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女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。  作者: 偽モスコ先生
王都ミツメ編 前編 新たな出会いたち
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ちびっこ救出大作戦

 ちびっこの言葉を受けて男たちの先頭にいたリーダーらしきやつが叫ぶ。


「ほう、こいつがか!? 全然そんな風にゃ見えねえけどなぁ!」

「だから俺は」

「そうよ!」


 何だこいつ、さっきから一度も最後まで喋れてないんだけど。

 首を回して女の子を睨みつけると、何と向こうもこちらを睨み返して来た。


「何よ! まさかあんたここで私を見捨てる気じゃないでしょうね!」


 言われてみれば確かにそれはそれで後味が悪そうだ。

 何よりティナなら絶対に見過ごさない、いや見過ごせない状況だし。

 後でこの女の子を見捨てた事がティナに知られたら終わりじゃん。


(ジン君ひどい! もう結婚してあげない!)


 恐らくこんな感じだろう。結婚はしたいしな……しょうがねえ。

 唸りながらこちらを睨む女の子を見て言った。


「よしわかった。ちびっこ、お前を助けてやろう」

「ちびっこじゃない!」

「どう見てもちびっこじゃねえか」


 ていうか助けを求めてる立場なのにすごい剣幕だな。

 そんなやり取りをしていると、リーダーっぽい男が口を開いた。


「誰が助けてやるってぇ!? 弱そうな装備しやがってよぉ、どうせレベルも低いんだろうが! それに俺たちが何人いると思ってんだ!」


 男がそう言うとどこに潜んでいたのか、次から次へと仲間が出て来た。

 完全に取り囲まれる形になる。

 荒くれ者どもはどれも口元を歪めて凶悪な笑みを浮かべている。


「ていうかお前何でこんなに狙われてんの? 食い逃げか?」

「そんなわけないでしょ、ばか!」


 素朴な疑問を罵声で返された事に驚愕していると、リーダーらしき男が遂に号令を発した。


「お前らやっちまえ! 子供は傷つけんじゃねえぞ!」


 一斉に飛び掛かって来る男たち。ちっ、しょうがねえな……。

 俺は心の中で毒づきながらちびっこを拾って正面に抱きかかえた。

 腕の中で暴れるちびっこ。


「なっ、何すんのよ離しなさい! 変態!」

「いいから大人しくしてろ! あと目瞑れ!」


 指示を出しつつも、念の為にちびっこの顔を俺の胸に埋めて視界を塞ぐ。

 念のためにローブのフードも限界まで深く被せる。

 今からやろうとしている事をなるべく見られない様にする為だ。

 ちびっこの視界が塞がっているのを確認すると誰にも聞こえない声量で呟いた。


「『スモーク』」


 俺の足元から突如として大量の煙が発生する。

 これは敵味方双方の視界を悪化させるスキルで、早い話が逃げる事くらいにしか使えないから俺も使うのはかなり久しぶりだ。

 

 周囲が煙に包まれると同時に男たちが叫ぶ。


「なっ、なんだぁ!?」「ばかやろう『スモーク』だ! びびるな!」

「痛えよばかそれは俺だ!」「どこ触ってんだ馬鹿野郎!」

「小賢しい事しやがって! おい野郎共。どちらにしろ囲ってんだ、視界が晴れるまで待っとけ!」


 煙が出切ったのを確認すると足に力を込め、少しだけ角度をつけて飛んだ。

 あっという間に煙の外に出て側にあった建物の屋根に着地出来た。

 そのまま屋根から屋根へと飛び移って男たちから離れていく。


「なになに? どうなってんの? ちょっと離しなさい!」


 視界が塞がれているので何が何だかわからずに暴れるちびっこ。

 飛んだ時と屋根をつたう時、ところどころで襲われる浮遊感の正体がわからずに戸惑っているのかもしれない。


 ある程度距離を稼いだところで再び下の路地に降りた。

 曲がり角のところで顔だけ出してやつらの様子を窺う。


 あの状況で荒くれ者たちからこの子供を助けるにはこうするのが一番だったと思うんだけど……どうだろうな。

 倒す事も出来たけどステータスの高さがばれると困るし。


 おおよそ何が起きてるかはグレイスにはバレてるだろうし今度相談するか。

 っと、当のちびっこを抱きかかえている事を忘れていた。

 いつの間にか抵抗も弱まり、顔を赤くしているちびっこを地面に降ろす。

 すると両腕でぽかぽか殴りながら怒鳴りつけて来た。


「もう何すんのよ、スケベ! 変態!」

「おいばか静かにしろ!」


 男たちは煙が晴れると俺たちがいない事に気付いたらしい。

 リーダーっぽいやつが何事かを叫ぶと一斉に散らばった。

 俺の耳でも具体的な内容までは聞き取れなかったけど……。

 

 あいつらをさっさと探せとかそんなところだろう。

 未だに俺をぽかぽかやっているちびっこに話しかけた。


「よし、念のためにもうちょっと離れるぞ」

「命令すんな!」


 何だこいつ面倒くさいやつだな。

 俺は踵を返してその場から立ち去るフリをしながら言った。


「はいはい、じゃあ後は勝手にしろ。俺は帰るぞ」

「まっ、待ちなさいよ!」


 するとちびっこは慌てて俺について来る。

 ふっ、やはり子供だな。ちょろいぜ。


 ちびっこと共に汚くてじめじめとした道を歩く。

 隣を歩くちびっこはローブのフードを更に深く被っている。

 人の多い通りへと向かいながら尋ねた。


「お前父ちゃんとか母ちゃんはどうしたんだ?」


 するとちびっこはぽかんとした表情になってこちらを見つめている。

 少しの間があった後、間抜けに開いた口から言葉が発せられた。


「何あんた、本当に私の事を知らないの?」

「知るわけねえだろ。今日初めて会うんだから」

「ふ~ん。まっ、それならそれでいいわ。ちょっと面白そうだし」


 意味深だなおい。まあいいか。

 それから少し歩くと、ちびっこはくいくいと俺の服の裾を引っ張って来た。


「何だよ」

「疲れたから肩車しなさい」

「しょうがねえやつだな」


 子供だしそれくらいはサービスしてやろう。

 その内こいつとティナが会うような事があれば俺が優しくしてやった事を語ってくれるかもしれないし。


 ちびっこを肩車して歩いていると頭上から話しかけられた。


「そういえばあんた、さっきのあれをどうやって切り抜けたの?」

「どうやってって。めっちゃ頑張ったんだよ」


 まずい。言い訳を考えてなかった……。

 屋根に飛び乗ったなんてそこいらの人間じゃ出来ねえし。

 というか精霊でも出来るやつと出来ないやつがいるくらいだ。

 こっちの考えもまとまっていない内に反論が飛んで来る。


「あの状況は頑張ってどうにかなるもんじゃないでしょ」

「そ、そうか?」

「さてはあんた……」


 な、何だ? 人間に俺たちの存在は知られてないはずだけど。

 精霊という言葉はあっても、人間にとってのそれは俺たちとは完全に別のものを指す言葉として使われている。


「かなり足が速いわね? それに他のステータスも相当高いんでしょ」


 精霊ってのはバレてないけどかなりいい線までいっちゃってる!

 動揺しながらもとりあえず聞き返してみた。


「何でそう思うんだよ?」

「だってまず男たちがいた場所から私を降ろした曲がり角に行くまでの時間から考えたら足がかなり速くないとおかしいでしょ。それに足が速いだけじゃ包囲を突破出来ないわ。何かの魔法を使ったって考えるのが妥当ね。だからレベルが高いか何度か転職を繰り返してる可能性が高いわ」


 人間と精霊ではスキル……魔法や技を覚えるシステムは異なる。

 簡単に説明すると、人間はレベルでスキルを覚えるらしい。

 加えて覚えるスキルは人によって違いがあるから、欲しいスキルがあればそれを習得出来る職業になる必要がある。


 自分が覚えたいスキルを習得できる職業になってレベルを上げる。

 それを繰り返していけばたくさんのスキルを身に着けられるわけだ。


 ぐっ……これはちびっこが鋭いっつうか俺が迂闊だったな。

 言う事はかなり的を射ていて言い訳の仕様がない。


 身体のところどころから汗が噴き出してくるのを感じる。

 ちびっこは何も言い返せない俺を見て気を良くした感じで続けた。


「図星ね。それより何でそれを隠そうとしてるかの方が気になるけど」

「……」

「何だかすごく汗かいてて気持ち悪いから聞かないでおいてあげるわ」


 よくわからんが歳不相応に鋭いらしい。

 一応は見逃してもらった? みたいだけどどうにか口封じをしないとダメか?

 わかんねえ。情けないけど単刀直入にお願いするくらいしか思い浮かばん。


「あのさ、今お前が言った事……秘密にしておいて欲しいんだけど」

「どうして?」

「それは言えねえ。でもそうだな、バレたら死ぬって感じだ」

「ふ~ん」


 事実だしこう言っとけば情に訴えられるだろ。

 わかってくれたのかくれてないのか、返事が来るまでには少しの間があった。


「まあいいわ。助けてもらった借りがあるし」

「ほ、本当か?」

「ただし、私に弱みを握られた事は覚えておきなさいよね」


 このクソガキ。と思ったけど何も言い返さない。

 ていうかこの場合ちびっこにいいようにやられてる俺が悪いな。

 話が着いて気持ちも落ち着いたので、こいつを家に帰す事にした。

 歩きながら道を尋ねてみる。

 

「それで、お前の家はどこなんだ? もうここまで来たら送ってってやるよ」

「えっ……」


 途中で放り出してもモヤモヤするしな。

 そう思って聞いたのに、中々返事が来ない。


「おいどうした? 案内してくれないとわかんねえぞ」

「ふふっ、そうね。じゃああっちよ」

「あっちな。わかった」


 何を躊躇してたのかは知らないけどもう吹っ切れたらしい。

 その声には迷いがなくむしろ楽しそうですらあった。

 ちびっこが示した方向に歩いていく。


 やがて人の多い通りにかなり近づいて来たところだった。

 突然横から不躾な声が飛んで来る。


「おいそこのお前! 止まれ!」

「あ?」

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