第23話 思いがけず独占欲
◇◇◇
「はぁ!? ルームメートぉ!?」
その反応を見るのは二回目だなぁとのんきに考えながら、アキトはガラクタの入った段ボール箱をさらに積み重ねた。
トレーニングルーム横の物置と化した部屋から運び出された荷物の山は、着々と別の空き部屋を物置として占拠している。
「昨日あいつなんにも言ってなかったぞ?」
「そりゃ言いにくいでしょ」
続けざまに部屋に入ってきてそう言うキョウヤに、アキトは小さく肩をすくませてみせた。
少々遅い朝食の席でハルから聞いたのは、どういうわけか新人の男と相部屋することになったということ。
ハルの話では昨夜はキョウヤの部屋に泊まったらしいが、さすがに彼女も突然のことに動転していたのだろう。キョウヤには打ち明けられなかったようである。
キョウヤの反応を見れば、眉間にしわを寄せた彼はあきらかに不機嫌そうな表情を浮かべていた。
「ったく、なんだってそんなことになってんだよ」
「所長の独断」
このやりとりも二回目だなと苦笑しながら、アキトは重そうな段ボール箱を床に置くキョウヤを見遣った。
その場にしゃがみこんだままのキョウヤは、参ったと言わんばかりに前髪を掻き上げてうなだれている。
「で、キョウヤはどうすんの?」
「どうって?」
「このままハルを、男とルームシェアさせていいのかってこと」
「……いいわけねーだろ……」
アキトの問いに、キョウヤはますます声を低くして答えた。
「そこで! ホノカからキョウヤに提案があるんだけど?」
アキトは満面の笑みで両手を打ち合わせた。小気味よい音がせまい室内に響く。
キョウヤはしゃがんだまま、何事かと彼の顔を見上げた。
「新しい部屋ができるまで、ハルとルームシェアしない?」
だがアキトの提案もむなしく、キョウヤは彼を見上げたまま無言で唇を引き結んでいた。
一瞬泳いだ視線がはずされると、キョウヤは頭を垂れて再びうなだれる。
「おや? 即答するかと思ったのに」
「…………理性が、もちそうにない……」
「そこはいままでみたくがんばりなよ、男だろ」
「おまっ、俺がどんだけっ……! っはぁ~……」
深々とため息を吐くキョウヤに、アキトは腕を組みながらやれやれと苦笑する。
(さっさと告白しちゃえば楽なのにねぇ)
そうすることができない彼の気持ちを察しながら、アキトは遠い目をして天を仰いだ。
(両片想いって言うんだっけ? こういうの)
当人たちは、互いに相手の気持ちに気づいていないのだろう。まさか自分に、とは思っていなさそうである。
視線を落としたアキトの横で、キョウヤはがしがしと頭を掻きながらうなっている。
どうやら内心、ずいぶんと葛藤しているらしい。
好きな女とほかの男とのルームシェアは寛容できない。かといって自分と、となると、それはそれで男としてはある意味で拷問である。
「俺、ハルにだけは嫌われたくねーんだけど……」
「じゃあ、がんばるしかないね」
アキトの言葉に、キョウヤは深々と息を吐き出した。
ハルと相部屋になったという男は、おそらく彼女と過去になにかしらの関係があったのだろう。
入隊希望者の受け入れ時に顔を会わせた二人の様子を見るに面識があるのはあきらかで、かといって再会をよろこぶことができないということは、それなりの理由があってのことだ。
(元カレ、とかなんだろーなとは思うけど……)
だからといって、二人がルームシェアをするというのは到底受け入れられない。
ハル自身が嫌がっているならなおのこと。
「どうする? ハル取られても知らないよ?」
「縁起でもねぇこと言うんじゃねーよ」
アキトの笑えない冗談に、キョウヤは乾いた笑いをこぼした。
(どーのこーの言ってる場合じゃねーか)
なによりハルのためである。ほかの男と相部屋されるくらいなら、理性を総動員して耐えることなど安いものだ。
「……っし、任せろ」
「そうこなくっちゃね」
膝頭を叩いて立ち上がったキョウヤの表情に満足げに微笑んで、アキトは端末からホノカの番号を呼び出した。




