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【アレンジ版】夜の帳を護りし者達  作者: 苺姫 木苺


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謎の組織八咫烏


「え?……なに、これ」


リビングの床一面に大量の血痕があり、リビングは鉄臭さが充満している。鉄臭さの臭いが強すぎて鼻を袖で押さえた。

床には何かを引きずったような血の跡も残されている。

目の前のこの非現実過ぎる光景にボーっとして頭が追いつかない。自分の部屋に戻る前、母と父と団欒していた場所。

ついさっきまで夜ご飯を何にするか話していた。目の前の状況に追いつけず臭いのせいもあってか「うっ」と胃の中から逆流しそうになる。

この血の跡はまさか母さんと父さんの血じゃないよな、と嫌な考えをしてしまう。だって見る限りこの血の量は人が死んでいてもおかしくない……。そんなことない母と父はちゃんと無事なはずだ。

「違う!きっとこれは血じゃない!!」

鉄臭さの中に母さんが作っていただろう味噌汁の匂いもした。でも、鉄臭さのせいでリビングの臭いは最悪だ。

一瞬ボーっとしてしまいすぐハッと我に返り「か、母さん!父さん!どこにいるの?!」と外に響き渡るくらいの声量で二人を呼ぶ。

僕はテンパりながらも母と父を呼ぶが、返事は無くシーンとしている。そこで僕は廊下へ向かって引きずられている跡のことをハッと思い出す。

「まさか、夜に外出た、わけじゃない、よね。だって外は夜喰が……もしかして、連れ去られ、いやそんなことはない。だって母さんと父さんは普通の人なんだし」

僕は着の身着のまま、靴も履き忘れ夜の外に飛び出る。ニュースで夜喰に触られると死ぬと報じられていたから自分が死ぬかもしれないとわかっていても。だって母と父はこんな僕を優しく愛してくれているんだから。


外に出ると地面には点々と血痕が残されている。早く見つけないと母と父が夜喰に殺されてしまうかもしれない。心の中で夜喰と出会いませんように、と強く願いながら人気のない道を走る。そんなに暑くないのに汗が出て来た。

「母さん、父さん」

僕は見たこともない夜喰にビクビクと怯えながら血痕の後を追っていく。

暫く血痕を追っていくと、近所の公園でパタリと跡がなくなっていた。ふと全身に寒気がし地面から目線を上げると、僕の目の前には真っ黒の姿をしていて目が血の色のような化け物が立っている。

その化け物は僕と目が合うと、ニタァと気色悪く笑った。直感でこいつはやばい!と僕は思い後ろに後ずさろうとする。

「え?あ、足が……何で?!」

目の前の化け物から逃げようとしているのに、僕の足が動かない……いや、腕も動かすことができない。死ぬかもしれないと直感し身体がガタガタと震える。

「何で足動かないんだよ!!」

夜喰は「ウゴオォォ」と変な鳴き声と共に僕に近づいてくる。気のせいかこの場の気温が急激に下がったように感じた。

「はっはっ……だ、だれか……と、うさん……かあ、さん」

無情にも僕の助けは誰にも届かず、夜喰は僕に腕のようなものを伸ばし僕の首をギュッと握り締めてくる。首を絞められ持ち上げられているせいで、首に僕の全体重が掛かる。

「はっ……し、……に……たくっ……な」

何とかしようと足をバタつかせたり、腕を掴もうとするがスルッとすり抜けてしまう。

脳に酸素がいかなくてどんどん苦しくなり意識が薄れていく……母さんと父さんを探さないといけないのに。死にたくない!こんなところで一人寂しく死ぬのなんて……嫌だ。なのに、こんな最後なんて……。僕はもう両親と会うことが出来ないと思い目からポロポロと涙が出てくる。母さんと父さんが僕の名前を優しく呼んでくれた、なんて事ない思い出がよみがえった。僕の目は宝石みたいに綺麗だとよく二人は褒めてくれた。

「だ、れ……か」

もう駄目かと諦めた瞬間、月明かりに照らされキラッと輝いた漆黒の刀がズバッと夜喰を横に切り裂いた。横半分に切られた夜喰はサラサラと塵のように消えていく。

夜喰が倒され、夜喰の手から解放された僕はドサっと地面に落ちた。周りに集まって来ていた夜喰もズバズバと斬られ消えていく。不審者のような恰好をしているのに、化け物を倒しながらマントがバサバサと揺れ剣舞をしているように見え綺麗で力強くかっこよくて見とれてしまう。

「ゲホッゲホッ!!」

戦いに見とれていたら、「少年!大丈夫か?」と頭上から男の人が聞こえた。

僕は何が起こっているのか答えを求めるように再び上を向くと、漆黒の刀を右手で持ち黒い袴に黒い帽子、黒い布で顔を覆っているいかにも不審者が僕を心配している。そこまで街灯が明るいわけではないのに、僕を助けてくれた人は月明かりのせいか後光が見えた気がした。

「ゲホッゲホッ!!は、い」

「その目」と僕を助けてくれた人はポツリと呟き僕はあることに気付く。外に出るときに必ずしていた眼帯を付け忘れたことに。僕は慌てて右目をバッと手で隠す。クラスメイトや近所の人達は僕の右目を気味悪がる。ただ、色が違うだけなのに……。

「オレンジ色の瞳綺麗だな。左右で色が違うのも神秘的だし」

初めて両親以外から目の色のことを褒められ僕はポカンとした。なんとなく目の前のこの人は本心で言っていると分かる。でも、この人が母さんと父さんをどこかに連れ去った犯人かもと警戒をする。

「ゲホッ、あ、りがとうございます」

「まあ、そんなことよりも」と言い僕を助けてくれた人は僕の上着をガバッと捲り上げてきた。身体の下のあれを見られるわけにはいかないとドンッと目の前の人を突き飛ばす。

「あ、あの!「あー!!咲間隊長が少年を襲ってるー!!」」

僕が声を掛けようとしたら、助けてくれた人と同じ格好の女性の大きな声が静寂を割った。

「アホ言うな!襲ってねぇよ!!夜喰に襲われていたから、炭化の確認をしようとしただけだわ!」

「あ、そうなんですねー」と女性は棒読みで僕を助けてくれた人に返事をした。

「なあ、君。夜喰に触られたよな?」

「あ、はい。多分」

先ほどのことを思い出してしまい、心臓がドクドクと早く鼓動するのを感じる。僕を助けてくれた人は僕の異変に気付いてか何か呟き頭を撫でてくれた。そのおかげか恐怖心が無くなり、不思議と僕は落ち着いた。いつもなら触られると身構えてしまうのに。でも逆にそれが怖い。

「嫌な事思い出させてごめんな。でも、君の為に聞かなければならないことがあってな」

「……はい」

「体が熱くなっていたりしないか?どこも痛くないか?」と僕を助けてくれた人が矢継ぎ早に聞いてくる。何でそんなことを聞いてくるのだろうか?どこも怪我なんかしていないのに。こんなにも心配をされたのはいつぶりだろう……。

「熱くもなっていないし、痛くもないです」と、質問の意図が分からず僕は首を傾げながら答えた。

「本当に言っているのか?!」

「え?その子灰化症になってないんですか?!夜喰に触られたのに?!」

僕を助けてくれた人は大声を出し驚いたかと思ったら、急に立ち上がり女性と僕から少し離れた所で話し始める。これから僕はどうなるのだろう……。

助けて貰ったが、もしかしたらこの人達が急に襲って来るかもしれないと注意深く観察する。

声が大きくないから何を話しているか分からないが、二人の顔がチラチラと向くのできっと僕のことを話しているんだろう。

静寂のせいかどんどんいやな思考回路になってしまう。

でもこんな所でのんびりしているよりも母と父を探しに行きたい。

「はい。あの、僕両親を探さないといけないのでもう行きますね」

立ち上がりズボンに付いた土を手でパンパンとはたきおとす。この怪しい人達から一刻も離れ両親を探さないと。

「何で両親を探すんだ?」

「えっと……床に大量の血の跡があって、それで……えっと、家中を探したんですけど、両親がいなくて」と僕はしどろもどろになりながらも言う。

「……俺も一緒に探す」

「え!咲間隊長?!任務どうするんですか!」

「この少年を一人にするわけにもいかないだろ」

僕は咲間隊長と呼ばれている人に「僕一人で大丈夫です」と言った。でも、「夜喰はまだ出没する時間だから一人にするわけにもいかない」と押し切られ断られなかった。

「……また宗主に怒られれても知りませんからね!」

女性は物凄い跳躍をして暗闇に紛れ見えなくなった。あの跳躍力は男性でも出せないから本当に同じに人間なのか?

「一旦お前の家に行って、何か残されていないか確認に行こう」

「え?でも……両親は家にいませんでしたよ」

両親は家にいないのは探して確認をしたから分かるのに何で一旦家に戻る必要があるのか分からない。

今こうしている間にも命の危険があるかもしれないのに。

「あの血の跡を追ってここまで来たんだろ?」

「はい」

周りをキョロキョロとし咲間隊長と呼ばれた人は「ここで途切れて後を追えないから、一旦家に何かないか探すんだ」と言ってきた。僕は確かにこの人の言う通りだと思い「分かりました」と答える。

「家はこの近くか?」

「あ、はい。十分ほど歩いた所です」

僕は咲間隊長と呼ばれる人と自宅に向かって歩く。早く両親を見つけたいからいつもより歩くのが早い。

「お前、名前は?俺は咲間未来、八咫烏の隊員だ」

「会田雪斗で、す?え、八咫烏の隊員!?」

まさか自分を助けてくれたのが八咫烏の隊員だとは思わず驚いた。八咫烏のことはなんとなく知っていたが、まさかこんな凄い人達が存在していたとは。

「そんな驚くことか?」

「八咫烏って国が管理してる、謎の組織じゃないですか。まさか咲間さんが隊員なんて驚きますよ」

八咫烏の隊員と分かり警戒しなくて多分大丈夫だと安心をする。

十分ほど歩くと僕の家が見えてきた。

「あの白い目立つ洋館が雪斗の家か?」

咲間さんが話しかけてきたが、僕は駆け足で家の中に入る。咲間さんがいることも忘れ大声で「母さん!父さん!」と呼ぶ。やっぱり二人は帰ってきていることは無く、二人の返事は無く家はシーンとしていた。

リビングに向かうと驚きの光景が僕の目に入る。

「え?血の跡が、ない」

「雪斗、本当に血痕がここにあったのか?」と後ろから咲間さんが話しかけてきた。床には埃一つ落ちていないほど綺麗で血の赤色はどこにもない。違和感がここには感じられないからこそ不安になる。

「はい。一面に血と何かを引きづった血の跡がありました。何で……」

咲間さんはリビングを何かを探すように歩き回ってジッと見ている。リビングは何か起こったように見えないで普通のリビングに見えるだけ。

「……家の鍵はしてたか?」

「いえ……慌ててたので、してなかったと思います」

何かを考えていた咲間さんは一枚の紙をピラッと僕に見してくる。「この印に見覚えあるか?」と死神みたいなのに大蛇が巻き付かれている絵が描かれていた。どす黒い炭のような物で描かれていて普通の絵ではないのが分かる。

「無いです」

「これは獄堕の園(ごくだのその)の印だ」

「あの、その獄堕の園(ごくだのその)が何か関係があるんですか?」

獄堕の園(ごくだのその)という言葉を聞いたことがなく僕は名前からしてやばそうだ。

「これがそこにあった……。恐らく、雪斗の両親は獄堕の園(ごくだのその)に攫われた可能性が高い」

「え……両親が攫われた。何で……」

僕は両親が攫われたと聞き両親が攫われる理由が思いつかない。両親は普通の人なのに……。

「分からない。獄堕の園(ごくだのその)が誰かを攫うなんて今まで無かったんだが」

「何で僕の両親が!!二人は普通の人ですよ!!」

「ただ言えるのは……」



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