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悪役令嬢断罪請負人デルガ  作者: 南蛇井


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第8話「国民投票」【幕1】二分される王都

王都の大広場は、朝から異様な緊張に包まれていた。


石畳の中央に、巨大な掲示板が設置されている。

王家の紋章が刻まれ、その下に貼り出された一枚の告知。


国民投票を実施する

断罪制度 存続か 廃止か


最初にざわめいたのは若者だった。


「本当にやるのか?」

「俺たちが決めるってことか?」


興奮が混じる。


少し離れた商人たちは、顔を寄せ合う。


「存続なら祭りだ」

「廃止なら……別の商材を探さねばな」


保守派の老貴族は眉をひそめる。


「王の権威が揺らぐぞ」


一方、学院帰りの学生たちは紙と筆を手に議論していた。


「制度論として考えるべきだ」

「感情で決めるな」


王国史上、初の全国投票。


断罪は王の名のもとに執行される儀式だった。

それを――民に問う。


その意味は重い。


やがて、広場は二色に染まった。


赤い旗を掲げる者たち。

青い旗を掲げる者たち。


存続派、通称“炎派”。


「炎を消すな!」


若者たちは声を張り上げる。


「断罪があるから秩序が保たれる!」

「正義を見える形にするべきだ!」


彼らにとって断罪は、鬱屈を焼き払う祭りだった。

怒りが発散され、国が一体になる瞬間。


一方、青旗を掲げる“静穏派”。


「正義を演出するな!」


冷静な声。


「証拠を歪めれば制度は腐る」

「若者を消費する仕組みだ」


炎を恐れるのではない。

制御を失うことを恐れている。


王都は真っ二つに割れた。


石畳の中央線が、そのまま思想の境界線になったかのように。


その日の夕刻。


赤旗の海の中に、一人の男が立った。


若手宰相候補、カイ。


整った容姿。

自信に満ちた笑み。


「断罪は進化しました!」


歓声。


「私たちは野蛮ではない。管理された正義です!」


拍手。口笛。熱狂。


彼の声は、群衆の心拍を掴む。


「炎は危険だと言う者がいる。

しかし炎は、正しく使えば光になる!」


赤旗が揺れる。


支持率は再び上昇し始めた。


炎派は勢いを増す。


王城。


静まり返った廊下を歩くデルガの足音だけが響く。


彼は窓越しに、色分けされた広場を見下ろした。


(分断……)


そこへ近づく足音。


振り向けば、王子アルベルト。


「見ているか」


「はい」


王子は短く言った。


「お前が演説せよ」


デルガは一瞬、言葉を失う。


「私が……」


「お前だけだ。

断罪の構造を知り、炎の危険も知っているのは」


王の視線は真っ直ぐだった。


逃げ場はない。


デルガの胸に、重い葛藤が沈む。


断罪は危険だ。


だが即廃止もまた、爆発を招く。


炎を消せば、地下で燻る。

煽れば、国を焼く。


彼は広場をもう一度見る。


赤と青が、互いを睨み合っている。


(私は……何を守るべきだ)


制度か。

若者か。

国家か。


答えはまだ出ない。


だが時間は迫る。


夜の王都に、二色の旗が揺れていた。


幕1、終了。

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