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道具師ジェマ、所有者固定魔道具師への道。5  作者: こーの新


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受付嬢アベリア


 数日後、セインの依頼をこなすために【チェリッシュ】の作業場に籠っていたジェマ。いつものようにふよふよと浮きながら店番をしていたジャスパーは、ドアが開かれるとそちらに目を向けた。



「こんにちは……あれ、誰もいない?」



 ツインテールを揺らしながら顔を覗かせたのは、お使いの籐かごを手にやってきた冒険者ギルドファスフォリア支部の受付、アベリア・ビバーナム。



「いらっしゃいませ。まあ、見えてないだろうがな」



 ジャスパーは急いで作業場に飛んでいく。作業場ではジェマがバチバチと溶接をしているところ。振り向いたジェットを浮遊魔法で捕まえたジャスパーはまた店に戻っていく。



「うーん、いないのかな」


「ピッ!」


「わぁっ」



 いきなり頭上から落ちてきたジェットに、アベリアは悲鳴を上げて飛び退いた。



「ピピィ……」



 驚かせてしまったジェットはしょんぼり。そんなジェットにアベリアは恐る恐る近付いてまじまじと観察する。



「アラクネ種の幼体……? 確か、ジェマさんが連れていた子だよね。ということは、契約魔獣? それなら、安全、なのかな?」


「ピッ!」



 静かに、けれど肯定するように2本の脚を上げてアピールするジェット。その様子にアベリアの表情は柔らかく緩んだ。



「可愛い! お名前は何ていうのかな……」



 アベリアはそっと人差し指を差し出す。ジェットは2本の脚でその指に触れて、握手をするかのようにゆらゆら揺れる。そしてお尻から吐き出した糸でしゅるしゅると布を織る。



「わあ、凄い。上手ね」



 布を受け取ったアベリアが布を広げると、器用に刺繍された文字。アベリアはその文字をそっと撫でる。



「ジェットちゃんって言うのね。私はアベリア。よろしくね」


「ピピィ!」



 アベリアの指先にふわふわの頭を擦り付けて、すっかり仲良し。奥からジャスパーと共に出てきたジェマは、空色のエプロンを外しながら微笑んだ。



「アベリア。ジェットと仲良くなったの?」


「ジェマちゃん! そうなの。ジェットちゃん、とっても可愛いね!」


「そうでしょ? 私の大事な家族だもの」



 ジェットは嬉しそうにジェマの肩の上に飛び乗ると、すりすりとジェマの頬に頭を摺り寄せる。その様子にアベリアは指を咥えた。



「良いなぁ。魔獣との契約は危険って言われてしまうから、滅多にできないでしょう?」


「そうね。私とジェットは採取のときに偶然出会っただけだし」


「そっかぁ。運命みたいだね。あ、そうだ。採取で思い出したんだけど、これ。グラスさんからの大事なお手紙と、冒険者ギルドの解体師のストレリチアさんから素材を買いたいっていうお手紙。それから今冒険者ギルドで回復薬が足りないから買いにきたのだけど、売ってくれる?」


「もちろん。お手紙は受け取るね。すぐに読んでお返事を出すから。お薬は店頭に並んでいるものでは足りなかったら新しく作るから、必要なものを教えてくれる?」



 ジェマはすっかりお友達になったアベリアの来店に思わずニコニコしてしまう。同じくらいの年頃の子と楽しそうに話すジェマに、ジャスパーはジェットと顔を見合わせて笑い合う。【エメラルド商会】のメイドであるリュカ以外に純粋に友人と呼べる人はいなかったジェマ。少しずつ増える交流にジャスパーとジェットは嬉しそうにする。



「ありがとう! えっと、【回復ポーション】と【ハニーヒール】を100ずつ、それからグラスさんのために【目覚ましポーション】を20個ください」



 ジェマは在庫表を確認しながら頭を掻く。



「【回復ポーション】と【ハニーヒール】は裏から在庫を持ってくれば足りるから、すぐに渡せる。だけど【目覚ましポーション】は昨日大量に売れちゃったから、明日冒険者ギルドに配達するね」


「うん、ありがとう。ジェマのお薬はとっても効くって噂になって、大人気になっているね」


「有難いけど、1人で商品を大量に作るのは少し大変になってきたかな」



 ジェマは苦笑いを浮かべて頬を掻く。ジャスパーが在庫から【回復ポーション】と【ハニーヒール】を運び、ジェットが【次元袋】に詰めていく。その間にジェマはお会計。販売はみんなでできても、商品を作ったり発明したりすることはジェマにしかできない。



「接客も1人だしね」


「ジェットと、精霊のジャスパーもいてくれるからかなり楽ではあるけどね。呼びに来てもらえるだけでも作業に集中できて凄く有難いの」


「精霊さんもいるの? とっても素敵! 私は見えないけど、ジェマちゃんにとっては大切な仲間で家族なのね」


「うん。私の大切な家族。血は繋がってないから、アベリアにとってのグラスさんみたいな感じなのかな」


「へあっ」



 アベリアはジェマの言葉にじわじわと頬を赤らめる。そして頬に手を当ててもじもじすると、へにゃりと照れ笑いする。



「えへへ、私とグラスさんが、家族……」



 ジェマはアベリアの様子に目を丸くしながらも、手元ではしっかりお会計。ふわふわしたままのアベリアはジェマの助けを受けながら会計を済ませると、2通の手紙を置いて冒険者ギルドへるんるんとスキップしながら帰っていった。



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