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ずっと好きだった人に婚約破棄されました

「シア・グランデ! お前に婚約破棄を言い渡す!」


「……え?」


社交界のパーティー会場。そこで金髪青目の青年アルティス伯爵に婚約破棄を言い渡される。

きらびやかな会場内。そこで大勢の来客の視線が私ーーシア・グランデとアルティス・アルトワに集まる。


「あの……婚約破棄ってどういうこと?」


「頭の悪い奴め。そのままの意味さ。俺、アルティス・アルトワはお前との婚約を解消すると言っているんだよ」


アルティスの言葉に頭が真っ白になる。この婚約自体は私の両親とアルティスの両親が互いの家の発展のために決めたことだ。

でも私は同時にアルティスのことが好きだった。


そしてそれはアルティスも同じだと思っていた。

だけども彼は今まで私に見せたことのないような楽しげな笑顔で私との婚約を破棄すると宣言している。


「ま、待ってよ……私……何か悪いことしたのかなアルティスに嫌われることした?」


「嫌われることはしていない。だがお前は見た目が地味なのだ。その黒い髪もその凡庸な顔も俺には相応しくない」


「……っ!」


私の髪は黒色のショートヘアーで水色の瞳。顔だって令嬢というには地味で派手な見た目ではない。

それは私も昔から気にしていたことだった。周りの人からも可愛いとは言われたことがあっても綺麗とは言われたことはなかった。


そして貴族にとって大事なのは可愛らしさではなく上品さ綺麗さなのだ。

私の見た目は令嬢としてあまり評価の高いものではなかった。


「実はな。既に新しい恋人が出来たんだ。ソイツはお前よりも綺麗で可愛らしくて何より華がある! ソイツは平民ではあるが見た目でいえばお前よりもよっぽど貴族らしい」


そう言ってアルティスは手を叩くと使用人が一人の少女を彼の前に連れていく。

金色の髪だった。綺麗な髪だった。顔は美人でツインテールがよく似合う少女だった。

私とは違う華やかな女性。私の水色のドレスとは違う彼女によく似合う純白のドレスを着てそっとアルティスの方へと向かう。


「アシュリー、さあおいで」


そう言ってアルティスはアシュリーと呼ばれた女性の手を引っ張り自分の元へと抱き寄せた。


「そう言えばシア……どうして俺がお前と一度もキスをしなかったか分かるか?」


「それは貴族としてキスは結婚の時にしようって話だったよね?」


私は何度もアルティスとデートをしている。彼はいつも素っ気なくてキスどころか手すら繋いだことすらなかった。

でもそれは彼が優しい人で私を大切にしてくれているのだと思っていた。


「そんなわけないだろ? 俺がお前にキスも手すら繋がなかったのはな……お前みたいな地味女と恋人だって思われるのが恥ずかしかったからだよ」


「私……ずっとアルティスのこと好きだった。手を繋いでくれないのもキスをしてくれないのも大事にしてくれてるんだって……ちがうの?」


「ああ! 違うとも! だからお前の前でこんなことも出来るのさ」


「や、やめて……」


アルティスは私の目の前でアシュリーを優しく抱き締めるとそっとキスをした。

その光景を見てようやく私は彼に愛されていなかったのだと、彼と過ごした恋人としての時間は嘘だったのだと理解した。


ここは社交界のパーティー会場。泣くなんてダメなはずなのに。

ポロポロと目からは涙が溢れ、大勢の来客とアルティスはそれを見て大笑いをしていた。


「おいおい泣くなよ。涙で床が汚れる」


私は必死で涙を拭うけど涙は次々と溢れて止まることはない。

そんな私にさすがにアルティスは鬱陶しく思ったのか溜め息を吐いた。


「お前は地味なだけじゃなくて暗いな。もう俺とお前は婚約者ではないんだ。さっさとこのパーティー会場から出ていってくれ」


彼の言葉に私は静かに俯くとこのパーティー会場から逃げるように飛び出した。

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