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異世界転生、11回目です。〜プロ勇者は今日も神様の手違いにため息をつく〜  作者: 凪塩 未来


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第1話:プロの異世界転生者、ただいま11回目

気づけば異世界召喚も11回目。

最初の頃は「おお、これが聖剣か!」なんて目を輝かせていたものですが、人間、同じようなイベントを二桁もこなすと感動より先に「またか」という乾いたため息が出るようになるみたいです。

チートスキル? 最初からステータス全カンストしてるんで、もはや作業ゲーです。今回の目標は、秒速で魔王をぶっ飛ばして、異世界で美味しいおにぎり定食屋を開くこと。今日も元気にプロの勇者、やってきます。

「――というわけで、小橋零くん! 君を再びこの世界に召喚した!」


目の前で、神々しく発光する巨大な女神像がありがたいお言葉を宣っている。

周囲は真っ白な大理石の神殿。窓の外にはファンタジー感あふれる雄大な大地と、幾重にも連なる浮遊大陸が広がっていた。完璧なまでの異世界召喚のシチュエーションだ。


呼び出された本人である俺――小橋零(おばし れい)は、あろうことか大理石の床にあぐらをかき、片手でポリポリと頭を掻きながら盛大な欠伸を噛み殺していた。


「あー、はいはい。毎度どうもです」


「……ん? なんだか反応が薄くないか? ここは滅亡寸前の聖王国――」


「聖王国のエルドリアですね。魔王軍のせいで民が苦しんでいて、勇者である俺に世界を救ってほしい、と。で、選択肢は三つあって、最強の聖剣か、無限の魔力か、それともチートスキル『状態異常完全無効』か。違います?」


零がすらすらと女神のセリフを先読みして見せると、女神は目玉が飛び出るほど見開き、頭上の光輪を盛大に明滅させた。


「なっ……! なぜそれを知っている!? 君を召喚したのは今この瞬間が初めてのはずだが……!」

「いや、初めてじゃないでしょ。俺の記憶が正しければ、正確に数えて11回目ですけど」

「じゅ、11回目ぇっ!?」


女神の絶叫が、神殿の天井をビリビリと震わせた。

そう、俺は平凡な大学生だったはずなのだが、なぜか人生のあちこちで神々に召喚されまくっている。


原因は、初めて召喚されたときに神界でうっかり浴びせられた「勇者の元(げん)」とかいう謎のオーラ粒子だ。それを頭から全身に浴びてしまったせいで、俺の魂には「どこへ行っても強力な勇者適性がある」という厄介すぎる烙印が刻まれてしまったらしい。


最初に呼ばれたときはそりゃあビビった。「俺に特別な運命が!」なんて心躍らせ、初めて手に入れたチートスキル『成長速度100倍』に感動し、仲間たちと涙を流しながら魔王を討伐したものだ。


しかし、2回目、3回目と回数を経るごとに感動は薄れ、5回目を過ぎたあたりから作業になり、10回目を越えた今では完全に「プロの異世界転生者」としてのルーティンが確立してしまっていた。


「あのですね、女神様。俺、さっきまで元の世界の自室で、冷えたビールを片手に深夜アニメ見てたんですよ。それを不法侵入ならぬ不法召喚でここに引っ張ってきたわけです。帰りの電車の切符代みたいなもんで、今回もちゃんとチートスキルもらえるんでしょうね?」


「な、なんと不敬な……! しかし、確かに我が神界のデータベースを確認したところ……おや? 本当だ、君の魂の周波数はすでにベテランのそれになっている……?」


女神が慌てて巨大な神聖タブレット(のような光の板)をフリックし、冷や汗を流しながらうめき声を上げる。


「し、しかも……『勇者の元』の浴びすぎで、今回の世界における初期パラメータが最初からカンストしている……?」


「あ、やっぱり? なんかさっきから体がやけに軽いし、魔力が底なし沼みたいに溢れてる気がしたんですよね」


「な、なんだと!? 普通はレベル1からの育成を楽しんでもらうところなのに、これでは最初からラスボスを素手で殴り倒せるバランス崩壊状態ではないか!」


頭を抱える女神を見て、零は内心で深いため息をついた。

(育成の楽しみとか言われても困るんだよな。俺としては、そろそろのんびりスローライフを送りたいんだけど、神様たちが勝手に呼ぶからいつまで経っても社畜ならぬ「勇畜」から抜け出せないっていう)


「まあ、愚痴っても仕方ないか。で、今回の魔王はどんなタイプですか? 前々回が筋肉脳のゴリラ系、前回が頭脳派のインテリ系でしたけど」


「い、いや、今回の魔王は『世界を闇に包む深淵の邪神』であってだな、一筋縄では――」


「はいはい、弱点は心臓の少し下あたりにある核ね。了解しました。聖剣とか面倒くさいんで、そこらへんのそこそこの枝でも拾って、一突きして終わりでいいですか?」


「枝で邪神を!? 正気か!?」


「正気も何も、10回も魔王倒してたら大体の雑魚もボスもワンパンですよ。あ、そうだ。チートスキルはどうせなら、戦闘系じゃなくて『どこでも美味しいおにぎりが無限に作れるスキル』とかにしてもらえません? 戦うの飽きたんで、討伐後はどっかの田舎で定食屋でもやりたいんですよ」


零のあまりにも飄々とした、危機感ゼロの態度に、女神は完全に気圧されていた。

神聖なる召喚の儀式が、まるでベテランアルバイトの初日面接のような空気になっている。


「ううむ……。勝手に呼び出しておいてなんだが、君ほどの猛者であれば、我が世界の危機などものの数分で解決してしまうだろう……。しかし、神の面子にかけて、何も報酬を出さないわけにはいかん!」


「じゃあ、さっきのおにぎりスキルと、元の世界への帰還チケットのプレミアムパスをセットでお願いします。あと、現地通貨もそこそこの額で」


「分かった! すぐに用意する! だから頼むから、我が世界をサクッと救ってくれ!」


女神が半泣きになりながら光の魔法陣を展開する。

足元から懐かしい光の粒子が立ち上り、零の体を包み込んでいく。


「――よし、それじゃあ行ってきますか。サクッと終わらせて、今夜中には元の世界に戻ってビールの続きを飲むぞ」


11回目の異世界転生。

プロの元勇者・小橋零は、今日も今日とて気だるげに、しかし手際よく新たな世界へと足を踏み出したのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

「プロの異世界転生者」として、あらゆる世界の神様とシステムに愛され(たらい回され)てしまった零の11回目の冒険、いかがでしたでしょうか。

筋肉脳のゴリラ系魔王も、インテリ系魔王も経験してきた彼ですが、今回の「深淵の邪神」相手にどんな無双(あるいは脱線)を見せてくれるのか。次回、さっそくおにぎりを握りながら魔王城へ突撃する予定です(たぶん)。

「続きが気になる!」「おにぎり屋のメニューが知りたい!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想をいただけると、零が次の世界に飛ばされたときのモチベーションになります! それではまた、第2話でお会いしましょう。

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