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597話 バイサー・ショック

 冒険者ギルドの一室にて襲撃されている。

 どうやらギルマスと盗賊たちは裏で繋がっていたようだ。

 Aランク冒険者であり男爵でもある俺なら、金目のものをたくさん持っているとの判断だろう。

 まんまと引っかかってしまったわけだ。


 俺の右手は、ギルマスと握手したまま固定されている。

 なかなかに握力が強く、さすがの俺でも一瞬で振り払うことは不可能だ。

 そのスキを突いて、盗賊の一人が剣を振り下ろしてくる。


「死ねやぁっ!!」


 なんとも短絡的な攻撃だった。

 俺は左手を軽く振るうだけで、その剣を弾き飛ばす。

 そのままの流れで肘打ちを放ち、相手の鳩尾を打った。


「ぐふっ!?」


 男が腹を押さえてうずくまる。

 まったく、片手しか使えない人間にいきなり暴力を振るうとは……どうしようもないクズだな。

 手加減しておいてやったが、少しは反省してほしいものである。


「なっ!? お、おい! 大丈夫か!?」


「だ、ダメだ……。伸びてやがる……」


 仲間の心配をする余裕があるとは驚きだが、もちろんそんなスキを逃すつもりはない。


「【エアバースト】」


「ぶべぇっ!?」


 風の塊をぶつけられた男は、壁に衝突し倒れた。

 よし、これで二人目撃破だ。

 残りは三人か。


「簡単なものだな。お前ら程度、左手一本あれば余裕で対処できるぞ。――むっ!?」


 不意に、右手に強い力が加わった。

 見れば、ギルマスが俺の右手を両手で握りしめているではないか。

 先ほどまでは、俺もギルマスも右手だけで握り合っていたのに。

 これはさすがに痛いな。

 このままでは骨が折れてしまいそうだ。


「……何のつもりだ?」


 俺はギルマスを睨みつける。


「ぬううぅっ! てめぇらっ! 俺がこいつの右手を押さえておく! そのスキに一斉に飛びかかってやれ!!」


 なるほど、そういう作戦だったのか。

 確かにこの状態ならば、普通の高ランク冒険者ぐらいが相手なら何とか倒せるだろう。

 とはいえ、あまり褒められた戦法ではないな。

 俺はそんじょそこらの高ランク冒険者よりもさらに強いのだから。

 もう少しスマートなやり方はなかったのだろうか?


「行くぞぉっ!」


「くらいやがれっ!!」


 盗賊たちが襲い掛かってくる。

 俺は再び風魔法で撃退しようとするが――


「させるかっ! 【バイサー・ショック】!!」


「むぅっ!?」


 俺の右手を握るギルマスの力がさらに増す。

 なんてパワーだ……!

 まるで万力で挟まれているような激痛が走る。


 これでは魔法を撃つことができない。

 痛みにより集中力が阻害され、詠唱が失敗してしまうからだ。

 こうなれば、対処法は一つ。


「腕力勝負も受けて立とうじゃないか……!」


 こうなったら、とことん付き合ってやるしかない。

 俺は右手に闘気を集中させる。

 そして、握手した状態のままであったギルマスの右手を強く握り返した。


「ぎぃやああああぁぁっっ!!??」


 ギルマスの口から悲鳴が上がる。

 だが、そんなことはお構いなしに全力で締め上げた。

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