寂しく思うようになりました
あれからヴィルディエール様がお帰りになり、しばらく経った。
彼は国のほうで私に斡旋するお仕事を探してくれると言っていたので、今度はそれを待つ形となる。少し時間がかかるかもしれないと言っていたので、こうして数日誰も訪ねて来ずに経つというのも予想済みだった。
「なぜでしょう、少し、寂しい……ような気がします」
「ブルル?」
小屋の外、畑仕事をしながら気を紛らわせているものの、どうしても思い浮かぶのはあのシトリンの瞳と夜空のような髪色。
心配気に私の頬に鼻を寄せるイグニエラの頸筋を撫で、ため息をつく。
「イグニエラ、あなたはあの人のこと、どう思いますか?」
「……」
傍の炎の馬は少し考えたようにしてから、私の頬をぺろりと舐めた。それに思わず笑ってしまってからイグニエラの額を撫で回す。そうよね、言葉が分からないのでは、彼のことをどう思っているのか私が把握することはできないものね。
でもこの様子だと、もしかしたら親しみくらいは覚えているのかも? 嫌いではなさそう。そもそも、彼をはじめに招き入れたのはイグニエラだもの。
「さっ、栄養を取ってしまう悪い植物は食べてしまってください」
「ヒヒン」
畑の中でぴょこぴょこと生えた雑草をイグニエラがもぐもぐと食べて処理していく。畑以外でも森の中に放していればこの子の食事に関しては問題ない。私自身も、彼ら草食の動物や幻獣などの食べるものを見ていれば毒があるものに引っかかることもない。野生動物というものは、毒のあるなしをなんとなく見分けられるものなのだから。
「今度、あの人が来たときはこちらから美味しいものを用意しましょうね」
「ヒン!」
もそもそと若芽を食べながらイグニエラが返事をする。
そう、お世話されっぱなしなのはよくない。だから、今度はこちら側からおもてなしをするつもりだ。彼だって軍人さんなのだから忙しいはず! きっと忙しいのに、あんなにも私を気遣ってくれていたのだわ。あの人だって多忙で精神的に参ることだってあるはずなのに。
彼がここにそう簡単に通って来られないのは承知の上。だからたまにここに来られるときはお休みしに来ていると考えて、こちら側から甘やかしてさしあげるくらいでなければ!
頑張るのよフレアローザ! いつまで経っても弱気で甘えっぱなしになるのはやめるの! 私だって彼を甘やかして癒してあげることだってできるはず!
だって、聖女だもの!
「ふんふん、お料理とお裁縫の腕をあげませんとね」
恐らく仕事もお裁縫関係が来るはずだ。
彼の期待に応えられるように頑張らねば!
「でも、早く来て欲しいですね」
「ブルル?」
「なんででしょうね。やっぱり私、寂しい……のかな」
……前までは、イグニエラ達さえいれば寂しくはなかった。
なのに、彼が現れてからは彼が数日間訪れないだけで寂しさを埋められなくなってしまった。
前は、こんなことなかったのに。私はいったい、どうしてしまったのかしら。
答えは見つからない。




