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紅き宝石  作者: 神崎寧々
22/24

交差する関係



ずっと好きだったんだ。



君の心が違う奴に向いていると知りながら。



結婚が決まっていた時は、

有り余る時間を費やして愛していけばいと思っていた。



なのに。



全て奪われた。



剣と剣が混じり合っては離れ、また混じる。



「へぇ…着いてこれるんだ。」


「……舐めるなよ、ガキ」



挑発するノイルへ舌打ちと共に発する。

そして、どんどん打つ強さが加わっていく。


次第に剣を受けるノイルの表情が険しくなる。



「っ……くっ!!」



大きく剣を振られ、ノイルの手から剣が弾かれる。


ドッと腹を蹴られ尻餅を着いた所で喉元に刃が据えられる。



「………あんた……強いな」



上下する肩を押さえることもせず、見下すアルトを見上げる。



「……お前もな。」



そう呟かれた言葉に自嘲の笑みをこぼすと、ノイルは目を閉じた。


「ねぇ、ユリアの事好き?」



そう尋ねたノイルにアルトは一瞬驚いた顔をしたが、すぐ笑みに変わる。



「10年前から愛してるよ。」



その言葉にノイルは目を丸くする。



「10…年前……?」



10年前と言えば、ユリアが嬉しそうにあの赤い宝石の着いた指輪を自慢し始めた時だ。



「まさか…お前が…?」



そう問い返したノイルにアルトは笑った。



――ああ…お前なのか。



理解したノイルは苦笑する。



「あんたには勝てないよ。」



あんたの存在がどれだけユリアに影響するかを知っているから。



『ノイルっ!!見て、綺麗な紅色でしょ?』



幼いころのユリアの顔が浮かびあがる。


幸せそうな、嬉しそうな顔が。




「……敵わないな……」


「あ?」



小さく呟かれたノイルの言葉に聞き返せば、ノイルはなんでもないと笑った。



「僕の負けだ。好きにしろよ。」



そういったノイルの首元に切っ先が向けられる。



「……驚かねぇんだな」


「もとより覚悟の上だったからね。」



何も冷徹、冷酷。無敗を誇るエスカールのアルトに敵うなんて微塵も思ってなかった。


それでも立ち向かったのは……



ただ、ユリアが幸せならそれでいいんだ。



目を閉じたノイルに、アルトは剣を振り上げた。




「………………」



いくら待っても剣が来ない。


いや、もしかして…もうきたのか?



不思議に思ったノイルが目を開けると、丁度アルトが剣を仕舞う所だった。



「ちょ…!!何勝手に剣しまってんだよ!!」


「あ?」



慌てて立ち上がったノイルをアルトは横目で見下す。


ノイルが立ち上がってもアルトとの身長差は隠せない。



「なんだ…切られたかったのか?」



そう笑って言うアルトにノイルは詰まる。


決して、切られたいという願望はない。



「そうゆう訳じゃねぇけど…」


「ならいいじゃん。」



そう言いながら馬に跨がる。

手綱を取りながらアルトはノイルを振り返った。




「お前のそうゆう所好きだぜ。」


「なっ………!!」



そう言い残したアルトにノイルは叫びたくなる衝動を押さえた。



「…………俺も、あんたの一途さが好きだよ。」



去っていくエスカール軍を見ながら小さく呟いたノイルの言葉は空へ吸い込まれる。



「俺らの敗けだ。………帰るぞ。」



勝ち残った兵を従えてアルトと反対方向へ馬を走らせる。



「……ノイル様、よろしいのですか?」


「………ああ。」



我ながらバカな事をしたと思う。


敵わないことは分かっていた。


でも、こうでもしなきゃ今までユリアを好きだった気持ちを否定する事になりそうだった。


そんな簡単に諦められるような気持ちではなかったんだ。



「好きだったよ、ユリア」



青い空を仰ぐ。


そう呟いたノイルの目から涙がこぼれた。



――君の幸せを祈ってる


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