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逆鱗

シリアスだと思いたい

「何処····どこ···」


 家が壊された、それは良い、直すのは簡単だ。しかし人命はそうもいかない。死者蘇生はやったことがない。出来るか分からない。


「居ない····血痕もない···」


 争った後はあるが、血の跡がない。

 逃げた?どっちに?広場の方?それとも門の方?結界を貼り直す?時間の無駄?痕跡を残した方がいい?見つかる?危険?


 どうしよう


 どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう


 あぁぁぁぁぁぁ!


 ととととにかくおおおおお落ち着かないと、ままま魔法をかけるんだ。


「ん……………フゥー····」


 うっし落ち着いた。何処も何も、魔力探せばいいだけだよね。慌てすぎ。馬鹿かな?馬鹿だったわ。


 ········なんか、やっぱり広場に集まってるね、知らない魔力ばっかりだなあ。どうしよう。

 遠くから確認出来ないかな?こう、望遠鏡みたいに。視覚強化とか?いや視力?どっちでもいいか、やってみよ。


 ここで漸くまわりの様子を見る。ほぼ全ての家屋は自分の家と同じように破壊されていて、瓦礫の山となっている。こりゃ街まで攻め込まれたか、兵士共は何やってんだよ····。そのお陰で見晴らしは良くなっているのだが、流石に広場間では見えない。

 瓦礫の山に登り、広場が見えるようになってから、視覚を強化してみる。


「えっ、なにあれ」


 結果は成功。凄い目が良くなり、遠くまでハッキリ見えるようになった。

 そうじゃないんだよなー。拡大したかったんだよなー。見えるからいいけどさぁ。


 広場に居たのは、案の定魔物だった。他にも魔獣とかもいるっぽい。だけど、魔獣如きでは私の結界を破るなんてできない。他にもなんかが居るはず。


 目を凝らす(魔法使えよ)すると、人型だけど明らかに人じゃない"なにか"が居た。便宜上"魔人"と呼んでおく。

 え、便宜上とか私賢そうじゃね?(淡い希望)


(ぜってぇアイツだ····)


 筋骨隆々、魔力も沢山、おまけに目が····えーと、7つ、かなぁ?中途半端だし、違うかな?


 魔人は、足元で作業を行っているようだった。手を忙しなく動かし、何かを組み立てているのか、それとも分解しているのか、そこまでは分からないが、細かい作業をしているようだ。


 なんで戦場で組み立てるんだよ····いやバラしてんのかもしれないけどさ。そんだけ強いってこと?やだなー、めんどくさいなー。


 そんな事を考えていると、2体目の魔人が現れる。


 あれ量産出来るんだー、凄いなー。てか転移?凄くね?あ、私もできるわ。じゃあ凄くないね。


 そして、3体目、4体目、5体目……………


 多いよ!は?なに?ドンだけ出てくんの?つーかあれ転移じゃねぇ、その場で作ってんな?さっきからゴソゴソしてんのそれかよ!そういう魔道具なの?なんか凄い気持ち悪い魔力だけど?なんなの?死ぬの?焼き払うよ?


 そうして50体ぐらいまで増えて、やったのことで魔人達は動き出す。隠れて見えなかったが、どうやら後ろに住民とか兵士とかが居たようだ。それを運ぶ為に数が必要だったのだろう。

 幾ら筋肉があっても、その手に収まらないのなら持てるはずもない。仕方がないね。


 生きてるか···?半分位は死んじゃってるか····。あんなのに襲われたらそりゃ無理だろうね。兵士さん達は悪くない。

 ん?なに?ドライだって?そらね、20年近く住んでたら価値観も変わります。魔法とか魔物とかいる時点で命が軽いのは明確だからね。そこで割り切った。


 つっても、身内は無理。その為に魔道具作ったんだから。あれ持ってたら絶対大丈夫。


 しっかしこっからどうすっか。倒すのもありだけどそれで目立つのは嫌だし(諦めが悪い)、かと言って倒さないのは不安。


 お、魔人共移動を始めたな?これでいなくなってくれればいいんだが。

 それにしても多いな人質。死体は何に使うのか全く想像つかないけど、まあ人質はいい作戦だ··か·····ら····


「なん、で?」


 魔人達が担いでいる住民達。

 それらの先頭、1番最初に見た魔人が担いでいた二人。手と足は力なく宙ぶらりんになっており、既に命は無いようだった。その人たちは、私の見覚えのある、この世界に来て1番話し、1番遊んで、1番その姿を見た人だった。


 そう、私の、お父さんと、お母さんだ。


 ―――


 民衆達は怯えの真っ只中に居た。

 突如として王都の中心へと降り立った異形の化け物。魔物でも魔獣でもない人型。出現した傍から周囲の建物を破壊、人へと明確な危害を加えた。


 応戦した兵士達は睨まれただけで地に伏せ、なんとか立ち上がった者も、その腕でなぎ払われて気絶。戦える兵士がいなくなるのに、1時間もかからなかった。


 その後更に魔物や魔獣までも登場し、住民達は逃げ惑った。

 異形は特に殺すつもりはないのか、気絶させた者を広場へと運んでいた。しかし、他の魔物や魔獣はそうもいかない。自主的に広場へと行った者もいたが、それでも王都の住民の半数以上は、その命を落としてしまった。


 そして、半数が為す術もなく殺されていた中、生き残っていた者もいた。


「グルゥゥゥゥ··」

「ギギギギギィ」

「ゴガガガガ」


 魔物や魔獣達がこぞって襲いかかってもビクともせず、突破出来ずにいた結界。その中には、1軒の家屋と2人の人間。


 言うまでもないだろうが、リールの両親である。


 2人は身を寄せあってはいるが、その顔に不安はなく、娘の貼った結界に絶対の信頼がある様子だった。


 しかし、そこに異形が近づく。2人は身を固くした。

 わざわざ攻めてきたのだ、この異形は秘密兵器と言うやつなのだろう。その思いから、身を強ばらせてしまう。


 異形が腕を振りかぶる。拳は黒く光り、溢れ出る魔力が周囲に渦巻いている。ついでに目も光ってる。演出だろうか?


 そして数秒の溜めの後、拳が放たれる。


 直撃、貫通


 呆気なく突破された結界。しかし、保険をはるのは当然。

 1段階小さいとはいえ、家の1階部分を覆う結界が残っている。どうして2階にしなかったのか。


 直撃、硬直、破壊、轟音


 リールが貼った2枚の結界は、異形の一振りで破壊されてしまった。『核が当たっても壊れない』がキャッチコピーのはずのその結界、異形がどれだけの攻撃力だったのかよく分かってしまう。


 2人へと攻撃の余波がふりかかる。衝撃波だけで1国を落とせそうな勢いだが、それは届かない。2人の指輪を起点として3枚目の結界が展開され、衝撃波から2人を守る。2人の同時発動である為、1枚に集中しているのだ。こちらは『ビックバンでも壊れない』がキャッチコピーだ。しかも出力2倍、これが割れたらドン引きである。


 そこで、異形が2人へと近づいていく。魔法を使ってもどうせ無駄だと分かっているため、2人は何もせずに見守っている。逃げることはない、何故なら異形が怖すぎるから。幾ら大丈夫だと思っていても、怖いものは怖いのだ。


「ソレ、ヨコス。イノチ、タスカル」


 異形が喋った(事実確認)

 異形が喋った!(混乱)

 異形が喋った!?(驚愕)


 2人はかなり困惑していた。いつも娘に困惑させられてばかりだが、それ以上の困惑だった。

 確かに口っぽい器官はあるが、まんま蜘蛛だったので、話すとは思わなかったのだ。


 ともかく、その答えはノーだ。それが本当か分からない上に、娘からのプレゼントを化け物に渡す理由はない。


「諦めて帰ってください」

「家の弁償しろよ?」


 2人は余裕だ。何故ならリールの結界だから。家のとはレベルが違うから。頭はあれでも実力は凄いと知ってるから。自分たちの娘が、家族思いだと知ってるから。手を抜かないと知ってるから。


「ザンネン。ナラ、コロス」


 リール母が感じたのは、風だった。心地いいそよ風などではなく、不快な生暖かい熱風。


 異形の腕は、結界を通り抜けていた。貫通したのではなく、透かしたのだ。


「え、あ···」


 どんなに高い防御力も、機能しなければ意味が無い。悠々と通り抜けた腕は、リール父を殴り倒し、そのまま押しつぶす。


 直ぐに自分にもそれが飛んでくると悟ったリール母。その頬を涙が伝っていく。


「ごめんねリール」


 ゴシャッ


 最後の言葉を聞いていた者は、異形と魔物、魔獣だけであった。


 異形は2人の体を持ち上げると、広場へと歩いて行く。

 到着後、指輪を取り外し、魔道具を組み立て、数を増やしていく。


 人々にとって、その光景は悪夢だっただろう。一体でも絶望的なのにそれが増えるなど、ぶざけるなという話だ。


 そうして異形に担がれ、連れていかれるという時だった。


「おい、待て」


 子供の声。

 まだ成人していない少女の声。

 彼らは焦った。この子はきっと助けに来たのだろうと、子供のながらの正義感で出てきてしまったのだろうと。


「今から殺すけど、文句ある?」


 挑発的な台詞、気を引こうとしているのだろうか。だが、異形は素早い。子供の脚力では追いつかれてしまう。

 負けてしまう。


「アル。オレ、オマエ、コロス」

「あ、そう」


 異形がそう言い、少女へと突進する。人は放り投げていた。雑にも程がある。少女は動かない。恐怖で動けないのか、それともギリギリまで引きつけるつもりなのか。


「いーち」


 否である。

 獲物が自分から近づいてくるのだ、何故わざわざ避ける必要がある?


 グシャッ


 なんの前触れもなく異形が潰れる。つぶれてそのまま地面の染みとなった。


「あー弱い、弱いなー。こんなのに大切な人を壊されたとか、」


 殺気


 標的でない住民すらも震え上がらせる程の


「ほんとゴミ」


 ここに、人類の勝利は確定した。

シリアスかな?

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