昭和から来た男9/9
魔力解放九十パーセント。体の中の魔力が爆発する。
全身から魔力が放出された。それはまるで爆風のようで、無数にあるラウンジチェアやテーブルは木っ端のごとく吹っ飛び、ガラスの外壁も粉々に打ち砕いていった。
マサキ・ヤスヒコの体も魔力の爆風に持っていかれる。ラウンジチェアやテーブルと共に、枠組みしか残ってない外壁をぶち破って玄関ロータリーに投げ出された。
僕もマサキ・ヤスヒコを追ってロータリーに出た。道に倒れたマサキ・ヤスヒコは頭をフリフリ身を起こす。そして、僕の姿を見とがめると怯えた眼差しで僕を指差した。
「神!?」
神ではないけど、そう見えても仕方がない。魔力解放九十パーセント時の僕には光背がある。
「さてはおまえ、俺に嫉妬して女神との仲を裂きに来たんだな」
ため息が出る。
「返事がない所を見ると図星か! いつかこういう日が来ると思った」
つくづくだね。まぁ、僕としてもあんたに人としての道理を説こうなんてこれっぽっちも思ってないけど。
「超・吉祥天」
山鳴りと共にハトヤの丘に風が集まって来る。気流が生まれ、畑を削り、作物という作物をどんどん巻き上げていく。
「うっ! わわわわわわわ!」
風はハトヤの丘を中心に渦を巻き始めた。地表から剥ぎ取られた多くの作物や農作業小屋の瓦礫が、風の中を次から次に、左からと右へ飛んでいく。その中に銅ゴーレムの姿もあった。
「俺のウィードがぁぁぁぁぁ! 俺ののんびり農家がぁぁぁぁぁ! お前の目的は俺だろっ! 何でウィードまでぇぇぇぇ! 許せねぇっ! 許せねぇぇぇぇぇぇ」
ハトヤの周りには風の壁があるようだった。見上げると風の渦は天に向けてどんどん背を伸ばしている。これはまだ序章。次に襲って来たのは地鳴り。
地がグラグラと揺れ始めたかと思うとドンと突き上げられたかのような衝撃が僕たちを襲う。
「ん? もしもしもしもし!? おい! どうした?」
そんなこと僕に聞くかぁ? 僕らやハトヤをひっくるめて丘ごと、地上から浮き始めている。
「ぐわぁぁぁぁ。これは夢だ夢だ。夢だ。夢だ。夢だ」
浮いているどころか、どんどん上昇し、さらには横への移動も行っている。
「わわわわわわ、ハトヤが飛んでる。これは夢だ。夢から覚めてくれ。たのむ。たのむからさぁー」
恐怖に耐え切れなくなったマサキ・ヤスヒコは例によって草をアイテム化する。震える手でそれをムシャムシャと貪った。そこへポトリと目の前に、銅ゴーレムが落ちて来た。マサキ・ヤスヒコはというと地に転がる銅ゴーレムをまじまじと見る。
「そうだ、これは夢じゃない」
ぐるり辺りを見回した。
「父さんの言ったとおりだ。向こうは逆に風が吹いている」
銅ゴーレムが起き上がった。ポピーを手にし、キュッポ、キュッポ、キュッポと足音を鳴らして歩き出す。あっちをうろうろ。こっちをうろうろ。手にあるポピーを収めるため、ラージチェストを探してた。
「ラピュタだ。ラピュタは本当にあったんだ。父さんは嘘つきじゃなかった」
つくづく昭和で草
となれば、やることは一つ。では、ご要望に応えて。
「バルス!」
丘とハトヤの“超・吉祥天” を解く。
シュッ! と吹き荒れていた風が一瞬で消える。青い空が視界いっぱいに広がった。
ハトヤとその丘は魔法の効果を徐々に失っていく。青空の真っただ中、丘は端からガラガラと崩れ始め、ハトヤの二つの建築も地盤を失って徐々に傾き、ぶつかり合うように倒壊を始める。
僕は飛翔魔法で飛び上がる。マサキ・ヤスヒコは、助けてくれーっと僕に手を伸ばしていた。どんどん僕から遠ざかっていく。
助けてくれないと分かるやマサキ・ヤスヒコはこの状況を自分で打開しようと丘の中心に向けて走り出す。丘の崩壊はマサキ・ヤスヒコを追うようだった。
マサキ・ヤスヒコもなかなかしぶとい。追いつかれそうで追いつかれない。降って来る瓦礫を避け、地面の亀裂をかわし、走り続ける。幾つもの裂け目を飛び、やがては地割れした崖にしがみつく。
眼下にはバラバラと洋上に落ちていく大量の土砂と瓦礫。海面では大小さまざまな飛沫が上がっていた。
「見ろっ! ハトヤがごみのようだ! ひぁっはっはっはっはぁぁぁぁ!」
マサキ・ヤスヒコは狂ったように笑いだした。さっき食った草の効果か?
訳の分からんやつだ。エンチャントされた草ってのはない。ナチュラルに狂っているというのか? 嘘も百回言えば真実となる。あるいは、マジで新種の草でも発見したか。
ここは百年前まで魔族の土地だった。やばい草がないとは言い切れないけど、ま、事ここに至ってはもうどうでもいい。
マサキ・ヤスヒコの掴んでいた崖が崩れ落ちる。マサキ・ヤスヒコは土砂と共に空中に投げ出された。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
大量の土砂と瓦礫に混ざってマサキ・ヤスヒコは海面に向かって落ちていく。
「ハーレムは滅びぬ。何度でも甦るわぁぁぁ。ハーレム願望こそ、男の夢だからなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ざまぁぁぁぁぁぁwwww
お仕置き完了!




