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今日も魔王城は飯がうまい  作者: 昼の月
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余波の行き先

公開観測から一夜明けた魔王城は、

奇妙な静けさに包まれていた。


騒ぎが収まったからではない。

むしろ逆だ。


城内を行き交う文官や伝令の足取りは速く、

声は低く、

誰もが「次」を見据えて動いている。


ミナが廊下を歩きながら言った。


「……嵐の前の静けさって、

 こういうの言うんやろな……」


ソラは短く答える。


「もう嵐は始まっとる。

 音がせえへんだけや」


ルナは風を見上げる。


「……風……

 昨日より……

 少し重たい……」


風の光は、

確かに変わっていた。


揺れは変わらない。

だが、

世界から向けられる“意味づけ”が

増えている。


アリアは内心で整理する。


(……注目される存在になった。

 それ自体が、

 風への圧力になる)



◆各国の反応


執務補佐官が、

まかない部を呼び止めた。


「魔王様より伝達です。

 各国の初動が出揃いました」


簡易会議室に通されると、

地図と書簡が並んでいる。


リイナ(紅葉)が目を走らせた。


「分かりやすいわね。

 三つに分かれた」


カール(蒼術)が整理する。


「第一。

 制御計画を公式に撤回した国。


 第二。

 観測のみを継続すると宣言した国。


 そして第三……」


ソラが低く言う。


「……水面下で続ける国、やな」


補佐官が頷く。


「ええ。

 名目上は“研究停止”。

 だが、

 風固定装置の移設が確認されています」


ミナが顔をしかめる。


「反省したフリだけ

 一番たち悪いやつやん……」


アリアは静かに言った。


「……そして、

 その“実験場”にされるのは、

 声の小さい場所」


補佐官は、

一枚の地図を差し出した。


「その通りです。

 そこで――

 まかない部に、

 非公式の依頼があります」



◆想定外の依頼


依頼内容は、

戦闘ではなかった。


「……調査と、

 必要なら――

 “生活の立て直し”?」


ミナが目を丸くする。


補佐官は淡々と説明する。


「風の異常が出ている小規模地域へ行き、

 住民の生活がどう影響を受けているか確認。


 そして――

 できる範囲で支援を」


ソラが腕を組む。


「それ、

 役人の仕事ちゃうん?」


補佐官は首を振る。


「役人が行けば、

 政治になります。


 しかし、

 あなた方が行けば……」


アリアが引き取る。


「……暮らしの話になる」


補佐官は頷いた。


「はい。

 それが、

 今いちばん必要です」


ルナが風を見る。


「……風……

 また……

 人のそばに行く……?」


風の光は、

否定も肯定もしない。


だが、

わずかに――

前を向いた。



◆魔王の補足


執務室で、

魔王は短く言った。


「止めに行くな。

 正しに行くな」


アリアは一礼する。


「……では?」


魔王は淡々と告げる。


「見るだけでいい。

 直せるところだけ直せ」


ミナが思わず言う。


「……めっちゃ、

 うちら向けの指示やん……」


魔王は一瞬だけ口角を上げた。


「自覚があるなら十分だ」


そして、

風に視線を向ける。


「風。

 お前も行け。


 命令ではない。

 “一緒に歩いた結果”としてだ」


風の光が、

静かに肯定した。



◆再び外へ


城門を出る準備をしながら、

ソラが言った。


「……結局、

 派手な場より、

 地味な現場に戻ってきたな」


ミナが笑う。


「うちら、

 そういう部隊やし」


ルナは風にそっと言う。


「……また……

 同じ高さで……

 歩こう……」


アリアは、

一行を見渡した。


「今回の任務は、

 解決じゃない。


 “残された余波”を、

 静かに受け止めること」


風は、

彼らと同じ速度で、

城外へ流れ出した。


それは――

世界が出した問いに、

答えを急がず向き合う旅の始まりだった。

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