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支配者になろうとした男3/6

「上がってもいいって誰が言った、ザコめ。すぐこっちへこい」


あっと思った。勝手に先に進んでしまった。階段を下りる。ジェフ・タイナーの傍についた。


「こんなもんじゃない。ここはまだ序の口」


ジェフ・タイナーはそう言うと角柱に向かう。角柱には木製の扉があった。


「王は階段なんて使わないのだ」


王? のだ? 王様気取り?


扉を開けると小さな小部屋があり、正面の壁に梯子が下がっている。ジェフ・タイナーは梯子を握る。


「上がれ」


そう命じると梯子の踏さんが動き出す。ジェフ・タイナーは梯子に沿ってまるで飛ぶように玄関ホールの上の階に行った。僕もあとを追い、上の階に降り立つ。


「この階は使用人のスペース」


角柱から縦横十字に大きな廊下が走る。ジェフ・タイナーはスタスタ進み、開け放たれた大扉をくぐる。


「ここは使用人たちの食堂」


延々と続く長テーブルが一、二、三、四と、まぁ十列以上。無人の大広間を過ぎると銀色に輝くシンクや調理台、それにかまどがずらりと並ぶ調理場。次に向かったのは巨大な浴槽の風呂場で、それから通路をまたぎ、無数の洗面台が並ぶ洗面所を突っ切るとベッドが無限に配置されている野戦病院のような巨大寝室に出る。


上がって来た角柱を中心に岩山の内部をぐるりと回って来たようだ。廊下に出ると食堂の扉の前だった。ジェフ・タイナーは足早に廊下を進む。ほどなく角柱の内部に入るとまた梯子を使って上の階に行った。僕も一階上に上がる。


「この階は国家に貢献した者。貴族たちの居住スペースだ」


ここも角柱を中心に廊下が十字に走っていた。廊下に沿った両サイドの壁にはほぼ同間隔でドアが無数に配置されている。ジェフ・タイナーは一番近いドアの前に立つとそれを開ける。そこには壁や天井がモールディング装飾された、クラシカルな雰囲気のリビングダイニングスペースがあった。


と、言うことは廊下に並んだドアの数だけこのような部屋がある?


「す、すごい。これ全部、一人で作ったのですか?」


僕が見たのはリビングダイニングだけ。貴族待遇なら寝室や化粧室、浴室は各々個別に設けられているはず。きっとどの部屋も豪華なのだろう。


「全部で三年かかった。だが、驚くにはまだはやい」


ジェフ・タイナーは角柱の梯子を上がる。一階上がったそこが終点だった。角柱を出ると左手に僕の背丈の五倍はある大きな扉がある。


「謁見の間だ。この階はこの他にもダンスホールや大ダイニングルーム、ビリヤードルームやドローイングルームもある。外交と政治はここで行うのだ」


ジェフ・タイナーは大扉の正面に立つと両の手でそれを押す。大扉が開くとそこには縦に長い大広間があった。正面向こうに階段が数段あり、その上に玉座がある。部屋は巨大なシャンデリアで照らされ、玉座までは赤いカーペットが続く。その上をジェフ・タイナーが進む。


階段を上がり、玉座を通り過ぎ、柱で隠された部屋に入る。そこには壁にまた梯子が上から下がっていて、ジェフ・タイナーは梯子の踏さんを掴む。ビュンと飛ぶように上に向かった。僕もあとを追う。


ぐんぐんと昇り、降り立ったのはライブラリー。大きな窓を背にした重厚な机があり、沢山の本が詰まった多くの本棚が壁に並ぶ。エンチャントテーブルもあった。本棚から浮かんだ魔法の文字がキラキラと光りながら、エンチャントテーブルの上に乗せられた本に吸い込まれていく。


いつ見てもこの光景は美しいと思う。そこを通り過ぎ、ダイニングルームから寝室に入る。また梯子があった。ジェフ・タイナーは上へと向かう。


付いていくこと一階。僕が見たいと言った目的地に着いた。三段積み重ねられたラージチェストが通路を確保してズラリと並べられている。それを囲うようにガラス窓が建築物の輪郭にそってぐるりと丸く一周していた。キューブブロックで作ったとは思えない滑らかな円だ。窓際に行ってみる。


「すげー! 絶景だ!」


地平線まで続く海。入江の波は穏やかで、何匹かのカモメが翼を広げ、風に乗って空中でふわふわと飛んでいる。


ガラス窓に沿って歩いていく。


浜から離れると少し段差になっていて、その傾斜地に林が帯を成して連なる。海と真反対側はというと丘陵地であり、草原が彼方まで広がっていた。さらにガラス窓ずたいに進む。


遠く向こうに湖がある。そこから川が流れ、地形の高低を選んで蛇行し、入江へと向かってる。ジェフ・タイナーが僕の横に立っていた。


「川沿いに耕地を広げる。丘陵地には街を造るつもりだ」


そりゃぁいい考えだ。


「チェストの中も見たいか?」


「え? 見てもいいんですか?」


「いいぞ」


「ありがとうございます」


じゃぁお言葉に甘えて。ラージチェストを開けていく。


「すごい!」


思わず声を上げてしまった。どのラージチェストもアイテムでいっぱいだった。大量のダイヤに金塊、めちゃ大金持ち。武器や防具も軍隊が出来るぐらい充実していた。


「私はこの地を発見した時、運命を感じたよ。私のクラフトのセンス、そして、血筋。竜剣士ラグーン・タイナーの名は聞いたことがあるだろう。勇者アリエルと共に魔王を倒した。私はその竜剣士の玄孫やしゃごにあたる。いにしえの魔法も我がタイナー家にはちゃんと受け継がれてきたのだよ」


ジェフ・タイナーはネザライトの剣を抜き、掲げる。それは魔力をまとっていた。無色透明な気体が剣をゆらりと取り巻いて剣先から湯気が出ているように立ち上る。


「魔法剣。私はこの力で、この地より世界に打って出る」


しょぼい魔法剣で誇ってるの草


属性も特殊効果も発揮しないただの魔力をまとわせた剣。それでいにしえの魔法とは僕たちも嘗められたもんだな。


「私は地上を支配する。言った通り、私にはその資格があるのだ」


はぁぁぁぁ? 支配者ぁ⁉ 


竜剣士ラグーンの子孫が魔王と一緒のこと言ってて草


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