支配者になろうとした男4/6
岩山の宮殿から降りて来ていた。海を見渡せる丘にいる。
「ここに家を造れ、ザコ。今日からお前は土木作業員だ」
土木作業員認定で草
なんだかんだあって、入植審査みたいなやつの結果がこれ? ジェフ・タイナーは去って行った。今しがたまでいたそこに記号化した木のオノとにんじんがぷかぷか浮いている。
記号化とはアイテムが実体化する前の状態。これを使えということなのだろう。僕はアイテムを一つも持ってない。記号化した木のオノとにんじんに触れるとそれは消えた。
「インベントリオープン」
そう唱えると僕の前に僕にしか見えないインベントリ画面がポップアップする。
“インベントリ”とはレシピブックを得ると発動できるアイテム収納魔法で、アイテムの管理や簡単なクラフトを行うことが出来る。記号化した木のオノとにんじんはというとそのインベントリ画面の中、持ち物スロットに表示されていた。
木のオノを指して画面にあるホットバー枠に移し替える。ホットパーのスロットに入れるとわざわざインベントリ画面を開かずともイメージするだけで素早くアイテムを出したり、持ってる物を交換したり出来る。枠は九つ。クラフトでも戦闘でも重宝する機能だ。
他にオフハンドスロットもある。メインハンド以外でアイテムを持つ機能で、これはいつも出しっぱなし状態となり道具の入れ替えはインベントリをいちいちポップアップさせないといけない。
ホットパーにある木のオノを実体化させた。それを手にオークの木の幹を叩いていく。
クラフトされた道具で目当ての物を叩くとそれは記号化する。ある一定の時間、記号化の状態を保ち、触れれば勝手にインベントリの持ち物スロットへ移った。
武器や道具、装備、特別な物は別として、収納した資材系アイテムをインベントリから取り出す場合、ほぼキューブブロックとなって現れる。背丈の二倍ほどの木でいうなら大体四個ほどのキューブブロックを手に入れることが出来た。建築資材にはこのキューブブロックを使う。
まずは柱だ。オークの原木キューブを四段積み重ねていく。子供の頃に遊んだレゴブロックみたいなもんだ。ジェフ・タイナーの宮殿はこの工法で造られている。
それを四か所立てて、頂部を互いにつなぎ合わせて梁を渡す。ここがレゴとは違い、キューブはどの面でも結合するので横方向にも伸ばしていける。
柱と梁の立方体が出来上がった。インベントリをポップアップさせる。持ち物スロットの中のオークの原木を、クラフトグリッドのスロットへと指で移動させた。
クラフトグリッドでオークの板材がクラフトされた。オークの板材をインベントリから出して実体化させ、壁、床、天井と敷き詰めていく。
そして最後に壁の一か所を木のオノでくりぬき、インベントリ画面のクラフトグリッドでクラフトしたドアを取り付ける。家はあっという間に完成した。
あとはベッドと作業台、かまどにチェストだな。自分の造った家をまじまじと眺める。
のっぺらの四角い建築物で草
まぁ初心者という体だから、こんなもんだろう。っていうか、頑張りたくない。結果ちゃっちゃと終わらしてしまった。とんがり帽子の屋根がある円筒形の建築を造ってもいいんだけど、やつのことを思うとなぁ。
岩山の頂上にある円盤型の建築物を見上げる。その下のライブラリー辺りにあったジェフ・タイナーのタグが岩山の宮殿内部を通って麓へ移動していた。
ははーん。僕の家が完成したんで見に来るんだな。それにしても、まさかな。
「ラギーの子孫とこんな所で出会うとは」
クリスタとピピンは生涯独身を貫いたし、子孫とかそっちの方の心配はないのだろうけど、ジェフ・タイナーは結構きつい。
地上を支配するとかないわぁ~。
そのジェフ・タイナーが姿を現した。僕の所には来ず、家に近づくとその周りをせわしなく動いている。なんだ? って思っていると家のあちこちから火の手が上がる。
えぇぇぇぇっ! 火を付けて回ってるっ!
慌てて火を消して回るけど追いつかない。家はあっという間に炎に包まれた。
「なにをするんですか!」
「景観が崩れる」
はぁ?
「お前がザコなだけだったらまだしも、建築のセンスもない。私の支配地に豆腐建築なぞ造りおって。もういい。お前は奴隷だ。洞窟に行って鉱物を集めて来い」
土木作業員から奴隷に格下げで草
ジェフ・タイナーは去って行く。例によって記号化されたアイテムが一つ残されていた。
これを使えってことなんだろう。どこでもフォンっていう通信用アイテムだ。それに触れてインベントリに収納。インベントリ画面をポップアップさせる。持ち物スロットに入っているのをオフハンドスロットに移す。
はー。ため息が出る。これでジェフ・タイナーとはいつでもどこでも通話可能ってことだ。
「インベントリオープン」
さてと、洞窟に向かうわけだけど、準備が必要だ。まず取っ掛かりに木のツルハシをクラフトし、次に作業台をクラフトする。木のツルハシは石の採掘だけに使う。鉄の原石やらダイヤモンドは採掘できないから洞窟では使い物にならない。
地面に露出する岩肌を木のツルハシで叩いて石を記号化していく。幾つか石を入手すると作業台の前に立ち、インベントリ画面をポップアップさせた。
作業台はクラフトするための専用アイテムだ。そこからポップアップするインベントリ画面はクラフトグリッドがメインで、高度なクラフトレシピに対応出来る。早速、石を材料に作業台で石のツルハシをクラフトする。
現実にある実物をアイテム化するレシピブックは、アイテム同士を掛け合わせて新たにアイテムを作るレシピのカタログでもある。
レシピブックの指示通りクラフトグリッドのスロットに記号化したアイテムを配置していく。取り敢えずは石のツルハシを洞窟に持って行くとしよう。




