社会貢献を語る男9/10
エンダードラゴンは僕の頭上で二度三度、大きなカーブを描いたと思うと凄まじい勢いで僕に向かって来る。
暗闇に浮き上がる白目と赤く燃え上がる紫色の瞳が僕を捉えて離さない。目前で咆哮した。白く輝く尖った大きな牙が露わとなる。僕を威嚇し、その恐怖で僕の体が硬直したところに体当たりをかまそうって魂胆だ。
まさに激突寸前。僕は飛翔魔法にフルスロットルをかけた。急加速し、空を駆け上がって行く。
体当たりは不発に終わった。けど、エンダードラゴンに動揺はこれっぽっちもない。いつものようにエンドクリスタルの光線を各塔から順次浴びつつ、優雅に、そして華麗に、旋回半径を狭めつつダンスでも踊るようにクルリクルリと祭壇へ引き寄せられていく。
エンダードラゴンの行動パターンは二つ。飛行フェーズと待機フェーズで、それを交互に繰り返す。
飛行中、エンドクリスタルから結構な頻度で体力の回復を受ける。エンドクリスタルを放置して討伐するにはかなりの瞬間火力が必要だ。
常識的に考えてエンダードラゴンの討伐は時間をかけて慌てずエンドクリスタル一つ残らず破壊してから、となる。待機フェーズは大賢者ピピンの救済処置と取っていい。
けど、それに僕は当たらない。祭壇で待機フェーズに入ったエンダードラゴンを見定める。エンダードラゴンの体長は、僕の十倍は優にあろう。それが小指の長さと同じ位に見えるほど僕は上空にいる。
まとっている魔力に火炎耐性効果を最大レベル+99で付与した。さらに体にまとう魔力を風属性から火属性に転化させる。
「飛竜」
全身から劫火が吹き上がったかと思うと急激な落下が始まる。腕を胸の前で畳み、体勢を一直線にし、空気の抵抗を最小限にとどめる。落下のスピードは増し、その加速度は瞬く間に限界突破だ。
「流星」
キックの体勢。もう目と鼻の先に羽ばたくエンダードラゴンの背!
「弾」
エンダードラゴンにクリティカルヒット。僕は地上に着地する。背後ではまばゆい光が発せられる。
振り向くとエンダードラゴンの体内で光が膨張していた。黒い鱗の表皮はその光に圧されるかのように剥がれ落ちようとしていて、その亀裂や隙間から光が放たれ、放射線状に奈落の闇に広がっている。
次の瞬間、大爆発を起こす。轟音と共に閃光が走り、一瞬辺りを真っ白にする。徘徊する無数のエンダーマンのシルエットが光の中に浮いていた。やがて広がった光は煌めく粒子となって祭壇に立つ一本の柱に集められていく。
噴水のような形の祭壇。その水の噴出口のような柱の上に真っ黒い卵が出来上がる。ジ・エンドは元の暗闇の世界に戻っていた。祭壇の水盤のような箇所の中には星屑が漂う宇宙のような空間が広がっている。
帰るための出口ポータル。つまりそれはジ・エンドに来たらエンダードラゴンを倒すまでエンド要塞に帰れないってこと。
そして、さらにもう一つ。エンダードラゴンを倒したら現れる物がある。それがエンドゲートウェイポータル。ジ・エンド本島から離島へ行くにはこのポータルが必要だ。
本島にはアイテムが入ったチェストは存在しない。手に入れようと思えばエンドゲートウェイポータルを使って離島に行き、そこでエンドシティを見つけなければならない。
エンドゲートウェイポータルは本島からそう遠くない空中に現れる。探すのは難しくない。発見しやすいように二分に一回、上下に紫のビームを発している。ほどなく暗闇に紫に光る縦のラインを視認した。
頂点をそれぞれ天地とした二つの四角錐に、黒いキューブブロックが一個挟まれている。四角錐は底辺三ブロックの大きさで、挟まれている黒いキューブブロックはというと他のポータルと同じように宇宙が詰まったような造形をしている。
魔法が失われた今、エンドゲートウェイポータルに入るのに二つの方法があげられる。一つは階段をクラフトして近づき、挟まれている宇宙のキューブブロックに這いつくばってズルズルと入る。もう一つはエンダーパールを使用する。
エンダーパールは投げた先の着弾したところにテレポートさせるアイテムだ。レシピブックのアイテムを使用してエンダーマンを倒せば一定の確率でドロップする。使用方法はエンダーパールを宇宙のキューブブロックに投げ込むだけ。
エンダーマンは繁華街の雑踏のように僕の周りを往来している。こいつらは攻撃されるか、目が合わない限りはかかってこない。どいつもグオグオと鳴くか、ウウウウウウと地を這うようなうなり声を上げている。
エンダーマンと目が合わないようざっと見渡した。エンダーパールをドロップしそうなやつを探し、そいつと目を合わせるためだ。失敗して他の何体かのエンダーマンも引き寄せてしまったけど、ドロップしそうなやつとは目が合った。
そいつは頭を横半分に割くように口を大きく開けるとギュオーと叫ぶ。ブルルと震え、消えたかと思うと突然僕の目の前に現れた。エンダーマンは自分自身にもテレポートする能力が備わっている。エンダーパールをドロップする所以である。
奇怪な風体のやつが突然目の前に現れるっていうのは何とも気味が悪い。慣れが必要だ。
この能力の恐ろしい所は多くのエンダーマンと目を合わせてしまい一斉にテレポートされること。驚いたり、怖がったりして、パニックになってはならない。そうなってしまうと、いわゆるリンチっていうやつにあってしまう。




