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社会貢献を語る男8/10

ポータルを抜けるとそこは見渡す限りの暗闇の中だった。


少し離れたところに島が宙に一つ浮いている。僕も暗闇に浮いていた。足元には黒曜石で出来た五歩×五歩の板があり、その下は無限に続く暗黒である。


見上げても何もない。ただ真っ暗な空。自然の息吹も生命の脈動も感じない。この空間は奈落とされ、目の前に浮かぶあの島をジ・エンド本島という。


ここはジ・エンド。世界の最果てとも、世界の深淵ともいわれる。


「この空気感、悪くない」


ここに来るといつも、とうの昔に失った何かを僕に思い出させてくれそうな気がする。


「吉祥天」


風がないジ・エンドに空気の流れが出来る。僕に向かって押し寄せ、僕の体を押し上げていく。


百年前、黒曜石の床からジ・エンド本島に渡るのに魔法を使った。今はレシピブックでアイテム化した資材を使って橋をクラフトするという。それはつまり、資材を何も持って来なければここに来た時点でまさしくジ・エンド、ということだ。


奈落の空を進む。ほどなく本島の上空、その暗闇の中に停止する。ここは太陽も月も星もない。無限の空間に灰色の大地が幾つも浮かぶ世界。


「魔王が生まれた地。そして、僕の生まれた地」


ジ・エンドには本島を中心に多くの島が存在する。こっちからだと向こうは暗闇で全く視認できない。世界に存在するのはこの本島だけだと錯覚してしまう。


ただ、離島の方からだと暗闇にほのかに照らされた本島の姿が確認できる。それはここ、本島だけが唯一光源を有しているからだ。


エンドクリスタル。重なった二つの立方体の枠、その中をピンク色に光る立方体が回転する。果てのクリスタルとも言われるそれは、黒曜石で出来た塔の頂部に設置されている。ふわふわと浮遊していて、辺りに淡い光を放っていた。


その数は十。多分に漏れず台座たる黒色の塔もジ・エンド本島に十基存在した。どれ一つ同じ高さのものはない。高低ランダムに円を描いて配置され、その中心に噴水のような造形の祭壇が鎮座している。


塔はまるで祭壇を守るようである。その祭壇に巨大な黒い影が降り立った。水の噴出口のような一本立った柱を後ろ足でしっかり掴み、翼をはためかせている。


エンダードラゴン。


黒曜石のような真っ黒な鱗に覆われ、コウモリの羽のような大きな翼を持つ。首は長く、尾も長い。鋭い爪の四肢を持ち、後ろ脚は二足歩行するためか前足に比べ太く大きかった。


体がうねり、コウモリのような羽を鷲のようにダイナミックに羽ばたかせる。全身が闇に溶け込むほど黒いから、首から尻尾にかけて伸びる背びれの灰色や、翼桁よくけた部分の灰色が動くたびに闇にあやしく映える。


エンダードラゴンは祭壇にある柱を蹴ると飛んだ。まるで気流に乗って行くかのように祭壇の周りを大きく旋回し、上昇していく。高度が一番低い黒曜石の塔の高さになったかと思うとその塔のエンドクリスタルがエンダードラゴンに向けて光線を発射する。


同じ高度を飛び続ける間中、エンドクリスタルの光線はエンダードラゴンを捉え続けていた。高度を上げるとその高さの塔のエンドクリスタルが反応し、替わって光線をエンダードラゴンに照射する。


ほの暗いジ・エンド本島にまばゆく輝く光の筋。暗闇の空に次々と発射されているその光景は幻想的で、それでいて妖しい。エンドクリスタルがエンダードラゴンに特別な力を与えていると容易に想像できる。


果たして、エンダードラゴンはこの光線から体力やダメージの回復を受けている。この光線が当たっているうちは、エンダードラゴンは倒せない。十基の塔の上にあるエンドクリスタルそれぞれ全てを破壊しなければ何も始まらないのだ。


もちろんそれを、エンダードラゴンは黙って見ていない。黒曜石の塔に近づくものなら執拗に攻撃を加えて来る。


エンダードラゴンの姿は僕より上空にあった。上昇していく最中、僕の存在には気付いていた。上昇から下降に転じると咆哮し、口から紫色に燃える闇属性の玉を射出する。


エンダーチャージという攻撃だ。ちょっとでも触れれば激痛に襲われ、体力をごっそり持っていかれる。


何を隠そうこのエンダードラゴンも、エンドクリスタルや黒曜石の塔も、大賢者ピピンの創作物である。彼が祭壇のガーディアンとしてエンダードラゴンその他一式をここに配置した。誰も簡単にこの地を踏ませない配慮だと思う。


魔族たちも過去、ジ・エンド全島にガーディアンを置いた。エンダーマンである。そいつらは魔族が姿を消した今もなおジ・エンド全島に存在している。


暗闇なら地上地下問わずどこでも湧くモンスターだけどジ・エンドでは特別だった。エンダードラゴンがいる今もそこらかしこにうようよしていて、どいつもこいつも闇に漂うようにあっちこっちをうろついている。


背が高く、無駄に手足の長い人型のモンスターで体からは紫のキラキラと光るパーティクルを放っている。エンダードラゴンと同じく、闇に溶け込む真っ黒なフォルムをしていて、遠目でも目立つ妖しく光る白目と薄紫の瞳を持っていた。


エンダードラゴンが放ったエンダーチャージはというと僕の横を通過し、灰色の大地に着弾する。紫の玉はボッと弾け、海に広がった油に火がつくごとく辺り一面、紫色のモヤモヤがバッと広がる。炎とも雲ともつかないそれはすぐ消えることなく一定時間その場に漂い続けた。


地上を彷徨うエンダーマンが不用意にそれに触れた。のけぞってウゴォーと断末魔を上げて消える。軽く触れた別のエンダーマンは命が助かったようだ。上空のエンダードラゴンへ向けて口を大きく開き、ギュオーと叫び声を上げ、ブルルと体を震わせる。


エンダードラゴンもエンダーマンも同じジ・エンドの住民だけど、共存しているわけではない。お互いルーツがルーツなだけにやはり相容れられない仲というわけだ。


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