騎士リチャード
「ここが今、小生たちが住んでいる村だよ」
シスターであるソフィアや、他の兵士たちは村の入り口を眺めていた。
見渡す限りの畑と飛び回るミツバチ。それに女性や子供たちが苗の手入れや洗濯などをしている。
「一角獣殿……どれくらい人が住んでいるのですか?」
質問をしてきたのは、馬に跨った騎士風の男性だった。
「112名だったかな。8割が女性か子供という村だよ」
「もしや、難民を受け入れたのですか?」
小生は少し考えた。
「避難民が集まっている村を見つけて、小生が勝手に住み着いた……というのが正しいかな」
「カッツ、お帰りなさーい」
グラディウスは、こちらに視線を向けると小生の周りにいた人々に驚いていた。
「この人たちは?」
「戦場から脱出してきた人たちだ。今はどこにも逃げ場がないから、せめてほとぼりが冷めるまでは、ここで待機してもらおうと思ってね」
ついでに、農作業を手伝ったり空堀を作る作業もしてくれると嬉しいな。と思っていたら、以心伝心というものだろうか。グラディウスも頷いた。
「それはいい考えだねー!」
「あの、ユニコーン様」
声をかけてきたのは、馬に跨っていた騎士風の男性だった。
彼は何と下馬して、小生の前で跪いている。
「我々は、士官先を求めて戦場に参りました。しかし、この状況下では新たに騎士を雇うような貴族は現れないでしょう」
その眼力のある目が、小生を映した。
「もし、お許しいただけるのでしたら……このリチャードと従者たちを仕官させては頂けませんか?」
その申し出は有り難いけど、小生は内心では困っていた。
一応はユニコーンだけど、彼らを養えるような領地も財産もないんだよな。どうしよう……。
そう思っていたら、隣にいたグラディウスが言った。
「報酬になりそうなものは、ハチミツや野菜くらいしかありませんがー……?」
「は、ハチミツ……?」
騎士リチャードは、どうしてハチミツが出てくるんだと言いそうな顔をしていた。
小生は頷いて答えた。
「実は、小生がここに住み着いたのは、養蜂をしたいからなんだ。だから、小生に仕えるとお給料はハチミツということになるよ? それでいい??」
リチャードは唸った。
「この土地で養蜂を行う技術をお持ちなのですか……恐れ入りました! 是非、仕えさせてください!!」
騎士が言うと、従者の人々も一斉にお辞儀をした。




