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059話 頑張ってくる!

 遅れてすいません。12時に予約していたと思ったのですが投稿出来てませんでした。


「さてと。武器が買えたところでちょっと試しに使ってみたいんだが……」


「その前に防具揃えた方がいいと思いますよ?」


「だよなぁ…………いや、防具は買わない! 多分あるだけ無駄! ただ格好だけはちゃんとしておくかな。この純白の盾だけじゃ目立ちまくってしまうだろうし」


 そもそもの話、俺の体に何かがある時は俺が死ぬ時だろう。普段はカヤが守ってくれているから攻撃なんて何一つ飛んでこない。

 それに、もし死んだとしても俺は生き返るから心配はない。本当に生き返るのかどうかはは分からないので、確実とはいかないが恐らく大丈夫。


「まあ、今日はこの盾買ったからもういいかな」


「そうですか……無理にとは言いませんが、ある方が当然安全ですから考えておくといいですよ」


「そうする。とは言え、お金とも相談していかないときつい」


「お金なら私が出しますよ?」


「あらやだカッコいい……」


「何変なこと言ってるんですか。カヤに悪影響なのでやめて下さい」


「フィーが母親みたいな事言ってる……」


『フィーがおかーさん? おかーさん!』


「…………幸せすぎて死にそうです……」


 フィーが蕩けている間もカヤは楽しそうにお母さんを連呼している。カヤにとってみれば、呼び方なんてものは些細なことなのかもしれない。

 だが、フィーがお母さんと呼ばれて嬉しがっているように、俺もカヤからお父さんと呼ばれればそれだけで嬉しくなるはずだ。呼ばれたこと無いから想像でしかないけど。


『おかーさん、今度は何処にいくのー?』


「んっ……カ、カナタさんは何処か行きたいところありますか?」


 今の『んっ……』ってなんだ。お母さんと呼ばれてついにそういう所まで来てしまったのか。フィーも大概変人なようだ。


「俺はこの盾の具合を確かめたいから外にでも行こうかと思ってるんだけど」


「街の外にですか?」


「うん。ゴブリン相手なら何とかなるかなって思って。それに慣れるには実戦を経験しといた方がいいと思うし。どう?」


「いいと思いますよ。何気に三人で外に行くのも初めてですし、いい思い出が作れるんじゃないかと思います」


「んじゃ、外に行くか!」


 と、言うことで俺の盾の扱い訓練をするために外に出る事になった。それに加えて、カヤが短剣の具合を確かめる訓練にもなる。

 カヤがいるので、外に行く準備はしない。大体の敵はカヤがどうにかしてくれるし、フィーだっている。この二人がいればここ周辺の魔物はどうということはない。フィーは思い出作りに出るくらい余裕なのだし、どれ程に安全なのか分かるだろう。


 行く場所も決まって準備も無いので、早速外に向かおうと思ったのだが、どうせゴブリンを退治するならと冒険者協会に寄り、ゴブリン退治の依頼を受ける事にした。

 最近はゴブリンの数も少しずつ増えてきて、何かの予兆だとギルドの職員は言っている。去年もゴブリンが増えたらしく、その時はスライムがゴブリンの住居を襲っていたせいだったらしい。ちなみに、そのスライムを倒したのがフィーだ。

 今回のゴブリンの増え方は去年と比べると半分にも満たないらしいが、去年のこともあり、何が起こるか分からないらしいので注意を受けた。恐らく大丈夫だろうが、気を抜かないようにしておこう。


 協会の職員に見送られながら、俺達は目的の場所へ向かう。道中では俺達の事を知っている冒険者が、『頑張れよー』や『気をつけろよー』などの声をかけてくる。ちょっとした有名人気分だ。

 そんな気分を味わいながら、しばらく歩くと門がに着く。そこでは顔見知りになった門兵に外に行く目的を話してから外に出る。


 これは余談なのだが、門兵はこうやって目的などを逐一聞いて、ノートのようなものに書き込んでいる。これは、外に出た人が帰ってこなかった場合にどこへ行ったのか分からなくならないようにするためだ。

 ただ門兵の人が言うには、偶に嘘をつく人がいてそういう人がいなくなった時がとても大変らしい。また、長期間いなくなる人の場合はいつから行方不明になっているのか分からないから、探し用がないとの事。なので、ほぼ形骸化しているんだ、みたいな事を言っていた覚えがある。

 しかし、仕事なのでやらない訳にはいかず、毎日こうやって頑張って仕事をしていると、涙ながらに聞いた覚えもある。是非ともこの頑張っている門兵には頑張って幸せな家庭を築いて欲しい。


 閑話休題。


 そんなこんなで、外に出た俺達は早速五匹のゴブリンと遭遇した。いつも思うのだが、このゴブリン達は何をするためにここにいるのだろうか。狩りにしても、ここでは冒険者によって逆に狩られてしまうというのに。

 少しは考える事をしているというのに、そういうところは野生の勘でもなんでもいいから気付けるようになればもう少し発達出来ると思う。ほんとにいつかはゴブリンの村にでも行ってみよう。


「じゃあ、早速この盾の具合を……と思ったが、俺には五匹のゴブリンの相手は無理だ。というか、一匹しか相手に出来ない。カヤとフィーで一匹にしてもらえないか?」


「お易い御用です」


『やるー!』


「んじゃ任せた」


 俺がそう言うと二人は同時に飛び出した。

 フィーは小さな青い火の玉を、カヤは先程買った短剣を手にゴブリンに突っ込む。

 ゴブリンは前衛が三匹、後衛が二匹のバランスの取れたパーティを組んでいる。俺が一対一で戦うなら、無論前衛との方がいいので前衛を一匹残してもらう事にした。


 フィーは、その手の平に出した青い火の玉を後衛に向かって、野球選手ばりのフォームで投げた。速さはそこまでないが、それでも軽く時速百キロメートルは超えていただろう。

 前衛はその火の玉を避け、後衛のゴブリン達はその火の玉を迎撃しようと短い呪文を唱えて魔法を発動させた。


 ゴブリンが発動させた魔法は水魔法。炎魔法とは相性最悪の魔法だ。水魔法は一直線に火の玉を目指して蛇のように伸びていく。そして、火の玉と衝突すると思った時、火の玉が六つに分裂し、蛇のような水魔法を回避しながら加速しだした。


「名付けて『炎の魔球』ッ!」


 フィーが名付けた炎の魔球は当然のようにゴブリンに命中し、黒焦げになるまでゴブリンを焼いていく。勝負ありだ。


 対してカヤの方は、フィーの魔球を回避した前衛のスキを突いて、首を短剣で飛ばしていた。初めて使う武器をあんなにあっさりと使いこなすあたり、さすがカヤだと思わずにはいられない。


『んー? 簡単に切れたー』


「俺は時々カヤが恐ろしく思えるよ……」


「魔物を倒すのにはこれくらいの非情さが必要な時もありますよ。見た目が可愛い魔物もいますし、その魔物を倒すのは私でも心苦しいですから」


「フィーは可愛いもの好きだもんな。そりゃしょうがない」



――グギャァァァ!



「おっと、こんなことしてる場合じゃなかった。じゃ、俺も頑張ってくる!」


 俺はただ一匹残されたゴブリンに向かっていく。正直、怖い。

 と言うのも、この世界に来て一年の三ヶ月。戦いはしてきたが、俺自身が戦うの初めてなのだ。恐ろしく感じないわけがない。ましてや、仲間を殺されて怒り狂っていると思われるゴブリンに対して勝負を仕掛けるのだ。こんなの怖すぎる。


 怒り狂ったゴブリンは向かってくる俺に対して矛先を向け、その手に持つ禍々しい形をした棍棒を振りかざす。それを見た俺は急停止し、そこから横へ飛び退いた。

 すると俺がいた位置のすぐ目の前にその棍棒が通り、地面を抉った。


「――ひいぃぃーっ!」


 あそこに自分がいたと思うと、自然とこんな声も出てくるに決まっている。

 あんな攻撃を俺が盾で受けきる自信なんて一欠片もない。怖すぎる。冒険者になりたての初心者が魔物との初戦闘で死んでしまうことが多い理由がよく分かった。こんなの初心者には無理だ。



――ギャァッ!



 ゴブリンは避けた俺を睨んで威嚇しながらこっちへ向かってくる。

 俺は逃げたいのだが、さっきので腰が抜けて動けない。だが、ゴブリンはそんなことお構いなしに俺に向かって棍棒を振りかざす。絶体絶命もいい所だ。


「い、いやぁぁ!」


 俺は咄嗟に盾でその攻撃を防ぐ体制になり、目を強く閉じた。心臓は激しく鼓動をして、息は荒くなっている。恐怖に体が反応しているようだ。


 いつ振り下ろされるかも分からない棍棒を待った。その間数秒。だが、あまりの恐怖に数分にも感じた。この感覚はフィクションの中だけの事ではなかったのだと、知らなくてもいい事を知ってしまった。

 だが、待てども待てども攻撃が来る気配はない。俺は目をそっと開け、外の様子を確認する。


 すると、目の前には頭が砕けたゴブリンが倒れていた。


「へっ?」


「何を素っ頓狂な声を上げてるんですか?」


「あ、いや、なんでコイツ死んでるのかなって思って……」


「えっ? これカナタさんがやったんじゃないですか」


「え、俺が? どうやって?」


「さぁ? 見てた感じ、盾で攻撃を防いだらゴブリンの頭が砕けたように見えましたよ」


『ゴンッ! パァンッ! って感じだったよー』


 予想外の事で頭が混乱中。

 フィー達は俺の盾にゴブリンの攻撃が当たったと言っているが、俺にはそれらしい衝撃は一つも来ていない。そもそも、何もしていないのにゴブリンの頭が砕ける意味が分からない。

 もしかしたらこの盾に何かしらの秘密かあるのかもしれない。どうすれば確認出来るんだ?


「あのさ、この盾のこと色々調べたいんだけど、どうすればいいの?」


「えーっと……それなら鑑定の魔法が使える人に見てもらうしかないですね」


「鑑定の魔法か……俺が使えたらいいんだが、こればっかりは感覚すら分からないからな……あっ、そういえばこの盾を貰った武器の職員が鑑定の魔法持ってたな」


「じゃあ、今日はもう戻りますか? 依頼の規定数は帰りに満たせばいいですし」


「だな。協会に行って依頼の達成報告した後に隣の武器屋に寄って家に帰ろうか」


『ゴブリンやっつけてくるー』


「あんまり離れるなよー」


『はーい!』


 その後、無事に規定数のゴブリンを討伐した俺達は協会に報告しに行って報酬をもらい、その足で武器屋によった。

 やっぱりいつ来ても倉庫のようにしか見えない。まあ、つい数時間前に来たのだからそうそう変わってる訳もないよな。


「いらっしゃいませ。おや? 先程のお客様ではないですか。どうかなさいましたか?」


「ちょっとこの盾を鑑定してくれないか? なんか色々と秘密があるみたいで、それを知っておかないと全然使えないんだよ」


「そうでしたか。かしこまりました。今すぐに鑑定しますが、少しお時間を貰えれば紙に詳細を書き込んでお客様にお渡ししますよ」


「じゃあ少し待つ事にする。店内にいるから終わったら呼んでくれ」


「かしこまりました」


 待つことにした俺は、フィーやカヤと一緒に色々な武器を見て回る事にした。これも勉強の一貫だ。

 と言うのも、さっき来た時はざっとでしか見てなかったら気付かなかったが、様々な武器がここには置いてあった。用途も分からないようなものも置かれていたりしていたり、見知ったものだったりまであるので、知らないものはフィーにどう使うのか聞いてみたり、知ってるものは頭の中でシュミレーションしてみたり、とする事は多い。


 そんな事をしていて十分程の時間が経った頃、鑑定が終わったようで俺が呼ばれた。


「お客様、こちらになります」


「おう、ありがとう」


 俺は差し出された紙を受け取ろうとしたのだが、何故か職員さんは紙から手を離そうとしない。何してるのかと聞こうと思った矢先に職員の方が先に口を開いた。


「いいですかお客様。この紙は信頼できる人以外に見せてはいけません。お客様のためです。お約束して頂けますか?」


「? 分かった」


「ではどうぞ」


 そう言ってようやく紙から手を離して貰えた。

 紙は二つ折りになっており、この紙を開いた所に色々書いてあった。内容はこうだ。




 〜守護の盾〜


解放者 :カミヤ カナタ

付属効果:物理反射 魔法反射 魔力回復 体力回復 ???

説  明:真なる力を解放した者のみが使える盾。

     解放した者以外が扱うと呪われる。

     ???

備  考:アーティファクト




 ……確かにこれは誰にも見せたらダメだな。この盾のことがバレたらどうなるのか想像に容易い。というかこの盾、アーティファクトだったのか。


「ご覧になられたようにこの盾はアーティファクトのようです。アーティファクトは希少価値が高く、オークションなので数億の値がつきます。この盾ならば見栄えが抜群ですし、効果も破格ですから数十億はくだらないかと思われます。そんな盾のことがバレてしまえば、お客様を狙って不埒な輩が襲ってくる可能性があります。くれぐれもご用心してください。私もこの事は心の内に秘めておきますので」


「分かった。というか、これは恐ろしくて誰にも言えないわ」


「ですよね、分かります。私も詳細を見た時にこれはどうしたものかと感じましたよ」


 二人して乾いた笑いが出てくる。

 俺はこの盾に呆れながら、もう一度能力が書かれた紙を眺める。そこで俺は一つの疑問が浮かんだ。


「あの、この『???』って一体?」


「それは靄がかかったようになっていてよく分からなかったところでございます。ですが確かに何かしら事はあるので、一応の表記をさせて頂きました」


「なるほどね。分かった、ありがとう」


「はい、お役に立てたようで良かったです」


 俺はもう一度、職員さんにお礼を言ってフィー達と共に店を出た。

 この盾はヤバイやつだ。絶対どこか何かしらの面倒事を持ってくる。そんな気配がひしひしと伝わってきた。


「どうでした?」


「一応紙に書いて貰ってるから、家に帰ったら見せるよ。さすがにここじゃ見せられないからな」


「そうですか? 分かりました」


『帰ったらお風呂はいるー』


「カヤは私と一緒に入りましょうねー」


『うん! おかーさん!』


「はわぁ……」


 今はこんな感じに蕩けた様子のフィーだった。

 だが、家に帰ってカヤと一緒に風呂に入ったフィーに盾の効果が書いてある紙を見せると、顔を真っ青にしてそのまま気絶してしまった。それほどまでにこの盾はヤバイやつだ。


 その事を認識した俺は、倒れたフィーを看病しながらこの盾を不用意に使わない事を決めたのだった。


 この盾は多分活躍します。まだあくまでも予定ですが。

 それでは、次回もお会い出来る事を願って。

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