社会貢献を語る男2/10
「農業のプロでもない。掃除のプロでもない。造園のプロでもない。もしかして建築のプロか?」
「レシピブックは初心者です」
「ええええっ。マジやっば!」
ローランド・アドラムはまた後ずさってのけ反っている。そして、僕を指差した。
「初心者の分際で僕の開拓地に来たとなるとやっぱりこの低所得者はテイカー!」
「テイカー?」
知らない言葉だ。最近の造語か?
「そんなことも知らないのか。だから低所得者なんだ。テイカーとは人からどう貰うか? 奪うか? についてしか考えないやつだ。搾取する理由には、いくつかの心理的な要因がある。まず、成功は他人を利用することと考えている。次に、得をしなければ損をするという思考。そこにはギブアンドテイクではなく、奪うか奪われるかという考えが根底にある。だったら奪ってやろうと。そして最後に、自分が最優先という価値観。言い換えれば自分さえ良ければOKという考え」
自己紹介で草
「僕がそのテイカーということですか?」
「僕は騙されない。低所得者のお前は技能も能力も何もないのにここに来た。ここに来る人たちは皆、技能や能力を持っている。低所得者のお前はなにもない。お前は間違いなく僕から何か奪おうとしてここに来たんだ」
お前が奪うか奪われるかで草
なるほど、この黄金の宮殿も麦畑も、森の手入れも全部プロを呼んでやった。こいつは何一つ自分でやってない。だから、家を見せびらかそうとはしないんだ。普通だったら家の中に案内して内装をどうやったかとか苦労話や自慢話をする。
「テイカーは家に入れられない」
初めっからお前の銭ゲバハウスに興味はなかったんだけどなぁ。まぁ面白いからここはがっかりしておくか。
「あんまりだ。僕は開拓主の力になりたいと思って来ただけなのに」
「僕のお父さんは月収五百万。大手のクラフト会社の重役。お前の親は何をしている」
え? 何をしていたって。普通に働いて生活してましたが。
「そりゃぁ言えないわなぁ。僕らが貧乏人をなぜ嫌うか教えるわ。まず、貧乏人は頭が悪い。いつもお金に困ってるから自分以外のことを考える余裕がない。だから簡単に、しかもすぐ、お金を稼ぐ方法ばかりを考えている。手間暇かけて努力したりすることはない。貧乏人ほどキャンブルにはまり易いのはいい例だ。勉強が出来るとか出来ないとかは関係ない。ギャンブルで大金持ちになれないのはちょっと立ち止まって考えれば誰だって分かるはず。一貫して理屈が通っていないんだ。感情で何が正しいかを考える。だから、屁理屈言って、はい、論破、みたいなことを平気で言う」
屁理屈言って、はい、論破、は金持ちだって言うわ。
「次に貧乏人は性格が悪い。具体的には三つあって傲慢と妬み、そして、恥知らずだ。傲慢は金持ちの代名詞と思いがちだが、それは違う。貧乏人はマナーが悪いってところからも分かる。普段の生活で低い立場にいるからうっ憤がたまっているんだ。いつもなけなしのお金を使うことになるから払っている相手にひれ伏せといった横暴な態度をとりたがる。店員を罵って優越感に浸るのはそのためだ」
そうなのかなぁ。あんたも僕に対して優越感に浸ってるんじゃないの。
「日ごろからお金の悩みを抱えているってのがいけない。気持ちの余裕がなく、自分が人からどう見られているか分からない。だから平気で周りに悪い印象を与える行動をする」
言いたい放題だな。ここまで言うのならむしろ最後まで聞いてみたい気になる。
「それから妬みだ。これは言うまでもない。持たざる者としては当然のことだ。特に金持ちへの妬みの感情は強すぎる。いつも貶めてやろうと思ってる」
そういうやつもいるかもしれないけど、僕のイメージでは金持ち同士が足の引っ張り合いをしているって方のが強いんだけど。
「最後の三つ目。恥知らずだ。簡単に言えば厚かましい。与えられることはあっても、与えることはない。対価を払わないってことが前提だ。やり口は弱者を装って優れた人にとことんすがろうとする。逆に自分が何かやればすっごく損したような気になる。それだけでは収まらない。それを取り返そうとやっきになって相手に必要以上の対価を求める」
言い終わるとローランド・アドラムは病的なまなざしで、分かったかってな同意を求めるような顔を僕に向ける。
分からねぇーよ。個人の感想だけど、だからといってこれが金持ち全て、頭も性格もいいっていう理屈にはならない。
「家に入りたければ、ギバーになれ」
ギバー? 出た! また新たな横文字造語。まだ話は終わってなかった。
ギバーはギブだろ。テイカーの反対。大体意味は察せられる。とはいえ、何を言い出すか面白そう。ご高説を聞きたいのも半分、ちょっとめんどくさいのも半分。
どうしよっかなぁ。こいつ、どうやら人に危害をくわえそうな感じじゃないし、この開拓主から手を引いちゃおうかなぁー。
いや、時期尚早。もうちょっと付き合ってみるわ。こいつ、イカレてるっちゃぁイカレてる。
「あのぉ、ギバーってなんですか」
「ギバーは社会に貢献している富裕層の僕たち。お金が最終目的ではない。お金で何をしたいのか、出来るのか、ビジョンがある者たちと言い換えてもいい。低所得者よ、お前のビジョンはなんだ。お金が最終目的になってないか。社会に貢献したいか。僕ら富裕層はビジョンのある人を応援する。見返りを期待せず、自分の時間や知識、アイデアなどを惜しみなく与える。お前にその気があるのなら僕ら富裕層はお前に手を差し伸べるだろう」
ケツの毛までむしり取ろうとしてて草




