二位の人
高校二年のこの時期は選挙戦を控える大事な時期。
目の前の水色の髪の少女に気が付く。
じき生徒会長役員の私が挨拶くらいしてやらなくもないわ。
廊下の先で彼女。
神崎冬子を見つけて、稜楓は思った。
薄い水色の髪をサラサラと風に揺らし、すらりとした長い足から制服のスカートを優雅に翻しながら歩く美少女。神崎冬子が、数人の親衛隊を従え前から歩いて来る。
稜楓は廊下の真ん中で立ち止まった。
その長い綺麗な黒髪を手で払いのけ、声を掛けた。
「あら、ごきげんよう。神崎冬子さ…」
その瞬間。
神崎冬子は華麗に、旭稜楓を通り過ぎた。
「はっ?」
何が起こったのか。
菱楓の親衛隊も目を丸くする。
そして、時間は無情に過ぎていく。
私をスルーしたですって?????
私は日本で五本の指に入る財閥の令嬢なのよ。この学校にも多額の寄付金を入れているわ。その私を素通りですって。
待って、ありえないわ。
こんなことはありえない。
「りょ、稜楓様。もしや、聞こえなかったのではないですか?」
「そっ、そうですわね。朝は声が響きにくいですからね」
気を取り直して、菱楓はくるりと振り返る。
神崎冬子に向かって。
彼女は、いそいそと誰かに話しかけていた。
「碧くん、おはよう」
「おはよう、神崎さん」
普通の顔をした地味な少年?に声を掛けていた。
どういうことなの?
モブじゃないの。
「あ、あの。ク、クラスメイトのようですね」
親衛隊の女の一人が口を開く。
歩くヴィーナスのような私を無視して、あんな道端の石に先に話掛けた???ですって???
私は、日本で五本の指に入る~以下省略。
廊下に大声が響き渡る。
「神崎冬子!!!!!!!!!!!!」
そこにいる生徒達が一斉に稜楓を見た。
ツカツカと神崎冬子に歩いていく。
美しい緑の瞳で、神崎冬子を鋭く射抜く。
「あら、ごきげんよう。神崎冬子さん」
彼女は黙って、私を見た。
一瞬の沈黙。
「おはようございます。どちらさま?」
凛とした表情で彼女は尋ねる。
「はっ?」
よく聞こえなかった。
なぜなら、私は日本で五本の~以下省略。。
「あ、旭稜楓ですわ」
不思議そうに、彼女は首を傾げる。
「そうなんですか?存じ上げませんせんでした」
神崎冬子は、美しく微笑む。
存じ上げないということはあるだろうか????
なぜなら私は、日本で五本~以下省略。
呆然と稜楓立ち尽くす。
「ねぇ、神崎さん。旭さんだよ。ほら、成績が優秀で、運動が出来て、武芸も出来る」
「そうなの?」
小石が何かを囁いている。それに、彼女は気づいた様子だ。
「ああ、このないだのテストで二位だった人ね」
こちらを見て微笑む。
はっ?
たしかに、あのときは部活も忙しくて二位だった。
たしかあのときは、この女。神崎冬子が学年一位だった。
はっ?
二位の人?
二位の人って、私のことかしら?
えっ?私の名前しらないの?
私は、日本で五本の~以下省略。
「碧くん。ホームルームが始まるから行きましょう」
そう言って、彼女は私の前から風のごとく去って行った。
えっ?
ちょっ?
嘘でしょ?




