それはとても甘い手紙でした
「シア……手紙が来た」
ある日のこと。お屋敷の中で紅茶を嗜んでいるとアデリス様が悲しい顔をしながらこちらにやって来た。
その手には一枚の手紙。手紙の内容はまだ開封されていないみたいだった。
それなのにアデリス様が悲しい顔をするということは手紙の内容が問題なのではなく手紙の差出人が問題だということだ。
私はそっとアデリス様から手紙を頂くと差出人を確認する。
差出人の名前にはアルティスの名前が書かれていた。
「アルティスから……どうして」
「私は何となく理由は分かっている。恐らくは私の支援の為にシアに復縁を迫るつもりだろう」
アデリス様がアルティスに資金援助をしていたのは私がアルティスの婚約者だったから。
それが無くなった今アルティスは自分の力で領地運営をせねばならない状況になっている。
アルティスはその状況に困って私に復縁を申し込んできた可能性はあった。
でももしそうじゃなかったら。仮にその復縁を迫ってきたのがお金の為じゃなくて本当に私のことを好きになってくれたのだとしたら私はちゃんと彼を拒否出来るのだろうか。
どちらにせよ。それは手紙を読めば分かることだ。
私はアルティスの手紙を読む。手紙には甘い言葉が沢山綴られていた。
どれだけ私を愛しているのかどれだけ私に恋をしているのかそんな沢山の甘い気持ちが手紙を通して私に伝わってくる。
だからこそ私はーー悲しくなった。だってその手紙は……。
「シア。悪いが私は君をアルティスの元に行かせるつもりはない。彼は君のことを愛していない私の支援が目当てで君を連れ去ろうとしているだけだ」
「……そうですね。きっとアデリス様の言っていることは正しいのかもしれません」
「……それなら」
「でもだとしても私はアルティスに会う必要があると思ってます。その……あの時は結局逃げて私はちゃんとアルティスとお話することが出来なかったから、告白を受けるか受けないかは置いておいてもちゃんと話し合う必要はあると思うんです」
それが今の私の本心。私がまだアルティスに未練があるのかどうか。
そしてアルティスは本当に私のことを愛しているのかどうか。
それらは手紙を読んだだけでは分からないのだ。
しっかりと相手の顔を見なければしっかりと相手の声を聞かなければ相手の気持ちなんて受けとれやしない。
「言いたいことは分かる。シアはちゃんとアルティスとも向き合いたいんだな。でもそれを知った上で私は反対だ。私はアルティスの気持ちなんてどうでもいい大切なのはシアだけなんだ。シアが彼に会えばきっと君は傷つくだろ辛い思いをするだろ悲しい思いをするじゃないか」
そんなことは分かっている。きっと私は傷つくのだと思う。
今から辛い思いをするのだと思う。苦しい思いをするのだと思う。
きっとここで手紙の約束など守らなければ私は傷つかずには済むのだと思う。
でも私は傷付こうと思う。苦しもうと思う。そうしないと私はいつまでたっても今日のこの日を後悔することになると思うから。
アルティスとしっかりと話し合わないと私はあの頃の悲しい思い出を引きずったままでそして今日の日も引きずることになると思う。
だからアデリス様の忠告を聞いても私は彼と会うことにした。
「ごめんなさい。私はそれでも彼と会って話したいと思ってます。ちゃんと話さないと私はずっと向き合うことが出来ない気がするんですアルティスにもアデリス様にも」
「……分かった。だが私も付いていく流石に君一人では何が起きるか分からないからね」
「はい。元からアデリス様に付いてきて貰うつもりでした」
私はアデリス様に感謝すると一緒にアルティスの所へと向かうことにした。




