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640話 礼儀

「それで、いつ頃に会うんだ?」


「明日の昼前でいかがでございましょう? アスター騎士爵と共に、こちらへお迎えに上がるつもりです」


 明日か。

 急だな。

 いや、別に構わないんだけど。

 どうせ暇だし。

 ただ――気になる点はあるな。


「わざわざ来てもらうのも悪い。場所を教えてくれるなら、俺がそちらに出向こう」


「いえいえ、そんなことはありません。ぜひともエウロス卿をお迎えさせていただきたいのです」


「うーん……。まぁ、そこまで言うなら……」


 俺は渋々頷いた。

 相手の意図は読めないが、まぁいいだろう。


(さてさて、一体何が起こることやら……)


 そんなことを考えつつ、俺は使者の男性に別れを告げる。

 彼が部屋から退出して、十分な時間が経過してから言った。


「……ということになったんだが、何の用事だろうな?」


「おそらくは、近く予定されているウルゴ陛下との謁見に関することでしょう」


 そう答えたのは、椅子に座って本を読んでいたローズだ。

 彼女は本を閉じると、こちらに視線を向ける。


「このタイミングで騎士爵の使いがやってきたのですから、まず間違いありませんわ」


「そういうものか?」


「ええ。――しかし、気に入りませんわね……」


 ローズが珍しく不機嫌そうな表情を見せる。


「何か変なことがあったか? 丁寧な男だったと思うが。明日もわざわざ迎えに来てくれるらしいし」


「爵位の差を考えれば当然のことですわ。むしろ、騎士爵ごときが本人ではなく使いの者を寄越すことが生意気なのです。彼の礼儀もなっていませんでしたわ」


 き、厳しい……。

 アイゼンシュタイン子爵家の令嬢であるローズから見て、さっきの男の礼儀は不合格だったらしい。


「ま、まぁいいじゃないか。とりあえず、明日にアスター騎士爵本人と会って様子を見てみようぜ」


 俺はそうまとめる。

 そして、その後も部屋でゆっくりとくつろいで翌日に備えたのだった。

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