580話 案
「ボクは武器屋を見て回りたいのです!」
「へへっ。あたいは料理だな。食べ歩きしてぇぜ」
「……えっと。調合屋に行ってポーション類を仕入れたいですね。王都なら良いものを売っているでしょうし」
ミナ、リン、エメラダはそれぞれの専門分野に関連した興味を示している。
エルカも決して小さな町ではないが、さすがに王都とは比べるべくもない。
人が多く集まる王都であれば、武器・料理・ポーションなどの分野も高いレベルで発展していることだろう。
「何を仰っているのです。まずは貴族家への挨拶回りからでしょう」
「……ん。ティータは自然のある場所でゆっくりしたいかな……」
「まずは安全を確保しようぜ。路地裏に行って、王都に巣食う無法者の情報を集めるんだよ」
ローズ、ティータ、グレイスが自らの考えを口にする。
それぞれ、自分なりに考えているのは悪いことではない。
だが、こうも意見が多様だと、どの案を採用するべきか迷ってしまう。
「ナディア、どう思う?」
ここは女騎士のナディアに意見を聞いてみるべきだろう。
王都からエルカまで、俺たちを迎えに来たのは彼女だ。
到着後の段取りも把握しているだろう。
「まず、我がウルゴ陛下に報告をしてくる。『コウタ・エウロス男爵が王都に着いた』とな。まぁ、すでに先触れは向かっているはずだがな。正式な役目を与えられている我が報告する必要がある」
「なるほど」
俺は納得した。
そもそもの目的を忘れてはいけない。
俺がウルゴ陛下から男爵位を授かった際に、二つの司令を受けている。
一つは、エルカ樹海を超えた先にある西部地方の開拓。
もう一つは、エルカの町に巣食う闇ギルドを一掃することだ。
今回、『毒蛇団』を中心とした闇ギルドを潰したことで、その後者を達成したことになる。
それを直接報告するために、わざわざ王都までやって来たのだ。




