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社会貢献を語る男6/10

「僕です。西の洞窟に向かった」


「は? 低所得者のテイカーか! なんで戻って来た! 西の洞窟へ行けといっただろ!」


クマがある眼を釣り上げて、鉄柵越しに怒っている。思ったより僕が全然早く帰って来たんで洞窟に行ってないと決めつけている。


「行きましたが」


「うそをつけ! だから低所得者の貧乏人は信用おけない」


“頭痛が痛い”的な言いぶりで草


「嘘ではないです。ちゃんと証拠があります」


「なら! 見せてみろ! 鉄の原石だったら許さんぞ!」


他の洞窟に行ったと思ったか、それともその辺の山で鉱石集めでもして帰って来たとか? あいにく鉄は採れてませんわ。かわりにほれ、これ。


ホットバースロットにある金のリンゴを取り出す。


「え?」


ふふ。金はお好きでしょ。


「金のリンゴ?」


「はい。金のリンゴです。他にもありますよ」


エンチャントされたリンゴも取り出した。


「え、えええええええええ。これ、どういうこと?」


はは。戸惑ってやがる。そもそも洞窟に行ってないと考えているようだけど、エンチャントされたリンゴなんてその辺でそうそう見かけるもんじゃぁない。


「巨大洞窟の底に通じる洞窟にスポナー部屋が三つもありました」


「はっ! あああ! そういうことだったんだ。だから、倒しても倒しても沸いて出て来てたんだ」


倒しても倒してもって。


お前が戦ったような言いぶりで草


あんな危ない所に素人を向かわせるなんて考えられない。だいたいお前はどんだけ命を無駄にしたんだ。鬼畜の所業としか思えない。


「他にもあるんだろ? スポナー部屋が三つもあったんだ」


「ありましたよ。エンチャント本とか」


「早く出せ! 早くしろ!」


鉄柵越しに言われてるの、銀行強盗に襲われているようで草


「はい。分かりました」


銀行員が強盗の注意を引き付けるためによくやるやつをやってみた。アイテムをすぐそこにばらばらと撒く。


エンチャントされたリンゴ 二個

金のリンゴ 二個

エンチャントの本・氷渡Ⅰ

エンチャントの本・水中作業Ⅰ

エンチャントの本・鋭さⅠ・貫通Ⅰ

ダイヤモンドの馬鎧

鉄の馬鎧

金の延べ棒 十二個

バケツ 二個

松明 三十二個

石炭 八個

糸 五個

クモの目

骨 二十八個

麦 三個

小麦 四個

腐った肉 三十六個


ローランド・アドラムはというと鉄柵の向こうで慌ててる。門扉のレバーに飛び付くとガチンとレバーを引く。門が開いたかと思うとローランド・アドラムは飛び出して来た。


プライドも何もあったもんじゃない。公共の場で小銭をぶちまけたごとくアイテムを拾い集めてる。


自分の物のように思ってて草


瞬く間に全て拾い集めるとローランド・アドラムは、はっとしたような素振りを見せ、その場でピタッと固まる。


沈黙が訪れた。


変な空気だ。なんだろうと待ち構えているとローランド・アドラムはその病的な眼差しを尖らせ、視線を僕に向ける。


「まさかネコババしたんじゃないだろうな」


えっ! こいつ、さっきの沈黙で考えていたのがそれ?


人の気持ちを踏みにじってて草


アイテム入手だけではない。僕のやったことが、人命の安全確保とか資源エネルギーの自給とか、お前の開拓地の環境改善にどんだけ貢献したか。


「いいえ。全部持ってきました」


「ま、そういうわな」


クマのある目でジト目を向けられる。


全くもって信用してなくて草


「これからはこういうことがあっても勝手にチェストを開けるな。必ず僕を呼べ。僕が行く。分かったな」


僕の返事を待たずローランド・アドラムは鉄のインゴットを十個出した。


「これはお前の取り分な」


はいぃ?


つり合いが全く取れてなくて草


お前さっき“鉄の原石だったら許さんぞ!”って言ってたよなぁ。それって、お前にとって鉄がいらない物って言っているようなもんじゃない。しかも、“取り分”って。


僕が持って来たアイテムから分け与えたような言い方しやがって。そもそも鉄なんて僕の持ってきたアイテムの中に微塵たりともなかったんですけど。


「はぁ? 低所得者、なんか不服そうだな」


頭おかしいんかい。不服も何もそりゃぁないわー。


「税金というものを知ってるか?」


初耳です、とはならんわ。そんなもん、誰だって知っている。


「どうやら知らないようだな。どうやって暮らしてたんだ?」


ガクっ! 


やっば。膝の力が抜けた。どう見ても僕の表情は知ってるって顔だろ! 僕の親はちゃんと税金払ってたわ。


「これだから低所得者の貧乏人は困るわぁ。税金とは皆の暮らしを支えたり、皆が豊かになるために使われる、皆から集めたお金だ」


税金は確かにそういうことだけど、今は取り分の話だ。


話をすり替えてて草


「税金は社会貢献の第一歩。低所得者の貧乏人から脱したいだろ。だったらテイカーは辞めろ。ギバーとなれ。富裕層のステージに上がって来いよ。お前は見どころがある。その気があるのなら僕ら富裕層はお前に手を差し伸べるだろう」


手を差し伸べるって、あんだけのアイテムを鉄のインゴット十個と交換しといてそれはない。言ってることとやってることが真逆で怒るどころか笑えて来るわ。


「どうだい? 人の役に立とうとは思わないかい?」


安く見られていて草


僕が何でもやってくれると思っているのかな。それとも、低所得者は学が無いと思って言葉巧みに騙せたと思っているのかな。けど、一体どんなことやらせるつもりなんだろう。僕はともかく、普通の人にとってそれが命懸けなのは容易に想像がつく。


「嫌だと言ったら?」


「いいだろう。不満があるのならこの地を去れ。ただし、王都に戻ったら無事に暮らせると思うな。僕がお父さんに言えば憲兵どころか軍隊も動かせる」


うっわぁー、軽く一線を越えて来て草


っていうか、これほどまでに僕にやらせたいってことってなんだ。逆に興味が湧いて来たんですけど。


「分かりました。やります」


「よろしい。では、次の仕事だ。低所得者の貧乏人の冒険者よ。エンダードラゴンを狩れ」


言うて事欠いてラスボスで草


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