13話「全力を出してしまいました」
校舎の裏の校庭に集められ、実技の時間が始まった。
開始してそうそう俺が指名される。
「エイトさん。今のあなたの実力を知りたいので全力で魔法を使ってみてくれますか?」
「全力ですか……?」
「ええ。魔法はなんでもいいですよ。一番得意なもので」
全力出してもいいんだろうか。学校の敷地は広大だ。どこまでもずっと草原が広がっているし、そっちに向けて魔法を放てば多分問題はないだろう。
でも、周りに人がいる時に使ったことないしなあ……。下手すると校舎がふっとぶんじゃなかろうか。
気を引き締めてコントロールしないと。
でも、ホムラさんから俺の話は聞いてるはずだし、最悪、先生がなんとかしてくれるだろう。
「【大いなる風よ、猛り狂い全てを飲み込め】」
「『暴食の竜巻』!」
よし!上手く正面に魔法を展開できた。これなら余計な心配はなさそうだ。
こころなしか一段と威力を増している気がする。
「ちょっと!ストップ!ストップ!」
「え、はい」
竜巻を消滅させる。先生はかなり慌てている様子だ。
「えーと、なんでしょうか?」
「何ですか今の!? あなた一体今までどこで魔法を習っていたんですか!?」
「あれ? ホムラさんから聞いてないですか?」
「学長から? 何も聞いてませんよ!」
この光景を目撃したホムラさんが校舎5階の窓から飛び降りてくる。
見事な着地をきめ、こちらに歩いてきた。
「やあ、アデール先生。紹介が遅れたね。彼は私の弟子だから、よろしく頼むよ」
「学長! そういうことはもっとはやく言ってください! あんな魔法私にだって止められないんですから! 何かあったらどうするんですか! あなたはいつもいつも……」
アデール先生の学長へのお小言は終わらなそうだ。
しかし、ホムラさんはいつも飄々としていて達観したイメージだったけど、意外と抜けているところもあるんだな。
「お前、あのホムラさんの弟子とかすげーな!」
「いやいやそれよりもさっきの魔法だよ! あんな威力の魔法今まで見たこともない!」
「しかも風魔法かよ!」
「ホムラ様のことを教えて!」
「もしかして貴族の出身!?」
「やっぱり将来は〈竜の剣〉で活躍する予定なの!?」
「ホムラ様の好きな食べ物は!? スリーサイズは!?」
「私にも魔法教えて!」
「他の属性でもこれくらいできるのか!?」
皆が矢継ぎ早に発言する。聖徳太子じゃないんだから聞き分けなんて出来ないぞ。
というか一人ホムラさんのことをやたら質問してくる女子がいるな。
「いや、あの師匠のプライベートは答えないから……」
まあ正確には答えられないわけだが。
その後も質問攻めにあい、ホムラさんのことや魔法のコツなどの質問に対し適当に誤魔化しながら応答していた。
その日はそのまま終わってしまった。やっと解放される。寮に帰って休もう。
「はあ……疲れた」
「いやーすごい人気でしたね」
「ああ、まさかあそこまで注目されるとは思わなかったよ」
少し、浮かれすぎた。
正直な所、多少はわーきゃー言われたかったという気持ちがあったことは否めない。せっかくの力を見せびらかしたくなるのは人の性だろう。
しかし、一事が万事この調子ではさすがに困るし、今後は人前ではあまり目立たないようにしたほうが良さそうだ。
「なんとなく、ただならぬ雰囲気は感じてたっすけど、流石にあれは予想できなかったっす」
「ピーニャか。ちょっとやりすぎたみたいだな」
「まあ、一人で大竜を倒せるくらいなんだかあれくらい当たり前っすかねえ?」
「知ってたのか」
「んにゃ。カマかけただけっす。でもその反応だと本当みたいっすね」
っく。やってしまった。
「大竜の話って王都だとどこまで伝わってるの?」
「うーん、ここじゃ大竜殺しが出たって噂になってたレベルっすね。ただみんな半信半疑っすよ。なんせいままで2人しかいないっすから普通は信じないっす」
ホムラさんと帝国の英雄だっけか。そして俺が3人目。
「でもこの時期に2人も魔法学校に編入してくるなんてウチはピーンと来たっすね! しかも同じ村から! 絶対何かあると思ってたっすよ! こうなるとナギサも何かあるっすか?」
「私は、全然だよ……。エイトさんに魔法を教えてもらったからちょっと使えるだけで」
「むっ、それはそれで羨ましいっすね! やっぱりナギサも風属性っすか?」
「うん。でも魔法は1個しか使えないけどね。ピーニャちゃんは?」
「ウチはまだ土と水の基礎魔法が使えるだけっすね。でもこの歳で基礎魔法2つって結構すごいんすよ? 村じゃ神童なんてもてはやされたもんっす。まあお二人には敵わないっすけど」
基礎魔法。ナギサの持ってた本にも載ってたな。土・水・風・火属性の魔法がそれぞれ1つずつ。土を変形させる、水を流れさせる、風を吹かせる、火を起こす。というすごく単純なものだ。
「そんなことないよ。私も勉強したけど基礎魔法は全然だもん」
「やっぱ、難しいっすよねー」
「あ、でもエイトさんはすごいんですよ。ちょっと本を読んだだけで基礎魔法4つとも全部使えるようになっちゃったんですから」
「はえー、それはそれは。やっぱりウチらとは違うっすねえ」
なんだか、ここまで持ち上げられると気恥ずかしいな。
「おっ。寮についたっすね。じゃあまた明日っす。エイト!」
「ああ、また明日」
ピーニャが大きく手を振る。その横でナギサもはにかみながら小さく手を振っている。
俺も軽く手を振り返して、男女それぞれの寮に入っていく。
ああ、それにしても今日は疲れた。今までコソコソして生きてきたのもあって、目立つのには慣れないな。




