勘違いするなよ
『ダンジョンに侵入者が現れました』
千里眼監視カメラはいまいち役に立ってないなと思ってしまう
ずっとカメラを見てる訳じゃないからな~
特に作業してる時は目を離しがちだ
カメラ監視用のモンスターを召喚するのもありかもしれないね
カメラを見るとゴリ達が帰って来た様だ
早速コアルームへ転移してくる
「・・・ただいま」
「今帰りました!」
「ああ、ずいぶん速かったけどもう用は済んだのか?」
まさかその日の内に戻って来るとは思わなかった。何か問題でもあったのか?
その問いに対し、何故かゴリはキョドったが、すぐに平静を取り戻し答えを返してきた
「ああ、また少ししたら迎えに行かないといけないが、要件は伝えて来た」
「そうか?どうせなら一緒に来ればよかったのに」
「あ、ああ!あいつらも準備があるだろうしな!急かすのも悪いだろう?」
「くすっ」
と、ここでユズが我慢できないといった感じで吹き出す
ゴリはその様子を見て何故か慌てている。どした?
「もう、素直じゃないですね!ゴリさんは!正直に心配だから戻って来たって言えばいいのに!」
「ちょっ!何を言ってるのかな~?この子は~!心配とかしてないし~!家が恋しくなっただけだし~!」
「いたっ!痛たた!照れ隠しに攻撃してこないでください!痛いですってば!」
そしてゴリとユズの追いかけっこが始まる。ホント仲いいなこいつら
でも今ので分かった。ハイエナ連中と戦ってるのを知って戻って来てくれたのか
「か、勘違いするなよ!俺はお前が心配だったんじゃあ無い!家が心配で戻って来たんだからな!本当だぞ!」
「・・・ツンデレ」
「ゴリのツンデレとか誰得だ?」
「ツンデレですね・・・ぶふっ!あははははは!」
またもユズが我慢できずに吹き出す。楽しそうで何よりだ
「ユズーーーーー!!」
「な、なんで私だけ叩くんですか!2人も言ってるのに~!」
やがて2人はドタバタと関節をかけあって遊び始めた。
だが、その音から凄まじい力だという事が伝わって来る
ゴリとあれだけやり合えるんだからやっぱユズもつえーんだな・・・
その様子を観戦しながらオッサとクロは丸太椅子へ腰掛けお茶をすする
いつもの光景なのだろう
「・・・しかし驚いたぞ。出て行く前と比べると見違える程に成長している」
「そうだな。まだ戦ってるか、下手すればもうやられた後かと思って来たが まさか返り討ちにするとはな!大したものだ!がっはっは!」
2人はそう言って労ってくれる
これ程の強者が俺たちの事を大事に思ってくれている
素直にうれしく思う
「私も心配したんですよ!でも、ゴリさんが一番心配してました!クロ!戻るぞ!あいつらが危ない!ええい、早くしろ!くっ、もういい!俺一人でも戻るぞ!って痛たた!ギブギブ!」
「ユズーー!まだ言うか~!違うぞ!俺は心配なんかしてないからな!」
「・・・ゴリは焦り過ぎだ。ダンジョン内へは直接転移出来ないから仕方が無いだろう」
「だーー!やめろお前ら~!」
ゴリはなんか恥ずかしがってるが、ゴリのデレでも俺は嬉しいぞ?
決してホモでは無いが
それより、さらっと気になる事言ったな?
ダンジョンの中へは直接テレポート出来ないのか?
その心の中の問いにはオッサが答えてくれる
「ああ、ダンジョン内は外とは別空間と言えば分かりやすいか?入り口の外側から内部へ干渉する事は不可能となっている」
「・・・だからここへ戻る時は国が設置した最寄りのマーキングポイントへ飛んでから徒歩で戻っている
私なら空間へのマーキングも出来るが、記録できる数には限りがあるからな。その程度の不便は受け入れてほしい」
「だ、誰も文句言ってないだろうが!」
「・・・言ってた」
クロは若干プクっと膨れている。なにこれ、可愛い。俺はロリコンでは無い
国が設置したマーキングポイントというのは、例の杭とは違い永続的に使用できるマーキングだ
巨大なマジックアイテムであり、値も張るので個人で所有するのは難しい代物である
杭と同じく付属品の指輪(使い捨て)を嵌めれば転移魔法の使えない者でも移動が可能だが例によってお高いらしい
そこで一般の人が利用するのがテレポタクシーである
タクシーの様にマーキングポイントへの転移による移動を商いにして生計を立てている者の事だ
こちらは指輪を買うのと比べるとリーズナブルなお値段の様だ
それにしても、物流に関しては滅茶苦茶発達してるんじゃないか?この世界
転移を使える奴がどれだけ居るのかにもよるが
「・・・殆どの者は数キロ程度しか飛べないし、1日1~2回程度しか使えないからそうでもないぞ
使える者も少ないしな」
「普通は転移タクシーはマーキングポイントで待機してるから、次のマーキングへ飛ぶ為に利用するといった使い方が一般的だな」
「ちなみにテレポタクシーは国家公務員だから待機してるだけで客が1人も来なくても給料は出る。基本給+歩合制だ」
転移魔法を習得している者はそれなりの強さを持つ者が多いので転移の仕事をこなした後のリキャストタイム中は転移先のマーキングポイントに留まりその場の警備をする役目もあるそうだ
しかし国の管理下にあり、多くの人が行き交うマーキングポイント付近で揉め事を起こす者は少ないらしく
警備とは名ばかりの暇を潰す時間になっているらしい
まあ待機時間も仕事の内ってやつか?
一見楽そうに思えるが、ただ待機するだけの時間って結構苦痛なんだよな
程々に仕事があった方が楽に感じるってのは矛盾した考えの様に思うが俺はそう思う
前世では夜の街なんかへ行くと過剰な程タクシーは見かける事が出来た
逆に言えば供給過多な職業であった
故に基本給などは限界ギリギリまで下げられ、客が取れず転職する者も多かったが
この世界では転移魔法の習得難易度の高さからか、常に人員は不足しており給料は安定している
いわゆる、高給取りと呼ばれる職業の様だ
「クロは一日何回くらい使えるんだ?転移魔法」
軽い興味で聞いてみた
ちなみに俺は1回だ、いや、22時間に1回だ。しかもダンジョン内限定
ダンジョン内なら距離制限は無いが、もう少し何とかならんもんかねと思う
「・・・3000回くらい?いや、クロックアップすればもっといけるか?」
「ぶふっ!」
思わず飲んでいたお茶を吹き出してしまう!
え?なに?リキャストタイムとか無いの?単純に何回使えるかの世界なの?
「・・・距離は、試した事は無いが多分宇宙の果てでも行ける」
「・・・」
分かった。この子、バグキャラだ・・・
色々とぶっ飛び過ぎてる
そう言えばノエルもクロに関しては「間違いなく世界最強」の魔法使いって言ってたな・・・
ゴリやオッサには「私の知る限りでは」に対してだ
同じ「超人」でもクロの方が格上な感じなのか?
「・・・バグキャラとは失礼。失礼だぞ、マスター!」
「いたた、ごめんごめん!」
クロはそう言って手の平でバシバシ叩いてくる
痛いけど腹パン来ないだけノエルよりは優しいな
「・・・ちゃんとコツもある。ここに力を入れて、ここをニッと入れて、ここをぐーんとしてシュバっって感じだ。やってみろ」
「いや、分からんから。なにその説明?」
「クロさんは感覚派だから説明は分かりにくいですよね!私もたまに教えてもらうんですけど殆ど理解でき・・・、い、いえ何でも無いです!」
ユズは殺気を感じたのか弁解を始めたが、もう遅い、遅すぎる
クロは怯えるユズの元へスタスタと歩いて近付き、ユズのほっぺたをぎゅっと握って口を開く
「・・・ユズはいつからそんな悪い子になったんだ?ゴリの影響か?悪い事言う口はこの口か?えい!」
「いたたた!クロさん、痛いです!つねるのやめてください~!みんなも笑ってないで止めてくださいよ!ホント痛いんですってば!」
今度はゴリが椅子に座り、ユズとクロがやり合うその様子をオッサと共に観戦する。実に楽しそうだ
俺も正直、楽しい
ハイエナとの戦いで暗い気持ちになっていた心が癒されていくのを感じる
やはりこの空気は悪くない、こいつらにはいつまでもこのダンジョンに居てほしいものだ
『スキル:ダンジョン内転移のレベルが2から3に上がりました。転移可能人数が5人になりました。リキャストタイムが20時間になりました』
もしかしてあのアドバイスで上がったのか?うれしいけど納得いかね~!




