カッツバルゲル地方の誕生
空を飛び続けることおおよそ2時間半。小生たちは城の上空までやってきた。
城下町は既に病に蝕まれれおり、病院や教会の中に病人が収まりきらない状況になっている。
「こ、これは……酷いな」
「見て、お墓の辺りにも人が大勢いる」
コンドコソトレルは難しい顔をした。
「土葬か……これが病気を拡散する原因にならなければいいが……」
小生は城を見下ろすと、そこには姫とお付きの侍女が祈りを捧げていた。
金髪で美しい姫様だなぁ。きっと助けに来るユニコーンは白毛で、たてがみがツヤツヤで気品があって、優しくて、強くて、賢いお馬さんだと思ってるんだろうね。
残念ながら来たのは、黒毛で、ずる賢くて、悪戯好きで、友達は悪友ばっかりで、武器の横流しが大好きなザンネン天馬だよ。まあ王様の徳の無さを嘆いてね。
城へと降り立つと、姫は祈りを中断して立ち上がった。
「ゆ、ユニコーン様……本当にいらして下さるとは……」
「力になれるかはわからないよ。今回はかなり厄介な病気だからね」
「は、はい……こちらにお越しください」
国王はベッドに横たわり、苦しそうに呼吸をしていた。
そして注目すべきは指の辺りである。爪の辺りが黒く変色し、少しずつ病魔に蝕まれていることがわかる。
「ご覧の通りなんです」
うわ……だいぶ病に侵されているな。
薬の調合だけじゃなくて、ヒールもある程度かけてあげないと治らないぞこれ。
「とりあえず、薬を調合しようかな」
小生はそう言うと角を光らせながら商談を切り出した。
「病状に合わせてこの薬を作り出せるのは、このウーマシア西部では小生だけだよ。お代はとてもお高いものになるけど……それでも構わないかい?」
「金貨いかほどでしょうか?」
すぐに姫が聞いてきたので、小生は答えた。
「土地が欲しいな。タテガミ地方と、このツーノッパ地方、そして千年都市の間の土地」
話を聞いていた大臣は、少し視線を上げると頷いた。
「もしや、アレハポララン地域ですか?」
なるほど。人間たちはそう呼んでいるのか……。
「念のため、地図を見せて」
アレハポララン地域は、小生が思っていたよりも広いエリアだった。
これだけあれば、子孫末代までユニコーンの土地として栄えることができる。
「じゃあ、エリス姫……君が王様に代わって、この土地をカッツバルゲル地区と名を変えて欲しい」
彼女は頷いた。
「わかりました。国王に代わりエリス……この契約を結びたいと思います」
エリスは書類をしたためると、ナイフで指先を傷つけて印をつけた。
「小生の角にもお願い」
「はい」
彼女の指が小生の角の付け根に触れると、角が青色に輝く。
「確かに、契約を結んだよ。清潔な布はある?」
「今、お持ちします」
清潔な布を目の前に広げてもらうと、小生は窓を閉めさせてからユニコーンの秘薬を出した。
その数はおおよそ1万人分だ。末期症状でなければ、病状をかなり抑え込むことができるはずである。
「これだけあれば城下で苦しんでいる人々にも行きわたると思う。飲み方を教えるからちゃんと守ってね」
国王が起き上がれるようになったのは、小生が森に戻って2日後のことだった。




