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支配者になろうとした男6/6

魔力解放五十パーセント。体の毛穴という毛穴から魔力が噴き出す。飛翔魔法を唱えた。


「吉祥天」


洞窟中の空気の流れが一斉に僕に向かって来る。四方八方から風が僕を取り巻き渦巻いたかと思うと体が宙に浮く。洞窟の天井を見上げる。ぐんと上に向かって加速した。


洞窟なんて関係ない。激しい旋風せんぷうと魔法防壁によりガガガと岩石をぶち破ってく。地表を突き抜け、瞬く間に上空。


ジェフ・タイナーのネームタグは岩山の宮殿、ライブラリーにあった。ホバリングから加速し、水平飛行で一直線、ライブラリーの大きな窓に突っ込む。ガラスは飛び散り、重厚な机は木っ端みじん。本は本棚から投げ出され、散り散りに引きちぎられて紙くずとなる。


ちりぼこりと宙を舞う紙吹雪の中、ジェフ・タイナーは部屋の隅で剣を構えていた。お得意の魔法剣は何とか発動させているようだけど、その表情は顔面蒼白で顎が外れたようにあんぐりと口を開けている。僕は指先をジェフ・タイナーに向ける。


「バブル」


“バブル”は子供を喜ばせるために昔よく使った魔法だ。ジェフ・タイナーを透明な薄い膜が囲んだ。それはあっという間に球体となる。この時やっとジェフ・タイナーは僕だと気づいたようだ。薄い膜にへばり付き、目を真ん丸にみひらいている。


驚くのはまだ早い。ジェフ・タイナーを指していた指先を窓の外に向ける。


ジェフ・タイナーを包んだ球体がふわっと浮くと窓から出た。それはシャボン玉のように天高く上がっていく。優雅に宙に舞うその一方でジェフ・タイナーはご自慢の魔法剣を、薄っぺらい魔法の膜に向かって狂ったように振り回している。


お前の実力じゃぁ無理。傷もつけられまい。


魔法のシャボン玉を上空に止め、僕はその横に着く。本当の魔力っていうものを見せてあげないとな。ここからが本番だ。指先を天に向けた。


上空の一点に魔力が集まる。キーンと、ブレードを鋭く研磨するような音が辺りに響く。天の一転に凝縮された魔力はみるみるうちに成長し、やがて空を覆うほどの巨大な魔力の球となった。


ジェフ・タイナーはシャボン玉の中で腰を抜かしていた。僕は天にかかげた指先を岩山の宮殿に向ける。巨大に膨らんだ魔力玉を宮殿目がけこれ見よがしにゆっくりと落下させた。


頂上の建築物が魔力玉に触れるとえぐり取られたように消え失せる。次はライブラリー辺りだろう。高濃度の魔力が圧縮された球体の中では、特別な物体を除いては何ものも形を保てない。魔力玉は触れたものをその形状に従って丸く削り取っていく。


ジェフ・タイナーはというと発狂していた。シャボン玉の膜にへばり付いて泣きながら何かわめいている。


魔力玉は属性転化もしていない。特殊効果も付与していない。ただのエネルギーの塊だ。なのにこの威力。これで属性転化でもすればどうなるか。


ま、そこまではしまい。どこでもフォンに通信が入った。


『どこのどなたか存じ上げませんが、数々のご無礼、申し訳ございませんでした。反省しております。どうか許してください。もうやめてもらえませんか。何年もかけてクラフトしたのです。どうかこの通り』


ジェフ・タイナーがシャボン玉の中で土下座している。


「弱い者をいじめないか?」


『はい』


「支配なんてバカなこと、考えないか」


『はい。一切そんなことは考えません』


「よし。今後タイナーの名を語ることは許さない。いいな」


「はっ⁉ はい」


魔力玉の落下を止める。


『ありがとうございます。これほどの魔力、あなた様はもしかして一族ゆかりの方? そうとしか思えません。剣に魔力をまとわせるぐらいでいい気になっていたなんて、私は危うく一族の面汚しになる所でございました』


一族? 結局こいつの頭にあるのは血筋か。ぺこぺこしてるのは間違いなく僕の前だけだな。こういうやつは徹底的に心を折っておかないとな。な、ラギー。お前だってそうするだろ。


お仕置き続行!


魔力玉の落下を進める。


『な、なんで⁉』


素の魔力は無色透明だから魔力玉を通して宮殿の断面が垣間見える。謁見の間の玉座が今まさに無くなろうとしていた。


『うおぉぉぉぉぉぉぉ! やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! あやまっただろうがよぉぉぉぉぉぉ!』


宮殿の破壊は容赦なく進み、貴族の居住スペースから使用人の居住スペースへ、それから玄関ホールへとそれぞれその上部分がなくなって順に露わとなっていく。あらためて岩山の宮殿、その出来栄えに感心する。まさにジェフ・タイナーの努力の結晶。


『しねしねしねしねしねしねしねしねしねボケ、クズ、カス! しねボケクズカス! しねしねしねしねしねしねしねしねしねボケクズ、カス! しねしねしねしねしねしねしね』


ざまぁぁぁぁぁぁwwww


やがてそこには巨大なクレータが出来上がっていた。どこでもフォンからはまだ、しねボケクズカスとジェフ・タイナーの悲鳴にも似た暴言が聞こえてくる。


どこでもフォンを握りつぶす。


お仕置き完了!


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