


「む、たしかに少し重くしてしまったが大丈夫じゃろう。まぁ、まずは見たまえ!」


そう言って布をバサッと取り去る。


そこにはいかにも勇者様が持っていそうな剣があった。

金色の聖剣って感じではないが無駄にゴツゴツしておらず、綺麗な青銅の鍔に柄、鞘も青銅で出来ていて刃を簡単には通さないだろう。

鞘から剣を抜くと綺麗な光沢を放つ刀身が見える。

この短時間でこの完成度は熟練の鍛冶屋であるガロだからこそなせるのであろう。

ウザさが無ければ超が付くほどの完璧な鍛冶屋である。


「どうじゃ、いいじゃろ?」


「凄い...ですね...。」


「フフン、そうじゃろうそうじゃろう!ちなみにな、刀身も青銅にするはずだったのじゃがミスリルを使ってみた。」


「いいのですか?!」


ミスリルとは貴重な金属で、軽くて鋼鉄と比べてもかなり頑丈である金属である。

しかし、なぜこんなに重いのか?


「構わん、流石に銀貨二十枚では限界があるから表面を覆ったような感じだが充分な強度を誇るじゃろう。」


「なるほど、わざわざありがとうございます!」


「まぁフィロードに免じてじゃ。なんだかんだで奴には助けられてるからのう。」


ガロは剣を鞘に戻して俺に差し出し、それを俺が受け取った時だった。


ピカッ!


剣を受け取った俺の右手の甲が微かに輝いた。


「なんじゃ!?...『守界の刻印』...なるほど、人間であるおぬしがフィロードと一緒にいる理由がわかったわい。」


「これは...?」


「刻印が武器に反応したのじゃろう。ワシ如きの武器に反応するとはな、嬉しいもんじゃ。」


「武器に反応...?どういうことでしょう...。」


「うむ、ワシも細かいことは知らん。が、おぬしに刻印がある以上は知っていることを話さねばな。我々、鍛冶屋の間では刻印が武器を認めると輝き、持ち主がその武器の力を最大限に引き出せるようにすると言われているのじゃ。」


「最大限の力を引き出す...ですか。」


「そうじゃ。しかしじゃな、刻印が反応するのは神器級の金ランクの武器だと語られてたのじゃ。このワシが鍛えた剣はせいぜい赤...良くて銅ランクじゃろう...。」


フィロードのロングブレードは銅ランクの武器で刀身が伸びる能力なのだが、そう考えるとこの武器もショボそうだ。


「...そうですか。どんな能力なんですか?」


「知らん。」


「はい?」


「知らぬわい、それは持ち主が現れたら武器が自ら発現させるものじゃ。」


きっと刻印が反応したから能力は発現したが、使わなきゃ分からないって...爆発でもしたらどうするんじゃい!!とか思う俺だった。


まぁ、持ち主に不利な能力は無いはずだが。


「はぁ...じゃあ、また来た時に武器の能力の報告しますね。」


「うむ、楽しみにしておくわい。毎度あり!」


「いえいえ、こちらこそ色々とありがとうございます!」


そして、俺は店を出てロンダムの家に戻ろうとしたところでさっそく武器を使うチャンスが訪れた。

運が良いのか悪いのかティナを追っていた男達と同じような奴らが武器屋の前で待ち伏せしていたのだ。

ティナはいないが反応を見る限り狙いは俺だろう。


「報告にあったあの老いぼれエルフと一緒にいたガキだな?ククッ」


「フィロードの事でしたらそうですが...。」


「そうかそうか...フフフッ...ならば殺す。あのエルフに一矢報いるチャンスだな。」


男達は次々と得物を手に取っていく。


鍛錬でかなり鍛えられた俺だが、たかが一ヶ月である。

元の世界では戦闘とは無縁の生活を送っていたので殺意を向けられるのは正直なところ少し怖い。


「...あぁ、ロンダム連れてくれば良かったかなぁ...。」


俺はまだ人を殺すことに抵抗があるので出来れば対人戦は避けたいから逃げ道を確認する。

つまり、武器を使う気がないという事だ。

能力は気になるが仕方がないだろう。


しかし、武器屋の入口を囲んで五人の男達が立っているので間を駆け抜けることはほとんど不可能だ。

かといって店の中に逃げ込めばガロを巻き込んでしまうだろう。

俺はケラケラと笑いながらこちらを見ている男達を睨みながら後ずさる。

逃げ出す方法はないのか...。



いや、この状況でも逃げる方法はあった。



俺はフィロードと一緒にガウルフを狩りに行った時のことを思い出す。

そして、その時にフィロードが使った『風烈衝』を思い浮かべる。



大丈夫だ、俺なら使える!



そう信じて俺はロンダムの家の方向に向かって駆け出す。


当然、そこに立っていた男が武器を構えて俺を殺そうとする。

そして、俺が相手の武器の間合いに入る直前のところで俺はかの魔法を使った。


俺は紋章が刻まれた左手を相手...

ではなく、足元に向けて詠唱もせずに魔法の名称を叫んだ。


「『風烈衝』!!」


それと同時に俺はフィロードが放った魔法を強くイメージした。


すると、左手を緑色の魔力が包み込み、物凄い風と衝撃が地面に放たれた。

地面には亀裂が入り、一番近くにいた男は尻餅をついた。


反動で俺は浮かび上がり、男を飛び越すようなかたちで包囲網から抜けた。


「なっ!?あのガキ何者だよ!?」


「くっそ!!あのクソエルフと同様にバケモンだったかよ!」


「だが、所詮はガキだ!!追うぞ!!」


そう叫びながら男達は俺を追ってくる。


しかし、残念ながら鍛錬で鍛えられた俺の走りに追いつける訳もなく俺は逃げ切れたのだった。

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