迫りくる脅威
流れる曇は穏やかに消えていった。
教室の机に座り、旭稜楓は窓の外を見た。
「あの女に負けていたのね」
ポツリと旭は言葉をこぼす。
「そんなことはございません。たまたまでございます。旭様はフェンシングの練習でお忙しかったのです。見事に、フェンシング世界大会一位。日本フェンシング大会では、一位でしたわ。つまり日本一ですわ」
親衛隊達は声高々に吠える。
「たしかに。私は、日本で一番強い。世界の強豪にも引けをとらない。武芸も学問も美貌も素晴らしい。ごめんなさい、センチメンタルな気分になっただけね」
「はい、その通りでございます。神崎冬子は、旭様のすごさがわかってないのでございます」
「そ、そうかしら?まぁ、私のすごさは一般人にはわからないわ」
「はい、その通りでございます」
「しかしそれにしても、あの女目障りだわ。選挙戦でと思ったけれれど。その前に潰しておいておくのも悪くない。いくつか案を考えておきなさい」
翡翠の瞳を細めなかまら稜楓は微笑む。
「仰せのままに」
親衛隊は、深々と彼女に頭を下げた。
時は過ぎ。
昼休みが終わる時間がやって来た。パラパラと生徒達が教室に戻ってくる。その中には、ある男子生徒の姿もあった。
その男子生徒は整った容姿、聡明で美しかった。彼の名前は祐希要。この学年のプリンスと呼ばれる少年だ。彼は、一般人である。だか、すべてが素晴らしい。学問、運動、容姿と三拍子揃っている。
まさに、この旭稜楓の夫となるにふさわしいのだ。
ああ、今日も祐希様の美しいことといったら。
ふふっ。
あら、やだ。
目と目が合ってしまいそうだわ。
稜楓は、教科書で顔をササッと隠す。
お付き合いは、私が生徒会に入ってからかしら?だって、私は日本で五本の指~以下省略ですもの。三年になったら、祐希くんも私の魅力に気が付きますわ。
交際期間を経て、婚約。そして、海の見えるチャペルで結婚式をするのよ。
「ふふっ」
思わず笑みがこぼれる。
なんて完璧な人生計画。
稜楓は物思いにふける。
ワイワイと女子のグループがお喋りに興じている。その声がよく響いた。
「やだもう、祐希くん。かっこいい」
「彼女になりたいな」
「馬鹿。あんたには。祐希くんとか無理なんだから」
「え~、なによ~」
そのとおり。
そんなの無理ですわ。
だって、彼は私の将来の旦那様。
「無理無理。だって、祐貴くんは神崎さんの彼氏なんだから」
そう、そう。彼氏なのよ。
んっ?んんんんんんん?
「え~、うそ。やっぱりなの」
「そうなの。祐希くんは神崎さんの彼氏なのよ」
バキッ!!!!
教室のドアが開き担任が入ってくる。
「お前ら、早く席につけ」
「んっ?旭大丈夫か。顔色が悪いぞ」
「いえ、そんなことは………」
「というか………。何故机が真っ二つに割れているのか?」
「あっ、そうですわね。古い机だったのかしら?割れてしまったわ。新しい机にかえてくださるかしら?先生、よろしくて?」
「ああ、よろしいが。大丈夫か、旭?」
「勿論、ノープロブレムですわ」
神崎冬子。
許すまじ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
稜楓は心の中で絶叫した。




