しろがね
深呼吸を一つ。
私は足を踏み出した。
薄暗い森深くにそれは現れた。
現れたといより、あった。と言ったほうが正確だ。
しろいがねいろの船だ。
私は、あまり文学には興味がなく言葉がうまく出てこない。しかし、それは船というよりもドーム。まるで、大きな住居のようだ。
コンサートでもできそうなくらいの大きさだ。
白銀のおぼろげな光を放つ。
まさに未確認飛行物体だった。
コツコツと静かな廊下に足音だけが響く。
おおよそ、人の力では不可能なくらいの繊細な作りである。
「お、おい。なんか喋ろよ。急におとなしくなるとこわいだろ」
神室が呼び掛ける。
「さっきまで宇宙人なんていないと喚いていただろう」
私の頭は怖いくらい冷えていた。
「ええ、さっきまではね。でも、こんなものを見せられたら信じるほかはない。これは、私達の科学技術ではいまだ到達できない。それなら、そんなものを作ったのは、地球外生命体。そうね、宇宙人くらいだわ」
それなら、納得がいく。
「やっぱ。こわいよね俺達のこと」
おずおずと祐希は訊ねる。
「こわくはないわ」
「私がこわいのは、ハルちゃんの平穏が脅かされることだけよ」
廊下に三人分の足音が響く。
「協力してくれるということだな」
神室が低い声を出す。
「もちろん。でもこれは好意ではないわ。そうそうに、もといた場所に帰ってもらうためよ。勘違いしないでね」
りこは目を細めた。
「それでもいいさ」
満足げに神室は初めて微笑んだ。
「あと、あなた達の中には誰が入っているの?もちろん二人だけってことはないでしょう。そうね。もしかしたら、神崎冬子さん。彼女も宇宙人じゃないのかしら?」
彼らの目を見て思った。
そうかやっぱりと。
なぜだか凄く納得がいった。
彼らは美しすぎるのだ。無機質過ぎるのだ。
何かが私達とは違い過ぎるのだ。
だから、兄が彼女を好きだと言っても私は何も思わなかった。兄の心情は汲んだ、でも嫉妬心など浮かばなかった。取られるとは思わなかった。
彼女はあまりに美しい過ぎる。
あまりに別々の世界にいるとさえ思った。
まさに、人間と宇宙人など分かり合うことなどありえないのだから。




