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お披露目されよう!

 教会自体は高台にあって、聖堂の玄関を出ると教会前の広場が一望できる。

 聖堂を出ると、広場には群衆が詰めかけていてそこかしこから、聖女様と呼ぶ声が聞こえる。

 想像した以上の群衆の量と声量に圧倒されて思わず一歩後ずさってしまった。

 うん、なんかもう泣きたい。






 広まっていた火を鎮火させると、その場にいた野次馬たちの反応があからさまに変わっていった。

 聖女様と呼ぶ声がどんどん大きくなって正直、大分怖かった。

 周りの様子に気付いて馬車に避難させてくれたいかつい神官のおじさま方には感謝しかない。

 馬車に乗り込むと急いで教会に連れ帰られ、教皇様の執務室に連れられ教皇様に事情を説明した。

 少し渋そうな顔をしながら教皇様が致し方ありませんね…と小さくつぶやいた。


「あの、私、けっこうやらかしてしまったのでしょうか?」


「いえ、聖女様の行ったことはほとんど正しい行いです。

 怪我人の治癒も、鎮火も、行わなければ死者が出ていたかもしれません。

 聖魔法を使う以外の方法はなかったでしょう。

 ただし、聖女様は目立ち過ぎたのです。

 女神信仰の篤いこの国において女神の力を持ったあなたの存在は民衆にとって影響力が大きすぎます。

 あなたの力が今回の事故を通して大々的に知られる形となりました。

 今後のこちらの出方をかなり慎重に行わないと、良くも悪くもどちらにも転がる恐れがあります。」


「なるほど…」


 その時若い神官が執務室に入って来た。


「教皇様、聖女様、失礼します!

 今聖堂に民衆が詰め掛けていて、聖女様への贈り物を持ってきたり、逆に聖女様からの祝福やお目通りを求めています。

 現在神官ではさばききれなくて一時的に聖堂の一般解放を中断しています。

 いかがしましょう?」


「…分かった。致し方あるまい。聖女様、ご協力願えますかな?」


「はい、私にできることでしたら。」


「教会に詰めかけている民衆に伝えよ。

 聖女様はお疲れである。

 よって休息をとって2時間後の午後4時に聖堂で聖女様のお披露目を行う。

 聖女様を一目見たい希望するものは教会前の広場に来られよ、と。」


「はい!伝えて参ります。」


 若い神官はきびきびと礼をして部屋から出ていく。


「聖女様、誠に申し訳ないのですが、民衆の期待に応えて民衆の前に出てもらいますぞ。

 こういったものは小さく欲求を満たしてやらないと暴動に発展するおそれがあります。」


「分かりました。出るだけで大丈夫でしょうか?」


「できれば、顔を見せるついでに声を掛けたり、簡単な魔法を見せて頂ければと思います。」


「…ではそのように致します。

 少し疲れたので時間まで休ませて頂きますね。」


 私に与えられた部屋に戻ると机の上に筆箱くらいの大きさの箱があった。

 箱を開けると漏斗のような形をした魔道具と手紙が入っている。


 急いで手紙に目を通すと読み終わったのを見計らったように手紙が燃えて消える。

 漏斗のような魔道具を握りしめて、その魔道具に付加魔法をかけておく。

 あとは野となれ、山となれだ!









 広場に詰めかけた群衆を前に思わず一歩後ずさったが、自分に叱咤して、ポケットに入れていた魔道具を左手で握りしめる。


 右手を上げて軽く振ると、ドッと歓声が湧き上がった。

 すごい、○ャニーズになった気分。


 広場と教会の敷地の境目には今までなかった木製の柵があり、こちらまで人が詰め掛けないようにはなっている。

 柵の近くには神官や近衛兵と思しき人たちが見張っている。


 歓声が止むと、急にシーンとして、私が何か喋るのを待っているように感じる。

 仕方ない…、覚悟を決めて口を開いた。


「みなさん、私はミモザといいます。

 ついこの間まで学園に通う平民の女の子でした。

 聖魔法が使えるようになったので、聖女になりました。

 私は、幸せのためにこの力を使っていきたい。

 みんなが幸せになれるよう、頑張っていきます。」


 うん、我ながら拙いスピーチ内容だけど、割れんばかりの拍手が返ってきた。


「皆さんに感謝の気持ちを込めて、聖魔法を届けます!」


 左手に握っていた魔道具をかざして、そこに治癒魔法を込める。

 魔道具から治癒魔法の光が吹き出してキラキラと宙を舞い、そこに詰め掛けた人々に降り注ぐ。


 光を浴びた民衆がさらに大きい歓声を返してくる。


 よし、成功だ!!



「私は今、愛する人達と離ればなれになってしまっています。

 私は、私の愛する人達と穏やかに暮らしたい。

 この夢を応援して頂けないでしょうか?」


 さらに言葉を紡ぐと、わーという歓声が返ってくる。

 なんだこれ、なんだか気持ちいいぞ。


 そう思った瞬間、魔道具を持っていた左手を強く掴まれる。


「いたっ」


「今すぐその魔法をやめるんだ!」


「え?ユヒト殿下!?」


「もう勝手はさせない、城まで来てもらおう。」


「え?ちょっと待って、離して下さい!!」



 まずい、ここに第二王子がいるなんて!


 そう思った瞬間、横から近衛兵の制服を来た黒髪の長身の男性が手を伸ばし王子の手を遮る。


「第二王子殿下といえども、聖女様への暴挙、罷りなりません。」


「貴様、近衛兵の分際で何を言っている!!」


 すると傍から別の近衛兵が遮るように私と第二王子の間に入ってくる。


「私は聖女様をお守りすることが天命であり、ひいてはこの国の安寧につながると考えております。

 第二王子殿下、お引きください。」


 すると堰を切ったように近衛兵が私の周りを固めてくる。


「お前ら、近衛兵の分際で王族の命に歯向かうつもりか!」



「その言葉、そのままお返ししよう。

 妾腹の第二王子の分際で、聖女様に歯向かうおつもりか?」


 人混みの中からそう言いながら小柄な銀髪の少年が出てくる。


「…公爵子息、これは貴殿の策略か?」


「さあ?何のことやら…。」


 アベルたん、その登場も笑い方も完全に悪役です。

 広場に剣呑な雰囲気が漂う中、私はそんなことを考えていた。

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