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紅き宝石  作者: 神崎寧々
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その背を見つめて



翌朝、城が騒がしい。



「…ユリア様。アルト様が出陣なさいます。」



控えめな声でリーシャが呟いた。


会って泣いてしまうならと思い、見送りをせずにベッドに倒れこんでいたユリアはリーシャの言葉にゆっくり顔をあげる。


元気がないユリアは立ち上がると、ゆっくり窓へ近づき、ベランダへ出た。



沢山の兵が城から出ていく。

その光景をただ見つめていたユリアは1つの馬が近づいてくるのに気付いた。


馬はユリアの下で止まり、馬に乗っていた兵が兜をとる。



「あっ………ると…」



黒い髪がなびく。

紅い目がユリアを捉える。



何も言えないユリアに

アルトは笑いかけると、口を動かした。



《     》



5文字の言葉だ。


距離が遠く、アルトも声を張らなかったので、声がユリアに届く事はなかった。



言い残して背中を向けるアルトを見つめる。



「………いよ」



聞きたいよ。



貴方の声で



言って。



アルトの姿が消えるまで、溢れる涙が視界を滲ませようともユリアは見つめた。


手を組んで祈る。



どうか。



どうかっ――――!!!




アルトの姿が消えた後も

一生懸命祈るユリアの隣に人影が入る。



「…ごめんなさい。」



謝られた言葉に驚き、横を向くとエミールが立っていた。



「…どうして謝られるのですか?」



ユリアの問いにもエミールはユリアを見ない。視線は常に遥か彼方のアルトが消えていった地平線を見つめている。



「……アルトを戦場へ駆り立ててしまって。」



エミールの言葉にユリアも地平線を見つめる。



「……それが、アルトの使命です…。行かなくていいなら…行ってほしくはないです。」



ぐっと。強く見つめる。



「彼が戦うなら、私も戦います。そして…帰りを…待ち続けます」



そしてエミールを見る。

すると彼女は初めてユリアを見た。




泣きそうな顔なのに、どこか意思を持った瞳。



「あなた、本当に可愛いわ」



まさか、そんな風に言うなんて思ってなかったわ。



驚いた顔をしたエミールはすぐに笑顔になってユリアを抱き締めた。




「……でも我慢はダメよ?寂しい時は寂しいと言いなさい?」



あやすように背中を叩くと、小さな声でユリアは答えた。



「はいっ……ありがとう…ございます!!」



甘える様に抱きついてきたユリアをエミールは優しく包み込む。



その光景をリーシャは部屋の中から見守っていた。


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