社会貢献を語る男3/10
やっぱり雲行きが怪しくなって来た。
「ギバーになります。どうかあの素晴らしい家に一歩でもいいから入れてください」
「よろしい」
「どうかよろしくお願いします」
「では、まず社会に貢献することだ。お前に出来ることは何だ。農業のプロでもない。掃除のプロでもない。造園のプロでもない。もちろん、建築のプロでもない。無職で無能でカスだ」
さらっと暴言を入れ込んでて草
まぁ、僕は誰よりも何でもできるけどね、ここは初心者ってことで。
「すいません。初心者の駆け出しで」
「どうしたものか」
ローランド・アドラムは腕を組んで悩んでいる。うーんと唸ってやがてポンと手を叩く。
「それがあった。それでいこう」
仕草がなんか芝居がかっている。きっと答えはとっくの昔に決まってた。嫌な予感しかしない。
「僕は何をすれば?」
「低所得者うってつけの職業がある。冒険者だ。お前は今日から冒険者に決まりだ」
「冒険者?」
「そうだ。冒険はいいぞ。貴重なアイテムを入手、モンスターの討伐。名声と同時に社会貢献も出来る。無能で低所得者で命の価値が全くないお前にしかできない仕事だ」
冒険者への偏見がひど過ぎて草
「分かりました。僕は今日から冒険者です」
で、具体的にはどんなクエストお求めなんですかね、依頼主さん。
「よろしい。では、西に行け。そこに洞窟がある。低所得者で命の価値がないカスの仕事は鉱石採掘と湧き潰しだ」
もう普通に暴言吐いてて草
「おっと、お前は低所得者の素人だったな。湧き潰しって知ってるか?」
「はい。聞いたことがあります。モンスターは暗い所に湧きます。光源を置き、暗い所をなくしてモンスターが湧くのを阻止するんですよね」
「よろしい。正解だ。低所得者にしては頭がいい」
全然褒めてなくて草
「誰もが安全に洞窟に入れるようにしてくれ。必要なアイテムは小屋にある。では、頼んだぞ。西はあっちの方角だ」
ローランド・アドラムは右を指差す。
「西の洞窟だぞ。言っとくが、違う洞窟に行ってもギバーと認めないからな」
ローランド・アドラムはそう言うとそそくさと黄金の宮殿の中へ引っ込んで行った。西の洞窟と何度も念押しするところが怪しい。まっ、行ってみれば分かるが。
小屋に入り、ラージチェストから松明とオークの原木、食料のバン、鉄のツルハシや鉄のスコップを入手する。ポップアップしているインベントリを確認した。記号化したアイテムが正方形のマスの中で視覚的に示されている。この正方形のマスがスロットだ。
一つのスロットは武器に防具、バケツや卵など特定のアイテムを除いて、同じアイテムなら最大六十四個までまとめられる。そのまとめられた単位をスタックという。
松明が入ったのは十スロット。そのそれぞれの枠に一スタックが入って合計六百四十本。
食料は二スロットにそれぞれ一スタックの百二十八個。
オークの原木は一スロット一スタックの六十四個。
あと鉄のツルハシ、鉄のスコップについては一スタックが一本だからそれぞれ三本づつの計六スロットがインベントリに費やされている。
使いやすいように持ち物スロットからホットバースロットにアイテムを移し替える。鉄のツルハシ、鉄のスコップ、パンとそれぞれ一スタックづつ、松明については二スタック。ポップアップされているインベントリ画面を指で差し移動させた。
準備完了。西に向かう。
このあほなクエストをさっさと片付けよう。ゆらりと登った魔力が体を取り巻く。飛翔魔法を唱える。
「吉祥天」
四方から風が集まり、体が風に押し上げられていく。上空から西を望むと丘の向こう、その地表に大きな亀裂があった。
あれだな。
早速そこに向かう。あっという間に亀裂に着く。下を覗いた。確かに洞窟がある。入り口の周りには多くの湧き潰し松明が立てられていた。ゆっくりと地表に降りていく。
松明は入り口だけでなく中まで続いていた。しっかりとモンスター対策がなされている。この状況からここであっているかちょっと不安になったけど、ローランド・アドラムは確かにこっちの方角を指差していた。
洞窟の中へ入って行く。松明に照らされた階段は緩やかな傾斜で下に下にと向かっていた。
天井は高く、まるで教会の講堂を思わせる広い空間が途切れることなく奥に向かっている。多くの人たちがこの洞窟に入っていたのがうかがい知れる。あの宮殿の金もここで採掘されたに違いない。
金の鉱脈でもあったのか。ローランド・アドラムの一家はここで大儲けをした。大手クラフト会社の重役は仮の姿だな。トリスタン国王だって難しいのに会社員があんな宮殿に住めるなんておかしい。
自分の親を会社の役員と紹介したのも解せない。大儲けをしているのをひた隠しにしているんだろうな。脱税か。なにがギバーだ。どうやら闇が深そうだ。
どれくらい地中に進んだのだろう、やがて洞窟は途切れていた。その途切れ方が不自然だった。洞窟は先細りもせず大きな空間のままここまで来て、それから先に行くのを阻むようにそこでピシャっと垂直の壁が立てられている。
ローランド・アドラムの指示した洞窟はやっぱりここだった。ケツの毛までむしり取られるとは思っていたけど命まで望まれるとはな。
この先に何があるのか、大体察しがついてて草




