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今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
354/394

速すぎる町

動き始めた町を離れて一日。


三人は、

騒がしい街道に出た。


人が多い。


馬車が走る。


声が飛び交う。


そして――

すべてが速い。


ミナが

顔をしかめる。


「……忙しすぎや」



◆止まらない町


町に入ると、

さらに加速する。


店は常に動いている。


注文が飛ぶ。

皿が運ばれる。

すぐ次。


食事も

立ったまま。


噛まずに飲む。


誰も

座らない。



◆料理も速い


鍋は

強火。


すぐ煮る。

すぐ出す。


味はある。


だが

雑。


ルナが

目を回す。


「……速い……」



◆疲れの蓄積


人々は

元気に見える。


だが

目が疲れている。


呼吸が浅い。


ミナが

低く言う。


「……回っとるけど

 持たんで」



◆遅い料理


アリアは

市場の端に

鍋を置く。


火は

弱め。


具を入れる。


すぐには煮えない。



◆待たせる


匂いは

ゆっくり広がる。


通り過ぎる人は

最初は無視する。


速い町では

遅いものは

目に入らない。



◆座る場所


ミナが

地面に布を敷く。


椅子は使わない。


ただ

座れる場所。


ルナが

皿を並べる。


まだ

料理はできていない。



◆最初の違和感


一人の男が

立ち止まる。


何もない場所。


座るだけ。


少し迷い、

腰を下ろす。


その瞬間。


周りの流れから

外れる。



◆時間の切り離し


鍋が

ようやく煮える。


ミナが

ゆっくり盛る。


急がない。


男が

一口食べる。


そして――

止まる。


噛む。


飲み込む。


呼吸が

深くなる。



◆広がる遅さ


次の人。


また一人。


座る者が増える。


町の流れから

少し外れた場所。


そこだけ

時間が遅い。



◆料理の役割


アリアが

静かに言う。


「……速さは

 便利です」


「……ですが

 速さだけでは

 続きません」



◆二つの流れ


町は

相変わらず速い。


だが

この場所だけ

遅い。


どちらも存在する。


ミナが

笑う。


「……これでええ」



◆呼吸の戻り


ルナが

小さく言う。


「……ゆっくり……

 息できる……」


周囲の人も

同じだった。



◆町の変化


夜。


町は

まだ速い。


だが

あちこちに

座る場所が増える。


短い休み。


小さな遅さ。



◆まかない部の理解


ミナが

鍋を片付ける。


「……速さも

 必要や」


「でもな、

 止まれる場所がいる」


アリアが

うなずく。


「……整えるとは

 速度を一つにしないことです」



◆次へ


三人は

町を離れる。


背後には

速い流れと

遅い場所。


両方がある。


だが次は――

速さも遅さもない。


すべてが均一な世界。


揺らぎすら存在しない場所へ。


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