昭和から来た男8/9
洞窟の位置は動物を確認する時に、どうせ採掘もやらされるんだろうなって思って上空からよさげなのをすでに選りすぐっている。早速そこに向かう。
洞窟の中は、すでにある程度は松明で湧き潰しされていた。ダイヤモンドは結構深い位置にある。洞窟を奥へと突き進み、松明の明かりが途切れた所で立ち止まる。洞窟はまだまだ底深くへ続いているようだった。
これまでモンスターにはちょくちょく出くわした。これから先はもっとだろう。手の平を地に当てる。
魔力解放五十パーセント。体の毛穴という毛穴から魔力が噴き出す。
「マジック・ウェーブ」
魔力の波を手の平から地中に放出する。魔力が各種物体に当たって跳ね返って来る感じから地中のどこにお目当ての鉱物があるか大体見当がつく。
果たしてダイヤモンド鉱石が集まっている場所が分かった。ダイヤモンドのツルハシでそこに向けてガンガン掘り進めていく。
僕にかかればダイヤモンド三十個なんて一発だ。十二個の塊にぶつかるとその高さで枝葉を伸ばすように周辺を掘りまくっていく。
僕流ブランチマイニング。洞窟を竪堀してからあっという間にダイヤモンド三十個どころか五十個をゲットした。
農作業小屋に戻っても良かったけど、マサキ・ヤスヒコはあの通りブラック開拓主でしょ。
洞窟に簡易シェルターを建築して朝まで休むことにした。ベッドで横になってぐっすりと眠り、朝の時間になって起床し、昨日来た道を戻る。
洞窟を出て、朝日を浴びつつ荒野を進む。ハトヤとその丘、大農場が見えて来た。かくして農作業小屋に着く。
あるはずの動物小屋が見当たらない。代わりにそこには幾つもの煙が糸を引くように空へと立ち上っていた。
朝の静けさがかえって僕を不安にさせる。恐る恐るそこへ行くと苦労して建築した動物小屋が灰と炭の山になっていた。牛や豚、羊やヤギ、そして、馬のどれもが切り殺されているか、焼け死んでいる。鶏小屋だけは健在だった。
中を覗く。鶏は四十二羽全ていた。ほっとした。火災にも巻き込まれず、処分もされてない。けど、なぜ!
どうして鶏以外全部、殺傷処分した? 鶏小屋のドアを解放すると鶏を追い立てた。鶏たちは野原へ散っていく。遠くへ行くんだ。もうここに近付いてはいけない。
ハトヤへ向かって足早に歩く。昨日、洞窟で眠らなければこんなことにはならなかった。豆腐建築を残したっていうことは僕への当て付け、嫌がらせに他ならない。どの開拓主も豆腐建築を嫌う。美観を損ねると言って真っ先に潰しにかかるもんだ。
ハトヤの別館と本館が見えてくる。丘を登っていくと本館のロビーにマサキ・ヤスヒコのネームタグを見つけた。
あのジャンキーやろう! 我慢の限界、ってことでいいよな。
正面玄関からエントランスを通り、ロビーに立つ。
マサキ・ヤスヒコは僕を待っていたようだった。別に慌てた様子もなく、無数にあるラウンジチェアの一つから腰を上げると僕に向けてどや顔を見せる。
「ざまぁぁぁぁぁぁ! 荒らしたったわ!」
マサキ・ヤスヒコは高笑いをした。
女の子を不幸にするのはもちろん許せない。けど、動物をお遊びで殺したりするのはもっと許せない。
「おまえには感謝してるんだぜ。なんたって俺は、ウィードを荒らす害獣どもにずっと悩まされていたんだからなぁ」
なるほどね。鐘や案山子は動物を寄せ付けないようにしてたってわけか。どうりでモンスター対策としては変だと思った。
「これが笑わずしていられるか。そのうえマヨネーズの原料となる卵も確保出来そうだ。害獣の死骸だって肥料代わりさ。あそこにウィードを植える。育つこと間違いなし。大団円と思わないか?」
全然思わないね。むしろこっからだ。
開拓主のセンスが疑われる豆腐建築をあえて残したっていう理由も分かったし、こいつのやったことは単なる嫌がらせではない。全て計算して僕をハメたんだ。お遊び以上にたちが悪い。
ロビーに響く高笑いが止んだ。マサキ・ヤスヒコは先ほどのバカ面の笑いから打って変わって眉をひそめ、露骨に嫌な顔をする。
「おまえのアホ面には心底ウンザリさせられる」
そう吐き捨てるとマサキ・ヤスヒコはゆっくりと歩み寄って来る。
「ダイヤモンドは? 女子はダイヤモンドが大好きだろ。さぁ、よこせ」
手の平を、僕に向けて差し出だす。その頬に浮かんでいるのはねっとりとしたさげすむ笑い。
お仕置きします!




