014
ツインヘッドは、アイを倒した。
戦闘用に特化したアイは、防御にも敵している唯一の相棒。
だけど、それさえも打ち破って電撃の一撃でアイを倒していた。
最強の相棒で守り役を無いあたしは、追い詰められていた。
(脇腹が痛い……)
戦いの時は、アイがいつも守ってくれていた。
でも、あたしの周りには頼もしい相棒はいない。
周りの兵士は、あたしとツインヘッドの戦いを傍観していた。
あたしとツインヘッドの高レベルな戦いに、兵士達は割って入ることさえ出来ない。
恐怖と、期待……それから黄翼のあたしに対する侮蔑の目も向けつつも戦いを見守るしか出来ない。
それでも、あたしは諦めることは出来ない。
多くのモノを失って、あたしは自由を得た。
多くのモノを失って、あたしは風狩人になった。
だから、あたしは最後まで役目を果たさないといけない。
あたしが倒すべき相手は、コイツだけじゃない。
コイツを生み出した、災厄の風だ。
ツインヘッドも、テュポーンに蘇らされたいわば部下のようなモノ。
だからあたしは、雲の上で立ち上がった。
腹の痛みを耐えつつも、前を向いた。
「災いを……払う」
ブレスを吐いたツインヘッドに対し、あたしは飛び上がって炎のブレスを避けた。
だけど、次の一手で冷気のブレスがあたしの飛び上がった場所目がけて飛んでいた。
「うううっ」氷のブレスで、翼が凍っていく。
鈍くなった翼は、あたしの飛行速度が遅くなっていく。
そのまま、ツインヘッドは体当たりをして来た。
翼が遅くて、あたしはツインヘッドが攻撃をかわすことが出来ない。
2メートルほどで、あたしより大きなツインヘッド。
大きな翼から、素早い飛行速度で繰り出される体当たり。
ツインヘッドは、あたしを目がけて突進してきた。
(だめ、避けられない!)
あたしに絶望感が漂う中、突然ツインヘッドの周りに風が吹いていた。
上から下に降りていく竜巻のような突風が、ツインヘッドに命中し……突進の体が下に押されていく。
ツインヘッドの突進が、あたしを逸れて……あたしは上を見上げた。
「よお、待っていたか。嫁よ」
そこには、上半身裸の男のハルピュイアが無邪気に笑っていた。




