The Anger
# Music: Schattenschlag - Emotions (Rmx by Alien Product)
(翌日正午、アトランティス紅日国沿岸に建つ海底私設宴会場)
ドーム天井一面に天然発光サンゴが埋め込まれ、室内は目を刺すほど明るく輝いていた。外壁の外側には色彩鮮やかな魚の群れがゆったりと泳ぎ回っている。長テーブルには各種海鮮料理が山積みされ、タラバガニ、深海ロースト、生刺しと何もかも揃っており、総菜やデザートは人間の宴と何ら変わらない。ただテーブルに並ぶ飲み物は全て動物の血か人工血漿だけで、ワインは一滴も置かれていない。
ハイドリヒ、ヒムラーら上層部、それにメスナー、レッドドラゴン計画責任者のゲツがテーブルに座っていた。全員紅日国の実権を握る吸血鬼たちで、下位の血族従者たちは隅に静かに控えて待機している。
何杯も血酒を飲み交わし、場の空気が少し緩んだところで、アモラド地下都市全体の建築を担当したシュペーアが銀のフォークを置き、背筋をピンと伸ばし、自慢げに功績を訴え出た。
「ナタリア様、地下主城全体を私が一から再設計しました。津波防護岩層、ワームホール遮断壁、恒温血庫と全て新しい工法を採用しており、たとえ海面に大洪水が再び押し寄せても都市内は無事です。全ての血族拠点の中で、私の建築が断トツで最上だと自負しております」
ナタリアはグラスに入った人工血を指で回し、幼い顔に嘲りの笑みを浮かべ、赤い瞳が淡く彼を睨む。
「よくもそんな自慢ができるものだ。昨日ワームホールを抜けて市内に入った際、廊下の至る所から冷風が吹き込み、囚人を収容する合金扉からは海水が染み出していた。基礎的な防水シーリングすらまともに施工できないくせに、天下一などと言うのか?」
シュペーアの得意げな表情は一瞬で崩れ、顔は灰くすみ、口を開けたり閉めたりするだけで何も言い返せず、ただ頭を垂れておとなしく座り、二度と自分の建築の話を持ち出さなくなった。
濃い獣血を何杯も飲み干すと、ナタリアの瞳の赤い輝きはますます強まり、酔いが回ってきた様子で、傍にいる二人を適当にからかい始めた。
まずニコライに目を向け、指先で彼の腕に触れる。
「毎日サハリンの血庫を管理し、冷たい貯蔵タンクばかり見て飽きないのか?私に従って海を渡り行き来しているが、心底不満が溜まっていないか?」
ニコライは口角を少し引くだけで一声も発さず、黙って寄り添い、同意する言葉一つも口にしない。
続いて顔を向けハイドリヒを揶揄する。
「多大な労力を費やして海を塞ぐワームホールを作り、私を外に遮断できると思っていただろう。だが私は目を閉じ瞑想するだけで簡単に突破できた。何年もかけて準備した奥の手が、滑稽なジョークにしか見えない、そうだろう?」
ハイドリヒは少しも不機嫌な素振りを見せず、へらへらと笑い、自分自身をネタにして彼女の機嫌を取ろうとする。
唯一ベリヤだけは、さっきから顔が恐ろしく曇り、眉を強くひそめ、ずっと頭を垂れたままナイフを強く握り締め、胸の内に渦巻く怒りを必死に抑え込んでいた。ナタリアは彼の不機嫌な表情を一目で見抜き、酔いの勢いでわざと彼を傷つけようと、一番痛い箇所を突いた。
「そのしょんぼりした顔は何だ。料理が口に合わないのか、それともドレイコフが羨ましいのか?あいつは今や天空要塞を守り、レーザー部隊を掌握し、モリソンを育成して米国に潜り込ませ、ディーコン・フェスのクローン養子まで持っている。それに比べお前は、毎日地下壕に閉じこもりウイルスサンプルと向き合うだけで、何一つ成果を上げていない」
心を抉る嘲笑が次から次へと降り注ぎ、ベリヤが数十年間抑え込んできた委屈と怒りがついに限界を迎えた。彼は勢いよくテーブルを叩き、金属製の食器がカチャカチャと激しく鳴り響き、会場全体が一瞬で静まり返った。
「もういい!」
彼は声を荒げ、胸を激しく震わせながら叫ぶ。
「あなたはいつも全員を玩具のように扱い、好き勝手に辱めるだけ!昔無理やり私を吸血鬼に変え、凍土に閉じ込め延々とウイルス開発を強いた。ドレイコフの道も全てあなたが手配した。なぜ私だけ一生地下壕に閉じこめられ、あなたの言いなりにならなければならないのか!」
室内の高官たちは一斉に硬直し、メスナーとゲツは慌てて後ろに下がり、巻き添えになるのを恐れた。隅にいるハイドリヒの幼い娘イザベラだけは少しも怯える様子がなく、瞳に興奮した光が宿り、両手を握り締めて二人の対峙を見つめている。ナタリアは以前からこの少女に注目しており、思慮深く仮面を被るのが得意で吸血欲も強いため、後継者候補のリストにすでに入れていた。
ナタリアの酔いは一気に大半が晴れ、全身から冷たい殺気が立ち昇る。数歩でベリヤの元に駆け寄り、彼のネクタイを強く掴んで一気に引っ張った。ベリヤは重心を崩してよろめき地面に転び、彼女は襟首を掴んで木製の食器棚やサンゴ柱にボールのように何度も叩きつける。サンゴの置物や銀食器が砕け散り、パチパチと砕ける音が響き渡る。
「全員離れろ!」ナタリアが厳しく怒鳴る。ニコライが助けを求めて前に出ようとしたのを見て、視線を凶悪に尖らせ続ける。
「ニコライ、一言でも弁解の言葉を発したら、ニンニク精製液に浸した杭で首を突き刺し、こいつと共に地下独房に監禁する!」
ニコライの足が一瞬で止まり、拳を握り締めてもどかしさを抱えるだけで、一歩も前に進めない。ベリヤは体中に打撲の傷ができ、眼鏡が斜めに引っ掛かったまま砕けた木くずの中にうずくまり、弁解する気力を完全に失い、頭を垂れたまま彼女の激しい叱責を浴び続けた。
長時間怒鳴りつけた後、ナタリアの怒りは少し収まった。床一面の廃墟を一瞥し、青ざめて震えるハイドリヒに冷たい顔で指示を出す。
「車を用意しろ。郊外の高台へ行き、アモラドの夜景を眺める」
ハイドリヒは慌ててゲーリンに指示を伝える。
「大統領府の全業務を一時的にお前に任せる」
その後無理におべっか笑みを浮かべ、足早に車の手配に出て行った。
広大な宴会場には砕けた器物と黙り込んだ人々だけが残され、ベリヤだけが棚の残骸の中に孤独に横たわり、顔は恐ろしく暗く曇っていた。ヒムラーとニコライは顔を見合わせ、左右から彼を支え、無事な布製ソファに座らせた。
ゲッベルスは血族従者たちに指示し、音を立てないよう慎重に床を片付けさせた。全員が撤収した後、ベリヤはヒムラーの耳元に顔を近づけ、低く、殺意に満ちた声で囁く。
「待ってろ。いつか超大容量のアーバーウイルスを調合し、彼女の体内に注入してやる」
ヒムラーは慌てて彼の口を押さえ、素早く玄関の方をうかがい、ナタリアがハイドリヒの車で遠くへ去ったのを確認してから小声で諫める。
「声を抑えろ!この言葉を誰かに聞かれたら、我々全員が消滅することになる」
ベリヤは諫めを聞き入れず、低い声で計画を呟き続ける。
「アーバーウイルスは完全に安定していないが、理論上超大容量を投与すれば彼女の血族としての根源を引き裂ける。普通の人間に戻るか、全ての特殊能力を失い、永久的に記憶を失う。力も記憶も失った彼女は、誰かを思い通りに操ったり虐めたりできなくなる」
ニコライは隣に座ってその話を聞き、眉を強くひそめた。室内のサンゴ照明の光は薄暗く、深海の底に隠れた憎しみと陰謀が、海底の暗流と共に静かに渦巻いていた。




