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膝に手を当てて前かがみになっている千ちゃんを見ながら、独り言のように……って実際に独り言なんだけど、振り返りながら言う。
「……海外のクラブチームにスカウトされたんだ」
「え、凄いじゃん」
その時もこの教室で、夕焼けが教室を赤く染めていた。
とても凄いことを言っているのに、あまり嬉しそうに言わなかった。
何も知らない私でもすごい事なんだって分かる。
ひと握りの人だけに配られるチケットって事に。
どれだけの人がそのチケットを勝ち取る為に色んな犠牲払っているか。本気出生きる人たちの中で1%も居ないだろう。
「うん。でも何年も日本には戻れない」
「……うん」
「ねぇ、どうしたらいいかな」
悲しい事だけど、仕方ない事だと思う。
こういう時に力になってあげられなくてごめんねった気持ちになる。
「どうしたらって……」
「プロになるだけなら国内でもなれるし、私は夕陽と離れたくない」
適切な言葉が分かんなくて、オウム返しする事しか出来ない。
千ちゃんはどんどん弱気な言葉を言うから、私もどうしたらいいか分かんない。
だって、千ちゃんの人生だもん。
「でも、それだと」
「……もう二度と声はかからないかもしれない」
「私なんかの事なんて気にしないで」
私を理由に諦めちゃいけない。ダメだと思った。
だから気にしないで欲しかったのに、千ちゃんは表情を消して私を見る。
「……は?」
千ちゃんは弱々しかった声が嘘のように、ハッキリとした声で1音だけ言う。
曇が空に被さったみたいで、茜色は葵色に。
「千ちゃんの夢を叶える為に必要なことなんでしょ」
「……家族とも離れるんだ」
「……うん」
千ちゃんの声が震える。
私が想像もできない覚悟がいることなんだと思う。
だから私は何も言っちゃいけないと思った。
もし、私が行かないでって言ったら。行かないの?
「サッカーだけじゃない……」
「じゃあ、どうしたいの?私にどうして欲しいの」
「なにそれ」
「私だって」
「もう知らない、あっち行って!」
そして、冒頭に戻る訳ですね。




