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天井からトラックが降ってきたので、100円ショップスキルで異世界を生き延びます  作者: 月神世一


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EP 25

1000円の超絶技巧と『必殺の矢』の誕生

ゴルド商会の会頭、ゴルスは、ポポロ村からの街道で命(と商品)を救ってくれた僕たちを大歓迎してくれた。

「命の恩人の頼みとあっちゃあ、利益度外視だ!」と豪語し、通常なら金貨数十枚は下らない超希少素材『火花鉱』と『精霊石』を、僕たちが魔狼討伐で得た全財産である金貨10枚ポッキリで譲ってくれたのだ。

素材を抱え、僕たちは再びガンダフの工房へと急いだ。

「素材は揃ったな。よし、すぐに取り掛かるぞ!」

ガンダフは鼻息を荒くして作業台に向かった。

鉄を打ち、外殻となる特製のやじりを作り出す工程は、さすがドワーフの巨匠としか言いようのない神業だった。

しかし――作業開始から数時間後。

工房の奥で、ガンダフが苛立たしげに舌打ちをした。

「チィッ! ダメだ、この『精霊石』の加工だけはどうにもならねぇ!」

「どうしたんですか、師匠?」

僕が覗き込むと、ガンダフは作業台に置かれた数ミリの小さな石の欠片を指差した。

「お前の描いた『着発式信管』とやらを機能させるには、この精霊石を寸分の狂いもなく、完璧な球体に削り出さなきゃならねぇ。だが、精霊石は硬いくせに脆いんだ。ワシの持ってる一番細いヤスリやノミを使っても、ミリ単位の曲面加工をしている途中でパキンと割れちまう!」

ガンダフの足元には、加工に失敗して割れた精霊石の欠片がいくつも転がっていた。

「ワシの手先の器用さの問題じゃねぇ。これは『道具の限界』だ。魔法で溶かすわけにもいかんし……くそっ、これじゃあ起爆装置が作れねぇぞ」

ガンダフが悔しそうにハンマーを置く。

サリーとライザも不安そうに顔を見合わせた。

「……なら、僕の道具を試してくれませんか?」

「あん?」

僕は空中のウィンドウを開き、『価格帯:100円のみ』のフィルタを解除した。そして、DIY・工具カテゴリの中から目当てのものを探し出し、購入ボタンを押した。

【 精密作業用ホビールーターセット(USB充電式・ビット多数付属):1000P 】

【 携帯用モバイルバッテリー(大容量):300P 】

光の粒子と共に、僕の手に太いペンのような形をした機械と、四角いバッテリーが現れた。

ケーブルを繋ぎ、ルーターの先端に「ダイヤモンド粉末」がコーティングされた丸いヤスリ(ビット)を装着する。

「な、なんだその妙な形の筒は? 魔導具か?」

「これは『ルーター』っていう、精密加工用の道具です。見ててください」

僕はカチッとスイッチを入れた。

――ギュィィィィィンッ!!

甲高いモーターの駆動音が工房に響き渡る。

先端のビットが、肉眼では全く見えないほどの超高速で回転し始めた。

「なっ!? な、ななななっ!?」

ガンダフが目玉を飛び出さんばかりに見開いて、ルーターを指差した。

「詠唱もなしに、なんだその異常な回転速度は!? しかも軸が全くブレてねぇ! さらにその先端のヤスリ! なんだその微細な粒子は!? まさか、世界一硬いとされる金剛石ダイヤモンドの粉をまぶしてあるのか!?」

「ええ。これなら、硬くて脆い精霊石でも、割らずに少しずつ削れるはずです」

「貸せッ!!」

ガンダフは引ったくるように僕からルーターを受け取ると、震える手で精霊石に先端を当てた。

キュルルルルッ……。

まるでバターを削るように、精霊石の表面が滑らかに削られ、白い粉となって舞い散る。ガンダフが力を込める必要すらない。ルーターの圧倒的な回転数が、石を完璧な曲面へと導いていくのだ。

「す、すげぇ……! なんだこの滑らかさは! ワシが三日三晩徹夜してヤスリがけしても出せない精度が、たった数秒で……!」

ドワーフの巨匠は、子供のように目を輝かせて超高速回転するルーターを見つめていた。

異世界最高峰の『職人の目と腕』が、現代の『1000円の電動工具』という完璧な手足を得た瞬間だった。

「ハハハハハッ!! こりゃあいい! これならイケる! イケるぞ太郎ォ!!」

そこからのガンダフの作業は、まさに鬼神の如き速さと正確さだった。

ルーターを駆使してミリ単位の信管パーツを削り出し、僕が指示した通りの比率で調合した『黒色火薬』を、特製の金属ケースに隙間なく充填していく。

「火薬の充填完了……! 次は信管の組み込みだ!」

「慎重にお願いします。叩きすぎると暴発しますから」

「分かってる! ドワーフの腕を舐めるな!」

二人三脚の徹夜の作業。

そして、朝日が工房に差し込む頃――。

「……できたぞ。完成だ」

ガンダフが、大きく息を吐いて作業台の布を捲った。

そこには、漆黒に塗られた5本の矢が並んでいた。

通常の矢よりも一回り太く、重厚感がある。先端には通常の鏃の代わりに、複雑な機構が組み込まれた黒い金属の筒が取り付けられていた。

「これが……」

僕は震える手で、その中の一本を手に取った。

ずしりと重い。だが、決して取り回せない重さではない。中に詰まった火薬と、ライザたちを守るための「殺意」が凝縮された重みだ。

「取り扱いにはマジで気をつけろよ」

ガンダフが真剣な顔で念を押す。

「お前の言った通り、着弾の衝撃で『火花鉱』が作動し、中の火薬と『精霊石』が連鎖爆発を起こす仕組みだ。安全装置セーフティピンを刺してあるが、それを抜いたら最後、落としただけでも周囲一帯が消し飛ぶぞ」

「……分かりました」

僕は、漆黒の矢をしっかりと握りしめた。

100均(今回は1000円だが)の道具と現代の知識、そして異世界の技術が結集して生まれた、規格外のオーパーツ。

「名前は……どうしますか、太郎殿」

後ろで見守っていたライザが、ゴクリと生唾を飲み込んで尋ねてきた。

僕は、その矢の切っ先を見つめながら、静かに、だが確かな決意を込めて宣言した。

「これは、仲間を傷つける敵を確実に葬るための力……『必殺の矢』だ」

最強の矛を手に入れた。

もう、誰も傷つけさせない。僕が、あのバケモノたちを全て粉砕する。

「必殺の矢」を矢筒に収め、僕たちはその威力を確かめるため、アルクス郊外の誰もいない荒野へと向かった。

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