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昭和から来た男5/9

丘を回り込む形でハトヤの裏にやって来た。そこには木製の、如何にもって感じの農作業小屋がある。二階家で上の階には多くのラージチェストが積み上げられていた。


僕はレシピブックの魔術式をいじっているから、建築に入らずとも内部のチェストが見える。ま、いわゆるチートっていうやつだ。


マサキ・ヤスヒコは小屋の中に入っていく。中は仕切りのないがらんどうの空間で、作業台やかまど、燻製器や大釜、溶鉱炉、鍛冶台、砥石、金床、石切台など機能ブロックがずらりと並ぶ。機織機はたおりき、書見台、製図台もあり、エンチャントテーブルも置かれていた。


大農場もハトヤもここからスタートしたのがうかがい知れる。レシピブックも万能農具と誤解しているわりになかなか使いこなしているようだ。


こいつ、レシピブックを女神に与えられた万能農具って思い込んでたら脳内でホントにそうなったってパターンかぁ? 


嘘も百回言えばホントになってて草


階段を登って二階に上がる。ラージチェストが所せましと積み上げられていた。大農場やハトヤをクラフトするため、せっせこ集めたんだろう。


「中を見てみろ」


「いいんですか?」


「いいも何もない。女神も言ってたろ。農業も建築もこれからおまえがやるんだって」


女神って。農業も建築もおまえがやりたくなくなったからだろ。


女神のせいにしてて草


「あ、はい」


ラージチェストを開けてみた。石炭、木の剣、ハサミ、鉄の原石、銅ブロック、盾、鉄のインゴット、ダイヤモンド。二個目はタンポポ、ポピー、赤色のチューリップにライラック、そこに火打石やレンガ、小麦に鉄のオノが入っている。


花畑でも作ろうとしてたんか? 三個目開けても四個目開けてもラージチェストの中身の状況は大体同じだった。全く統一感が無い。


頭もチェストも整理できてなくて草


とはいえ、案外こういう人は部屋がどんなに乱れていても、机の上の書類が山積みになっていても、どこに何があるか分かっているものだ。


「最初の仕事だ。これ全部、ラージチェストの中身を整理してもらう」


困ってたんかぁーい!


これ全部となれば流石にキツイ。並んだラージチェストの列が、1、2、3、4、5と五列で、列を作っている三段積のラージチェストは1、2、3、4、………で十、ということは百五十個!


おいおい、マジかよぉ、って普通はなる。けど、僕はそれにあたらない。


なぁに、チートを使おうってわけじゃない。レシピブックはこういうやつのために、特別なモブを用意してくれている。


「すいません。ちょっと待っててくれますか?」


「はぁ? まさか逃げるんじゃないだろうな」


「逃げるなんて滅相もない。ほんのちょっとです。すぐ帰って来ますから」


返事を待たず農作業小屋を出た。畑に入ると案山子かかしの前に立つ。さっそく頭のくり抜かれたカボチャを叩いて記号化し、持ち物スロットに収納。それをあと二箇所繰り返した。


農作業小屋に戻るとマサキ・ヤスヒコが口をチョンがらせて待っていた。足の裏でも床を早いリズムでトントン叩いている。


「たしか、このラージチェストだったよな」


銅ブロックを探す。イラついているマサキ・ヤスヒコにお構いなくラージチェストを開けて中を確認する。


一発で銅ブロックを探し当てた。喜びもありつつ、記号化された銅ブロック三つを入手すると僕のインベントリをポップアップさせる。持ち物スロットに移った銅ブロックを床に一つ、二つ、三つとアイテム化させた。


さらにその銅ブロックの上に、アイテム化させたくり抜かれたカボチャを一つ、二つ、三つと置いていく。


ボン! ボン! ボン! と煙が三つ。それが晴れると、頭に避雷針を付けた土偶風の、胸元までの高さの可愛い銅ゴーレムが三体、出現していた。


「な、なんじゃこりゃぁ!」


マサキ・ヤスヒコは腰を抜かしてひっくり返る。銅ゴーレムたちはキュッポ、キュッポ、キュッポと足音を鳴らして部屋に散らばっていった。


「わりゃぁぁぁ! どこでモンスターを湧かしとんじゃい!」


マサキ・ヤスヒコは飛び起きると僕の胸ぐらをつかんできた。


「いや、ちょっと。よく見て下さいよ。彼らはラージチェストの整理をしてくれてるんです。ほら」


キュッポ、キュッポと銅ゴーレムはあっちのラージチェストに行ったと思ったらこっちのラージチェストを開けて、手にあるチューリップをその中に入れる。


マサキ・ヤスヒコは目を丸くして、口をぽかんと開けている。


「ほんとだ」


「でしょ。ほっとけば、ラージチェストの整理は全部、彼らがやってくれますよ。今後、僕らの手を煩わすことはないです」


「そ、そうなの?」


「銅ゴーレムの召喚と使役は僕だけが持つ力じゃないんです。レシピブック、あ、いや、万能農具を扱える者なら誰でもできます」


「俺もか?」


「はい。当然です」


「なるほど。それで女神はおまえをよこしたってわけか」


はぁ?


「よくあるだろ。妖精とか物語の進行役な。ゲームならチュートリアルだ」


死刑囚から女神の使いになってて草


「よし。おまえには特別な任務をあたえよう。付いて来い」


そう言うとマサキ・ヤスヒコは農作業小屋に出て森に接する畑の前までやって来た。


「ここは秘密の栽培場だ」


「秘密?」


笹のような、雑草のような、明らかに野菜ではない草がサトウキビ畑のように植えられている。


「ああ、そうだ。おまえにはあの森を切り開いて整地してもらう」


畑に隣接する森を指差した。


「整地ですか」


「そうだ。整地だ」


森より目の前にある、秘密の畑の方が気にかかってしょうがない。絶対やばいやつだ。


のんびり農家は隠れ蓑で草


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