社会貢献を語る男1/10
ポータルから出た。
木々がうっそうと茂っているけど、ここからは青空がうかがえる。木漏れ日で出来た枝葉の影が足元で揺れていた。森の中へ入っていく小道がある。
うながされるままにそこを進む。道は木々の間を縫って行く。やがて森は途切れ、軽い傾斜地に至る。ここを登れというのだろうか。まだ見ぬ開拓主の意思に従って丘陵を上へと向かって歩を進め、その最も高いと思われるところに立つ。
なるほど、これを見せたかったのか。
延々と広がる麦畑のずっと向こうにポツンと一軒家。日の光に照らされ金色に輝いている。
黄金?
おそらくそれは全て黄金で造られている。大きさ的には王都にある壮大な宮殿とまではいかないんだけど、その建築の構成はしっかりと両翼中央の三棟だ。
銭ゲバで草
色んな人たちを泣かせてそうだな。こりゃぁ楽しみだ。早速、丘を降りていく。
麦畑の端に小屋があった。木製で三角屋根建築。それに付け加えられたテラス屋根の下には作業台やかまど、燻製器や砥石、金床などが設置されている。チェストは小屋の中にあった。僕は建築を透かしてチェストだけを見ることが出来る。それは僕のみの能力。
チェストをかたどってその箇所が黄色にマークされている。三段積み上げられたラージタイプのチェストだった。
それを横目に見、麦畑に一筋通された道を進む。辺りは金色の麦畑でそれに囲まれるように黄金の宮殿。開拓主はよっぽと金が好きと見える。
黄金の宮殿は、背丈の三倍の鉄柵にぐるり全体が覆われていた。丘から続く道の正面には鉄柵の門扉があり、その合掌かまちの上には太陽の門とあった。
つけあがってて草
門の脇に金色の鐘がある。これを鳴らせということか。脇にレバーがあるのでそれを回してみた。鐘が頭を振る。結構大きい音が鳴った。ガーンとなった後もグワングワン響いている。うるせぇーなと思っていると宮殿の正面の棟から男が現れた。
年のころは二十代前半。中肉中背。大体そんな予感はしていたけど、やっぱり金製の防具を着ていた。頭の上にあるネームタグにはローランド・アドラムとある。
ネームタグも僕固有の能力だ。僕はぱっと見で、初めて会った人や魔族の名前を知ることが出来る。固有の名がある者ならその全ての頭上に名前が書かれたタグが浮かんで見えるんだ。
「は? だれ?」
は? ってどういうこと。人を目の前にしてわざわざ、だれ? って言うのも無い。
「こんにちは。僕はヒューです。よろしくお願いします」
ローランド・アドラムは立派な金の防具を着込んでいたけど、頬はこけていた。目の下にもクマがあり、黒縁のメガネをかけている。
「ヒュー? はて、そんな友達いたっけ」
いないいない。今まさに初対面だ。
「おかしいな。もしかして僕、君を呼んだ?」
僕の歳カッコから学校の友達か何かと思っているんだろうか。
「いいえ。呼ばれていません」
「やっぱりだ。じゃぁなんでお前はここにいる」
「開拓のお手伝いに来ました」
「お手伝い? やっぱりだ。お父さんか! それならそうとお父さんも一言言ってくれなきゃ」
はは。自分は身に覚えがないから、お父さんが断りもなくいきなり僕をよこしたんだと勘違いしている。
「農夫か? それとも掃除夫か? 庭師だったらいい。ちょうど向こうの丘に桜を植えたかったんだ」
しかも、使用人として。
「あなたのお父さんに頼まれてきたわけじゃありません」
「えっ! えええええっ。誰だお前」
また一から始めるんだね。ローランド・アドラムはうろたえて僕を指差している。
「じゃぁなんでお前はここにいる」
「自ら進んでお手伝いしようと思って」
「えええええっ。マジか!」
そう言って一歩二歩と後退する。そこ驚くところか。いや、むしろ僕を褒めるとこだろ。っていうか、どうでもいいけど門を開けてもらいたいんですが。柵越しで話すっていうのもなんですから。
「あのぉ、中に入れてもらえませんか」
「無理」
「凄い家ですね。宮殿みたいだし、全部金で出来ている」
「だろ」
まんざらでもないようだ。病的な顔がにやけている。ヒットしたか?
「お前の親の月収は幾ら?」
え?
「答えたら入れてあげられるかも」
いきなり凄いこと訊いて来るな。しかも、 “かも”って。
家を褒めればどの開拓主も大体入れてくれる。苦労して造ったんだ。自分の苦労とセンスを誇りたい衝動は抑えきれないはず、なんだけどなぁ。
とりあえず、ここは父親の月収を言うしかない。見たところ鉄柵は何の変哲もないクラフトされた物。いざとなったら突破するはたやすい。
「二十五万です」
もう百年以上前に亡くなっているけどね。
「えええええっ。やっば!」
ローランド・アドラムは後ずさって仰け反っている。そんなに驚くことか? 普通だろ。
「それでどうやって生活してきたんだ、お前」
「どうやってって、普通に生活していましたが」
「家賃は?」
「家賃は六万って言ってました」
「そんな物件あるのか?」
僕はうんとうなずく。
そんなにおかしいこと言ったか。王都に普通に住んでいましたが? もしかして賃金上昇? あれから百年経ってるんだ。
「年収三百万から下は低所得者って言われる」
はいぃ?
「ということはお前、低所得者だな」
この時代でそうならそういうことになるか。っていうか親の話だろ。僕の話じゃない。
「おい、低所得者。手伝いたいって言ったよな」
もう低所得者呼ばわりで草
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