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593話 仮の話

 俺は『悠久の風』のリーダーとして、ギルマスと面談している。

 新入りのチセやヒナタを含め、全員の最新ランクを聞き出した。


「ところで……参考までに聞きたいのだが」


「なんでしょう?」


「女騎士のナディアがいるだろう? 彼女が冒険者になったとして、ランクはどうなると思う?」


「……はい? 彼女は王都騎士です。冒険者になるとは思えませんが……」


「仮の話だ」


 俺の言葉を受け、ギルマスが考え込む。

 冒険者と騎士。

 どちらも戦闘能力が大切という意味では同じだ。

 しかしその他の方面で求められる能力は異なるため、簡単に比較できるようなものではない。


「……そうですねぇ。例えば、騎士としての部下を引き連れて冒険者パーティを結成したとしたら……Bランクぐらいでしょうか?」


「なるほどな。それぐらいになるか」


 Bランクは上級だ。

 Aランクである俺が言うのもなんだが、Bランクの時点で一流と言っても過言ではない。


「はい。ナディア殿は、ウルゴ陛下が重用している近衛騎士の一人です。その実力は十分であると同時に、部下の指揮能力もあると聞いていますから」


 冒険者としての個人ランクの算定には、指揮能力も考慮される。

 Aランクパーティ『悠久の風』のリーダーである俺は、個人ランクも高く評価を受けやすい。

 また、個人ランクがAである俺が率いる『悠久の風』は、パーティランクも高く評価を受けやすい。

 このあたりは相互に影響がある。

 卵が先か、鶏が先かみたいな話でもある。


「ならば、彼女がソロ冒険者としてデビューしたならばどうだ?」


「そうですなぁ……。個人としての実力はありますが、指揮能力を発揮する機会がなくなりますし……。冒険者としての注意事項にも疎く、ソロでは慣れるまで時間が掛かりそうです。Dランクでしばらく様子見をすることになるでしょうな」


「なるほど。堅実だな」


 騎士と冒険者では、必要な能力が異なる。

 特にソロ冒険者ともなれば、一人で様々な事態に対処する必要がある。

 いくら実力があろうとも、それだけで簡単に冒険者ランクは上がらないというわけだ。


「では、俺たち『悠久の風』に加入させたとすればどうだ?」


「ほう? それは興味深いですな。さすがはエウロス男爵。彼女を引き入れるおつもりですかな?」


「ああ、そうだ」


 俺の言葉に、ギルドマスターは少し驚いた様子だった。


「失礼ながら、彼女を王都騎士団から引き抜くことは容易ではありませんぞ? 特にここ最近はウルゴ陛下の近衛兵として取り立てられておりますし、待遇も良いはずです」

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