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14話「この力を何に使うべきか」

 寮のベッドで横になる。時計がないから正確な時刻はわからないが、太陽の沈み具合を見るに17時というところだろうか。


 今日は大変だったな……。

 女神の加護のおかげで俺の魔法が群を抜いていること、それはなんとなく予想していた。しかし、俺が魔法を指導したナギサを除けば、他人の魔法を見たことがないのだから客観的にどの程度の位置にいるかなんてことを把握しようがない。結局大竜だって倒してないわけだし、同年代で上の方ならまあ良しとするかなんて、そんな考えだった。


 だが、実際にはおそらくこの世界では、特に人間に限定すれば既にトップクラスに位置してしまっているのだろう。ならば、ここからどうするか。今のところは魔法学校を卒業した後、〈竜の剣(ドラゴン・セイバー)〉に所属する予定になっている。そして、この力で竜から人々を守る。これは決して間違っていることではないだろう。いやむしろ適材適所と言える。

 でも、もっといい進路があるんじゃないかとも思う。例えば、この国は王政を敷いている。王に取り入って、贅沢三昧なんてのもありだろう。あとは自由気ままに世界を旅するなんてのも良いかもしれない。

 いずれにせよ、どんな夢でも叶えられるようなそんな力が俺にはある。


 まあ、そのうち考えればいいか。今はちょっと仮眠でもとろう。



「夕食の時間だよ~!!!」


 食堂のおばちゃんのやかましい声に目を覚ます。

 もうそんな時間か。この世界にはパソコンやゲームのような娯楽がないから、暇な時にすることと言えば、とりとめもない考え事か睡眠くらいしかない。いっそのこと勉強でもしようかと思ってしまうくらいだ。


「さてと……」


 けだるげな体を起こし、食堂へと向かう。


 おばちゃんから夕食を受け取り、周囲の人の気づかれないよう端の方の席に座る。飯はさっと食べてすぐに帰るに限る。元の世界でもずっとそうしてきた。一人で食事を摂ることを寂しいだなんて思うわけがない。むしろ静かであること、それが心地良いんだ。


「お、エイト隣座るぜ」

「じゃあ俺も」


 俺が返事をする間もなく、即座に椅子に座る。同じクラスだったことは覚えているが、名前はわからない。


「ああ、えっと君たちは……」

「俺はベック。こっちはチャーリーだ。よろしくな!」

「よろしく」

「いやー、しっかし今日のはすごかったな。なんだよあれ、あんな魔法みたことねえぜ。〈竜の剣〉でもあそこまでの威力を出せる魔道士は滅多にいないんじゃないねえか?」

「しかも、風属性ときた。ここまでの逸材はどこも黙ってないだろうな」


 風属性はレア。これは覚えている。


「これ今年はいけるよな?」

「まあエイトの分は堅いだろうな。だが、それ以外で勝てるかどうか」


「待ってくれ、一体何の話をしてるんだ?」


「対抗戦だよ! 俺たち庶民クラスはいつも最下位だからな。今年こそ貴族様に一泡吹かせてやろうぜ!」

「悪いがもう少し詳しく説明してくれないか? ここには編入してきたばっかりで仕組みがよくわかってないんだ」

「ああそうだな、ちょうど2ヶ月後にクラス対抗で競い合う、対抗戦ってのがあるんだよ」

「正確には魔法祭。対抗戦ってのは俗称で、目的は外部に向けて自分たちの力をアピールすることだ。昔は単に学生が魔法を披露するだけの場だったらしいんだが、こっちの盛り上がるってことでいつの間にかクラス対抗で競い合うようになったんだと」

「何のために魔法を外部に見せる必要があるんだ?」

「マッチングのためだな」

「別に魔法学校を卒業した生徒全員が〈竜の剣(ドラゴン・セイバー)〉に行くわけじゃねえんだぜ? 魔石職人になるやつだっているし、学者になるやつもいる。あとは建築とかだな。優秀なやつはこの時点でいろんなギルドから目をつけられて引っ張りだこさ」

「逆にここで上手くいかなきゃ人気の高いギルドに入るのはかなり難しくなるな。大体がこの時点で誰を採用するか決めてるって話だ」

 こっちでも結局就活じみたことをやらなきゃいけないんだな……。


「青田買いってわけか。ちなみに建築っていうのは何をやるんだ?」

「何ってそりゃあ、家を建てるのさ。土魔法を使ってな」


 そういえば土の基礎魔法である『粘土(チェンジ・アース)』は物の形を変える魔法だったな。実際の建築時にも同じ魔法を使っているのかは知らないが、これなら簡単に家が建てられるな。

 思い返してみると、アリサキ村じゃ家はほとんどが簡単な木造だったが、王都じゃ内装も含めて現代の建築と比較しても遜色ないレベルだ。魔法のおかげで王都ではかなり便利な暮らしができている。


「なるほど。魔法を使った仕事も多岐にわたってるんだな」

「ただし、今の話はあくまで俺たち庶民用。貴族にとっては力の誇示が一番の目的だ。家同士でどちらが上か決めるために」

「両親の魔力の強さは基本的に子供にも受け継がれるからなあ。何代にも渡って魔力が高められてきてるわけだし、俺ら庶民とは生まれが違うわけよ。たまたまちょっと魔力が高く生まれた一般人には勝ち目がねえわ」

「そう。だから対抗戦じゃ俺たちは万年最下位。でも今年はエイトがいる。期待してるぞ」


 庶民は就職、貴族は家の名誉を賭けて闘う。なんとも欲望渦巻く感じだが、せっかくだし、クラスメイトのために一肌脱ぎますか。

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